サイバネティクス

研究紹介⑵:動物は「閉じている」?

研究紹介⑵:動物は「閉じている」?

前回の記事で生物学者ヤーコプ・フォン・ユクスキュルという人物が新たな生物学を構想したという話を紹介しました。具体に的には、環世界(Umwelt)という概念によって、生物はそれぞれ全く異なる世界を生きているのだということを示そうとしたのでした。 ユクスキュルの主張は世界は眺め方によって異なって見える、ということではありません。一つの世界をさまざまな生き物が各々の視点で見ているのではなく、そもそも世界というものがいくつもあるという主張なのです。(近年、人類学で注目を浴びた多自然

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サイバネティクスの周辺についての個人的雑感

サイバネティクスの周辺についての個人的雑感

現象学者たちとサイバネティクス 「サイバネティクス」なるものに興味を持った経緯としては、メルロ=ポンティが『眼と精神』で一章まるごと使ってサイバネティクスを批判しているからでした。長いのですが引用します。 世界を名目的に定義すれば、世界とは私たちの操作の対象Xである、となろうが、そのように語ることは、科学者の認識のあり方を絶対視することであり、それはまるで、かつて存在し、また現に存在しているすべてのものを、たんに実験室に入るためだけに存在してきたかのように見なすことである

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日々の叡智(2020/06/9)

日々の叡智(2020/06/9)

新型コロナウイルス感染症による社会的混乱・不安が収束するまでを目途に、原則的に毎平日、偉大な人物たちのことばをアップします。 このような時代(とき)だからこそ、皆さんが、毎日わずかな時間でも心を落ち着かせることができ、また、皆さんの心に響くことばと出会っていただくことができれば、幸いです。 「哲学ダイアグノーシス Philosophical Diagnosis」 チャンネル登録をお願いいたします。 https://www.youtube.com/channel/UCos4PK6NSVsgKc9Qe7M744g FB「竹林茶話会 哲学Cafe@柏bamboo」 https://www.facebook.com/chikurinsawakai/ Blog「あちらこちら命がけ Here and There, at the Risk of My Life」 http://achirakochirainochigake.blogspot.com/

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜終章

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜終章

終章 シンギュラリティ信仰の確立 第1節 シンギュラリティ信仰の拡大 第1項 シンギュラリティ大学  カーツワイルの楽観的な未来観は、シンギュラリタリアンと呼ばれる人々の支持を集め、信仰されるようになった。シンギュラリタリアンたちは、シンギュラリティが2045年ごろに到来すると信じ、シンギュラリティ大学と呼ばれる学校を設立し、シンギュラリティの到来に向けて、テクノロジーの発展を進めようとしている。  シンギュラリティ大学は、2008年にカーツワイルとピーター・ディアマ

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シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第3章

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第3章

第3章 サイバネティクス――シンギュラリティ思想の源流  本章では、20世紀にノーバート・ウィーナーによって提唱され、ジョン・フォン・ノイマンらによって発展したサイバネティクスについて説明し、サイバネティクスがシンギュラリティ思想の源流であることを結論として述べていきたい。第1節では、「サイバネティクス」という言葉が誕生した背景について説明する。続く第2節から第5節にかけては、サイバネティクスの理論において重要となるポイントを概観し、それらとシンギュラリティ思想の共通点およ

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シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第2章

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第2章

第2章 トランスヒューマニズムにおけるシンギュラリティ  本章では、シンギュラリティの思想がトランスヒューマニズムに位置づけられることを示すことが目的である。第1節では、トランスヒューマニズムとは何かを説明するともに、シンギュラリティの思想がトランスヒューマニズムの特徴をふまえていることを示す。また、第2節では、カーツワイルの思想がトランスヒューマニストの一人であるハンス・モラヴェックから影響を受けていることについて説明する。 第1節 トランスヒューマニズムにおける人間観

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シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第1章

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第1章

第1章 シンギュラリティのアイディアの歴史  本章では、カーツワイルの前に、「シンギュラリティ」という言葉を用いた人物であるジョン・フォン・ノイマンとヴァーナー・ヴィンジのシンギュラリティ像を紹介し、その系譜を説明する。これにより、シンギュラリティのアイディアがどのように発展していったのかを示すことが本章の目的である。第1節では、「シンギュラリティ」という言葉が、フォン・ノイマンによって初めて用いられたことについて述べ、フォンジ・ノイマンとカーツワイルのシンギュラリティ像を

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シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜序章

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜序章

序章 カーツワイルの描くシンギュラリティ像  シンギュラリティとは何か。シンギュラリティは日本語で「技術的特異点」あるいは「特異点」と訳される。特異点とは何かについて、マレー・シャナハン(Murray Shanahan)は次のように述べている。  物理学において特異点というのは、ブラックホールの中心もしくはビッグバンの瞬間のような空間か時間の一点であり、そこでは数学の常識とわれわれの理解力が共に崩れ落ちる。そこからの類推で、人類史においての特異点とは、われわれが今日理解し

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シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜はじめに

シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜はじめに

はじめに  レイ・カーツワイルは、「シンギュラリティ」という概念を用いることによって、ある未来図を描いた。シンギュラリティとは、われわれが今日理解しているような人類のあり方が終わりを告げるほどの劇的変化が、技術の指数関数的進歩によってもたらされる地点のことを指す。その未来では、強いAIが登場したり、人間が非生物的な知能と融合して知性を獲得したり、脳をコンピュータにアップロードすることによって、人は死から免れるようになり、ヴァーチャル・リアリティの世界で姿を自由に変えられたた

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人間機械論―人間と機械(システム)との折り合い(調和)について―

人間機械論―人間と機械(システム)との折り合い(調和)について―

―ノーバート・ウィーナーの「サイバネティックス原理」と その社会現実化事態への対応の模索― はじめに  ノーバート・ウィーナーは、機械(システム)は人間のために、道具として有効に利用されるべきであると主張した。また、人間の尊厳の問題として、人間が、機械化されたり、機械(システム)の動力源になったりしてはならないと主張し続けた。本レポートは、人間と機械の折り合い(調和)について考えたものである。建築(物)「機械・システム・道具」と人間との関係に見られる「調和」の問題を考察した

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