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ジョン・フォン・ノイマンという天才2(人工生命/知能系)

前回の続きで、今回はコンピュータと生命を「人工的に」表現する研究について紹介したいと思います。

ノイマン型(プログラム内蔵方式)コンピュータの話を以前しましたが、ノイマンは、計算処理だけでなく、そこから生命のような自律的な仕組みが作れないかと考えます。

今でいう「人工生命」ですし、「人工知能」ともいえます。

余談ですが、ノイマンが指導した学生の一人に、そのパイオニアとして名高いマーヴィン・ミンスキーがいるので、元祖という言い方も出来ます。

まずノイマンは、生命のなかで重要な機能である「自己複製」する仕組みを数学または計算モデルで実現しようとしました。他の分野にも共通でいえますが、あくまで彼は「数学」を武器にしています。

これは「オートマトン(または複数形でオートマタ)理論」と呼ばれ、彼の死後に発見される遺伝に関わる物質(DNA)の仕組みにも近い概念です。

それを離散的な格子で作ったモデルを「セルオートマトン」と名付けます。以前にもちらっとその前後の文脈について添えました。

計算する仕組みは、コンピュータの発明同様に、チューリングマシンという概念を応用します。(タイトル画像の右はアラン・チューリング)
念のために補足すると、普通の計算と異なる難しい点は、出力した結果自体も自己複製する機能を有する、という点です。

ノイマンは、幼馴染(&同じく天才)でもあったノーバート・ウィーナーに宛てた手紙で、
「詳細に書かれた機械の図面を理解するのと同じ厳格な意味で、生命体を理解したいのです」
と書き綴ります。

時代は1946年。繰り返しですがまだ生命にとって重要な遺伝物質であるDNA発見の前夜です。

ノイマンは、「万能(ユニバーサル)チューリングマシン」(上記の過去投稿参照)を拡張して、従来の計算処理(形式論理)に自己を参照する概念を組み込み、自身と同じかそれ以上複雑な存在を出力する方法を希求します。

この自己参照の概念は、彼のプリンストン高等研究所の同僚でもあったクルト・ゲーデルの研究を応用したものです。

そして、ノイマンが下した結論は「難しい」でした。その際に、過去にチューリングが試みた「計算可能性を事前に予測出来ない」という内容も取り上げています。

ちょっと表現が固いので、思い切って無邪気に書くと、
「今のコンピュータの原理では自分のことは簡単には分からない」
ということです。

ただ、完全に人工生命の設計を断念したわけでもなく、十分複雑な自己複製系があれば、確率的に自分と同じかそれ以上の複雑な生命を複製できることを示唆しました。

ノイマンは、生物と工学を融合した自己複製オートマトン理論をいつか完成させたいと思っていましたが、あまりに多忙であったのと、ガンによって53歳という若さで亡くなってしまい、再開は叶いませんでした。

ただ、彼の予言は生き永らえ、「複雑系の科学」含めて今に至る「人工生命」の研究に繋がっていくわけです。


<参考リソース>


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