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ジョン・フォン・ノイマンという天才1(物理係)

前回触れた、ジョン・フォン・ノイマンの生涯について、科学的な成果を中心に紹介します。

成果と書きましたが、相当多様な分野で業績を残しており、今回は物理学に関係するトピックに絞ります。(タイトル画像は左から順に、ノイマン・ハイゼンベルグ・チャンドラセカール)

量子力学の数学的基礎づけ

ノイマンは幼少から数学の神童で、大学時代にはその名は教授陣にも知れ渡っていました。その一人がヘルマン・ワイルで、後年にプリンストン高等研究所で同僚となります。

当時ノイマンは並行して大学院にも所属し(正当に試験に合格)、22歳で学士(化学)と博士(数学)を同時に修了します。この時点で只者でないことがわかりますね・・・。

上記のワイルの伝記で触れたとおり、そのころ自然科学の世界では「量子力学」という不可思議なミクロ現象の解釈について、主にボーア派とアインシュタイン派で大科学論争を繰り広げていました。

そんな中ノイマンは、ボーア派の若き天才ハイゼンベルグが提唱した行列力学を講義で聞いて大いに刺激を受けます。
この理論は難解で、当時ノイマン(そしてワイルも)の師匠にあたるヒルベルト(当時の数学で帝王的存在)ですらついていけず、それをノイマンが別の表現に置き換えて納得させる、という有名な一幕があります。

この表現をノイマンは「ヒルベルト空間」と名付けました。それまでに数学で定義されていた「常識的な(ユークリッド)空間」の概念を一般化したものです。(とさらっと流します☺)

その後にハイゼンベルグの論敵にあたるシュレディンガーが「波動力学」を作り上げて両陣営は火花をバチバチにちらします。

ノイマンはこちらにも反応しました。

そして、量子力学の解釈で登場したこれら2つの理論を、「匕ルベルト空間」を用いて測定という概念を抽象化することでその同等性を証明します。
その過程で定義した複数の要素を作用させる(足し算・掛け算の汎用化)「フォン・ノイマン環」などは今でも研究対象となっています。

この論文は「量子力学の数学的基礎」というタイトルで、今までは神学論争にすら感じていた各派閥の唱える理論に対して、数学的な基盤を整えます。

その後もノイマンは、量子力学を熱力学・確率論で解釈した論文を発表して、未開の物理分野への骨格を整えます。


天体の重力場解析

以前にオッペンハイマーの天体物理学で、星の重さとそれによる重力崩壊を理論づけた先駆者チャンドラセカールについて紹介しました。

ノイマンは、チャンドラセカールと共同研究で、天体の重力場を統計的に解析する共同論文も発表しています。
タイトルは「星のランダムな分布から生じる重力場の統計」と呼ばれ、統計力学のモデルと数学的な理論を駆使して、星がランダムに配置されたときに変動する重力場の影響を解析しました。


史上初の天気予報?

上記の研究ではいずれも数学(統計学含む)の高度な手法を活かしています。実はその統計的な下地を生かして気象学にも乗り出しています。
しかも、理論研究にとどまらず、コンピュータを使った数値計算も先駆的な研究を行い、今の天気予報につながる重要な貢献を行っています。

上記記事内にもある通り、史上初の天気予報数値シミュレーションは、ノイマンがアーキテクチャを編み出した史上初(諸説あり)の現代型コンピュータENIACによって行われました。

次回は、物理世界ではなく「人工的」な世界を表現した研究テーマについてその業績に触れてみたいと思います。

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