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【ブルアカ】鬼怒川カスミの本当の「我々」について【Trip-Trap-Train/絆ストーリー考察】

『Trip-Trap-Train』でのカスミにはおかしなところがあります。行動に一貫性がないことです。どこに一貫性がないのか。なぜ一貫性のない行動をしたのか、つまり、その行動の真の目的は何なのか。絆ストーリー含めて、カスミの人物像から考察します。 『Trip-Trap-Train』でのカスミの人物像「我々」の使い方について まずカスミの言動について。特に目につく――あるいは鼻につく――のは「我々」という言葉の使い方だろう。彼女は「我々」と先んじて言語行為をすることで、あた

【ブルアカ】消え去る立法者と立ち上がる私【Trip-Trap-Train】

ルソーはこの人物を「詐欺師」と呼んだ。 ※23/10/10 下記の記事の方がちゃんと(行間も)記載しているので、先に読んでいただいた方が雰囲気が伝わるかと思われます。 またこちらの記事はイチカ寄りで、下記の記事はカスミ寄りになります。 校宝はゲヘナ行きイチカは、ティーパーティーのナギサからの依頼で校宝「ティーパーティーの一番最初の会合で使われたティーセット」を発掘現場から届ける仕事を受ける。発掘作業はしていたものの、先生はその校宝の価値について詳しく知らず、イチカから説

【ブルアカ】愛への賭けをめぐって【隠されし遺産を求めて】

ブルアカで未だに腑に落ちていなかったことがありました。それは【先生が躊躇なく生徒たちを「信じる」と言い切る】ことです。今までこの行為の背後にある理屈があまり明瞭に見えず、なんとなく超法規的に「先生だから」となってしまっていました。しかし、今回のイベント『隠されし遺産を求めて』にて、ハナコが主題になったことで、その理屈がようやく見えた気がします。この【先生が躊躇なく生徒たちを「信じる」と言い切る】行為の背後にある理屈を「愛への賭け」と称したいと思います。 なぜハナコが主題にな

【ブルアカ】カルバノグの兎編(~2章)の感想と「デカルト」という夾雑物について

現在、私たち人間は社会と関わりなく生きることはできない。人の集まりである社会の中で、私たち個人は、社会が存続・腐敗しないようにするために、所得の再分配などの、法へ遵守を求められたり、その社会の中での道徳的・倫理的な規定を身に受けることになる。社会と私たち個人の関係は、上記のように、抜き差しならない緊張感を持ったものになっている。 『ブルーアーカイブ』の世界設定やシナリオは、社会やこの「社会と個人の関係」への言及がとても上手い。トリニティとゲヘナという民族的な対立。レッドウイ

【ブルアカ最終編】大人の責任を託されて

――バトンを渡されたような気がした。 ブルアカ最終章で驚かされた事実の1つは先生が使っていた「大人のカード」が――切り札的なメタファーではなく――ネット上での大人のゲーム課金方法を表す「クレジットカード」をそのまま指していたということだった。別世界線の先生であるプレナパテスが「大人のカード」を使う姿から主人公側の先生も同じ動作をしているだろうことが予測でき、先生とプレイヤーは重なった存在であることをブルアカは強く描写してきたのだった。 また最終編のシナリオが進む中で、プレ

【聖園ミカ 絆ストーリー】先生からの贈り物

愛とは、持っていないものを与えることである――― ジャック・ラカン 2023年1月24日聖園ミカが実装された。ミカの絆ストーリーは実質的に「エデン条約編」の後日談と言っていいだろう。聴講会にて特権的な地位から一般生徒へ落とされる裁定を受けたミカは、一般生徒として寮に住み、学校に通うようになる。かつて(結果的に)ティーパーティにクーデターを起こしてしまったミカに対する世間の目線はとても冷たい。「エデン条約編」などで見かけたトリニティの生徒たちの姿から、ミカの学園生活の悲惨な面

ブルアカの大人と子ども【ネバーランドでつかまえて】

ブルーアーカイブの”大人”という言葉は、一般的に使われる意味での大人とはどこか異なった強い重みを持っている。イベント「ネバーランドでつかまえて」のシナリオでは、その違いが端的に表現されていて、とても印象的だった。 簡単にあらすじを。「梅花園」の教官を務めるシュン。自由気ままな園児たちの世話に若干憂鬱気味であった彼女は薬の作用で子ども姿に戻ってしまう。シュンは子ども姿の自分を「シュエリン」と名乗り、子どものように好き勝手振る舞って先生たちを振り回す。責任のある元の状態に戻りた

【ブルアカ】聖園ミカの《記録》

エーリッヒ・フロムの書籍を読んでいた際、ある一節でふと「聖園ミカ」が思い浮かんだ。 エデン条約編で繰り返し強調される、楽園の証明の不可能性。 「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか」 その証明問題の1つは、ある種の楽園の別名を持つ「聖園ミカ」、彼女は一体何者なのかという問いではないだろうか。 彼女のあるままに見、彼女の内にある力の構造を認め、彼女を個人として見ると同時に、彼女の普遍的な人間性において見て、ここに《記録》しよう。 エデン条約編:冒頭事の発端