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生命の起源の原理:進化のバブルが弾ける前に

私はシステムエンジニアとしての観点から、生命の起源についての個人研究を行ってきました。無生物から自然の作用のみでどのように生物が誕生するのかを、システムの観点から考え続けてきました。また知性の本質についても、同様に、あるいは並行的に考えてきました。

この記事の前半では、化学物質や地球環境や神経細胞についての具体的な話から離れて、システム理論的な観点から私が整理してきた、生命の進化や知性の学習の本質的な原理について説明をします。そして記事の中盤では、その原理が、生物の細胞と知能、人工知能、そして化学物質から細胞が生まれる過程である生命の起源にどのように当てはまるのかを概説します。

記事の後半では、これらの原理を前提とした場合、進化し続ける私たちの文明の未来、そしてこの宇宙に広がっている可能性のある他の知的生命体における文明の姿について、私の仮説的な視点を提示します。この視点から考えると、時間と共に自然に進化しつつ、進化そのものの速度が加速している現状から、自らの意志でその速度や段階を制御できる社会や文明へと移行することの必要性が見えてきます。

■生命の進化と知性の学習

生命と知性は、進化や学習により状況に適応し高度に洗練されていく仕組みを持つ現象です。

生命現象は生物に現れ、知性現象は知能に現れます。知能には神経細胞を中心とした生物的な知能と、コンピューターによる人工の知能とがあります。

進化と学習は、状況に適したパターンを見つけて、同じ状況下でそのパターンを再生することです。

■ランダムによる探索

状況に適したパターンを見つけるためには、高度な知性があるなら、経験的な直感や洞察、あるいは分析に基づく設計や試行錯誤に頼ることができます。こうした知性がなければ、単純に様々なパターンを探索的に試すしかありません。1つ1つパターンを順番に試すことも、ある種の知性が必要ですので、全く知性がなければ、基本的にはランダムな作用に頼ることになります。

ランダムに頼って見つけ出したパターンであっても、知性があればそれを記憶しておき、再生することができます。知性がなければ、探索時はランダムでありながら、状況に適したパターンが見つかったら、その後はそのパターンが再生されるような何らかの仕組みが必要です。

■フィードバックループを伴う反復

ランダムな探索を考えた時、単にランダムな事象が積み重なるだけでは、その事象の範囲内ではランダムであっても、全体としては特定の分布に収束します。また、多数のランダムな事象が重なって状況に適したパターンが見つかっても、それを再生することが難しくなります。

フィードバックループ構造を持つ反復は、この点で非常に有利です。ある状況に対して反復的に同じ処理が行われれると、その処理の結果は大きく発散したり、収束したりします。それだけではなく、例えばプログラムでα=sin(α✕π)のような計算を反復させると結果が単調でなく複雑な変動をします。これにより、初期値を変えるだけで、多様なパターンを作り出すことができます。

反復によるパターンの多様化であれば、初期値をランダムに選ぶだけで、様々なパターンを探索できます。そして、その中で状況に適したパターンが見つかったとき、初期値さえ再生できれば、複雑なパターンを再生できることになります。

■偏りのフィードバック

見つかったパターンを再生する時、情報を記憶する高度な仕組みがないとしても、再生することができる仕組みが必要です。

その仕組みとして偏りが利用できます。完全に均質なランダムによる確率分布であれば別ですが、わずかでも確率分布に偏りがあり、その偏りが安定していれば、フィードバックループ構造を伴う反復により、その偏りは増幅され、明確な偏りとなり、最終的には中央値に収束します。

従って、ランダムに与えられた初期値αが反復により特定の複雑なパターンを作り、それがαを決めるランダムな作用に偏りを与えることができれば、それを繰り返しているうちに、その特定のパターンに収束することになります。

■コード状のパターン

1つの点状の出力が反復により時間に沿って現れるパターンは、時間軸の方向に対するコード状のパターンと言えます。

この時間軸の方向に対するコード状のパターンを、位置をずらしながら空間上に残していけば、空間的なコード状のパターンとなります。

コード状のパターンは、アナログなものとデジタルなものが考えられます。例えば生物の動作や声はアナログなものです。一方で、DNAや言語はデジタルなコードです。

デジタルなコードは、情報を保存したり伝搬や複製をするのにとても適しています。特にフィードバックループ構造を伴う反復は、アナログな僅かなズレが、反復を重ねる度に増幅されて全く異なるパターンになってしまうため、デジタルなコードによる再生の精度の高さは重要です。

そして、コード状のパターンは、原理的には無限に長くすることができます。これにより、DNAや言語は基本的には無限のパターンを持つことができます。

■分散と層状の構造

複数の反復が同時並行で影響を及ぼし合うことで、より複雑で多様なパターンを探索できます。これは分散構造による反復と言えます。

分散構造の反復では、状況に適したパターンが見つかり、それを再生する際に、外部からの影響でズレが生じる可能性があります。

ズレを抑えて精度良く再生するためには、外部や無関係の処理からの影響が及ばないようにする必要があります。このため、空間的に集中したり、時間的に集中する方が有利です。

さらには、空間的な境界や時間的な境界を設けて外部や別の処理からの影響を遮断できれば、より精度を高められます。

この集中や境界は、空間や時間的な層状の構造を意味します。そして、集中化や境界で分離した単位が、空間的に連携したり、時間的に連携することで、より大きな反復処理を形成することができます。

これにより層状の構造は多層構造を形成することができます。この多層性も、原理的には無限に重ねることができます。

細胞内の各組織は、反復処理を行うためにそれぞれ多数の化学物質が集まって形成されています。そして、細胞全体は細胞膜に包まれて外側との明確な境界を持っています。多細胞生物は全体としては多数の細胞の集合であり、皮膚や殻といった境界で外界と分離されています。さらに、群れや集団を形成します。これは生物における空間的な多層構造です。

脳も同様に、脳の各部位にはそれぞれ神経細胞が集まり、全体としては頭部に脳として集中しています。そして個人が集まってコミュニティや社会を形成します。これが知能における多層構造です。

時間軸上では、生物の様々な周期的な状態変化は、反復処理に時間的な集中や境界を生み出します。昼夜のサイクルや季節のサイクルなどがわかりやすい例です。知能も、集中や睡眠、オンとオフの切り替えなど、周期的な変化により時間軸上での層を形成しています。

■連続と離散

コードのアナログとデジタル、層の集中と境界は、連続的なものと離散的なものを意味します。

情報の保存や外部からの影響を防ぐという観点からは、離散的なものの方が有利です。しかし、連続的なものには柔軟性があります。特に、新しいパターンの探索においては、アナログなものの方が段階的により適切なパターンを見つけるというアプローチに向いています。

また、コンピューターとは違い、DNAや言語はデジタルな情報でありながら、そのデジタルなものを扱う処理の仕組みにアナログ性があります。このため、これらは保存は精度良くできるにも関わらず、アナログな処理により、柔軟さや探索のしやすさを向上させています。

また、生物や知能の扱うコードはこれらのデジタルなものだけでなく、アナログなものも含みます。さらに、自然言語の場合には文字はデジタルであるけれど、その意味にはアナログな曖昧さを含めることができます。

このように、生物や知能にはアナログとデジタルの両方が重要です。

また脳細胞のようにアナログな仕組みの上に言語のようなデジタルな仕組みを持つことができ、その上にアナログな意味を持つことができるように、アナログとデジタルは、概念的な層を形成することができます。

これにより、出発点がアナログであれデジタルであれ、生命や知性のようなアナログとデジタルを併せ持つ進化や学習の仕組みが実現できます。

また、層構造も、境界のない集中だけのものの利点と、明確な境界があることの利点がそれぞれあります。従って、層構造も、連続的な集中の部分と、境界による離散の両方が重要です。

■段階的な進化と学習

全くの無生物、無知性の状態から、フィードバックループ構造を伴う反復と、偏りの作用により、ランダムなパターンの探索と、パターンの保存と再生が進行し、進化や学習が始まります。

偏りが安定していたり強化されることで、パターンは先鋭化して、場合によってはデジタルに近いものになります。

進化や学習の中でDNAや言語といったコードが出現し、利用できるようになっていると、このパターンやパターンのもとになる初期値を、それらに保存させることができます。

また、多数の分散した反復処理は、進化や学習の中で一箇所に集まるようになり、境界を持つ状態に近づいて層状の構造を形成します。

コードと層状の構造は、無限の長さや広がりを持ち得ますが、はじめからその無限の領域を探索する必要はなく、短いコード、低い階層の中で探索を進めていきます。

そして、状況に適したパターンが見つかり、それがしっかりと記憶されて高い精度で再生できるようになると、そのコードや層状の構造を土台として、それよりも少し長いコードや少し高い構造の範囲で探索が行われます。

これが繰り返されることで、段階的に少しずつ進化や学習を進行させることができます。

この進化や学習の段階的な過程では、コードや層構造の、アナログとデジタル、連続と離散、時間と空間の組み合わせのうち、1つの側面で、状況に適した新たなパターンが見つかり、しっかりと記憶され、再生されるようになると、進化や学習が1つ進むことになります。

この進化や学習は、また同じ組み合わせの側面での進化や学習の土台になるだけでなく、別の組み合わせの側面での進化や学習の土台になることができます。

従って、ある局所的な探索では、アナログとデジタルのバランス、連続と離散のバランスを取ることで最適なパターンを探索しますが、全体としては全く新たな側面での進化や学習が進行します。

これにより、コードと層構造を持つ仕組み全体が、複雑に相互作用しながら、より複雑に相互作用する仕組みを生み出していきます。

■細胞と脳

細胞も脳も、明確な境界の中で、外部の状況から物質や刺激を受け取り、内部や外部の状態を変化させ、それをフィードバックしながら反復処理を行います。

明確な境界があることで、内部状態や反復は精度良く進化や学習で獲得したパターンを再現します。外部状態を変化させてフィードバックを受ける部分には外部からの影響によるブレが混じることはあるでしょう。しかし、アナログな処理のため、ある程度柔軟に処理できます。

この反復処理による状況に適したパターンの再生は、DNAや言語のデジタルな情報に基づく部分については、かなり高精度に行えます。一方で処理のアナログさは、柔軟な対応も可能にします。

このように、生物や知能は、アナログとデジタルのハイブリッドなコード、連続と離散のハイブリッドな多層構造、そして、これらの空間的な側面と時間的な側面を利用して、フィードバックループ構造を伴う反復的な処理により、状況に高度に適応します。

■人工知能

進化と学習のこれらの基本原理は、人工知能の学習にも当てはまります。現在大きな注目を浴びている生成AI技術の代表格である大規模言語モデルについて考えると良く分かります。

大規模言語モデルは単なるプログラムとデータの塊ですが、人間のように自然言語を使った会話や、そのやり取りの中で一定レベルの論理的な推論や創作的な知的活動が可能です。

しかし、学習と呼ばれるプロセスを行う前は、全く何の知的な機能や能力は持ちません。大規模言語モデルの学習は、様々な人間が書いた膨大な文章を繰り返し入力するという反復的な処理です。この反復の中で、モデルの中のニューラルネットワークの多数のパラメータが調整されていく形で学習が進行します。

このニューラルネットワークのパラメータは数値であり、それが相互に影響を与え合うことで、模擬的なアナログなパターンを実現します。学習の過程で、人間が書いた自然言語のテキストが含んでいるアナログな意味や、デジタル的で厳格な論理などが、このパラメータ群に偏りを与えます。その反復が、ニューラルネットワークの中にアナログ、デジタルに近いアナログ、ほぼ完全なデジタルのコード状の無数のパターンを形成していきます。同時に、偏りの集中や明確な境界による層も形成します。そして、それらが積み重なり、多層的な構造を形成します。

そして、学習が済んだ大規模言語モデルを組み込んだチャットシステムは、ユーザから入力された文章に対して、回答となる文章を生成する際に、1文字あるいは1単語ずつ出力するプロセスを反復します。その際、出力した文字列をフィードバックしながら反復します。このフィードバックループを伴う反復が、単に覚えた知識を出力するだけでなく、論理的な推論や創作といった高度に知的な活動を実現しているのだと考えられます。

■生命の起源

生命が誕生する前の太古の地球でも、フィードバックループを伴う反復の作用が働いていたはずです。

反復は、多種多様な無数の化学物質が、水とエネルギーの循環により地球上を巡る形で実現されていたと考えられます。エネルギーは太陽からの熱や光、地熱を元にしています。水の循環は、小さな池の中の対流や、地球規模の水の循環まで、様々なスケールで展開します。

そして、化学反応により新しい化学物質が生成されることにより、それがフィードバックを実現します。生成された化学物質は、循環により次の化学反応にフィードバックされます。

この化学物質の中のアミノ酸やヌクレオチドは、結合することでタンパク質やDNAというアナログな性質を持つコードやデジタルなコードになります。特にタンパク質は触媒として作用し、反復の中で強いフィードバックをもたらす可能性があります。

また、化学物質として炭水化物や脂質が形成されると、粘性により化学物質が集中しやすくなったり、膜が形成されたりします。これが多層的な構造を作り出すことに繋がります。

これらが反復の中で、はじめは小さな偏りを重ね、やがて確実にパターンを再生できる部分を形成します。そして、それを足場にして、次の偏りを生み出し、確実に再生できるパターンを増やします。その過程でタンパク質やDNAのコードを伸ばし、化学物質を集中させたり膜で保護します。

地球規模の様々なスケールの無数の反復が、長い年月をかけて、こうした化学物質の進化を進行させていくことができたはずです。それが、細胞の誕生へとつながったと考えられます。

■進化のバブル

ここまで、進化と学習を支える原理と構造について考えてきました。そして、様々な現象にこの原理を適用することを見てきました。それらは、一貫して進化を推進する様子を示しています。生命や知性にとって、進化は自然な流れであり、むしろ進化の方向へ強い圧力のようなものがかかっているように、進化は強い力で進行することが改めて見えてきます。

しかも、進化が進めば進むほど、進化が困難になるどころか、むしろ加速する性質があることも分かります。進化する仕組み自体も、進化するためです。

このことは、永続するかのように誤解されていますが、私は全く異なる見方をしています。それが、私が進化のバブルと呼んでいる現象です。

進化が進行し、加速する性質は、金融資産のバブル現象に似ています。そして、短期間で加熱した金融資産のバブルは、ある瞬間から突然雪崩のように崩壊します。

それと同じように、進化のバブルも、崩壊する危険があります。

それは、地球温暖化や、環境破壊、あるいは戦略核兵器や、バイオテクノロジーや人間の知能をはるかに超える人工知能などの高度な先端技術による人類文明の存続リスクなどを念頭に置けばわかりやすいでしょう。これらのリスクが顕在化すれば、進化のバブルの崩壊を意味します。

金融資産のバブルが、その熱狂の中で一部の人たちの警告があっても膨らみ続けるように、進化のバブルも様々な警告がなされていても膨らみ続けています。そして、崩壊した後でしか、多くの人たちはそれがバブルであったことに気づかないのです。

■最小カタストロフィコスト

進化のバブルは、単なる例え話ではないと私は考えています。

科学技術の進歩は、生活を豊かで便利なものにする一方で、何かを破壊する場合の労力や資源といったコストの必要量を低減させます。これは究極的には多くの人の命を奪ったり、社会全体や文明を崩壊させるためのコストを低くすることを意味します。

社会全体や文明を崩壊させるような大きな災害をカタストロフィと呼ぶとすれば、科学技術の進歩は、その最小コストを押し下げることになるという事です。この最小カタストロフィコストは、科学技術の進歩が加速すれば、それに従って急速に低下していくことになります。このメカニズムが、進化のバブルの危険性を裏付けます。

もちろん、こうした大きな破壊をもたらすような技術を厳格に管理したり、悪用されてもその影響を低減するような安全技術や防護技術を開発することは極めて重要です。しかし、原子爆弾を防ぐ技術、危険なウィルスを防ぐ技術、近い将来、人間よりも賢くなった人工知能の悪用を防ぐ技術などは、直感的に考えても難しいことがわかります。もちろん、真剣に技術開発の現実的な難易度を考えた場合も、元の技術の開発よりもはるかに難易度は高く、研究開発コストも実装コストも高くつきます。

しかも、これらの技術開発自体をアンダーグラウンドで反社会的な組織が行う可能性まで考慮すると、現実的にこれらに対策を取る事の難易度は飛躍的に難しくなります。さらに、現実の問題として、遺伝子編集技術や人工知能技術自体は進展し、そのための装置やプログラムや技術情報は比較的オープンになっている一方で、これらの悪用を現実的なレベルで防ぐ事ができる方法が見つけられているわけではありません。

残念ながら、この現状は、最小カタストロフィコストが着実に低減していっていることを意味しています。

■地球外の知性の運命

広大な宇宙の長い歴史の中で、地球以外の星に生命や知性の痕跡が見られないことは、良く考えてみると不思議です。地球が、最初の知性を持つ星なのでしょうか。

もし地球外の星に、過去に知的な生命体がいたのであれば、私達よりもはるかに高度な文明を築き、広範に宇宙進出をしていても良さそうに思えます。

特に、ここで説明したようにフィードバックループ構造を伴う反復が生命や知性の進化や学習の鍵であるなら、地球と同様に一定の条件を満たしていさえすれば、偶然や確率に頼ることなく、時間さえあれば生命や知性が誕生し得るということになります。そうであれば、宇宙には想像以上に生命や知性が存在していることになるでしょう。

にも関わらず、星間移動を伴う知的生命体の痕跡が観測されない理由として、いくつかの仮説が考えられています。

私は進化のバブルの観点から、主に2つのケースに現実の宇宙が収まっているのではないかと考えています。

1つは、進化のバブルによって文明が崩壊して宇宙進出に至らないケースです。そしてもう1つの重要な可能性は、進化のバブルを克服し、進化の加速を抑えることに成功したケースです。

後者のケースが実現されている場合、進化の圧力を抑え込むことが可能な段階に到達していることを意味します。これは私たちの地球の状況よりも、技術進歩に対する強い社会的なコントロールの能力を獲得した文明になっていることを意味します。その段階に到達した文明は、無節操な宇宙進出はせず、自分たちの文明の維持に必要な最小限度の範囲内でのみ、他の星へ進出できるだけの技術レベルにあえて留めていると考えられます。

他の星の知的生命体の進化がこの2つのケースのどちらかに至るという仮説を前提にすると、これらの文明が宇宙に多数存在するとしても、地球から見える範囲には宇宙進出が及んでいないと考えることで、私たちの知っている現実と辻褄が合います。

■さいごに:目指すべき道

私が生命の起源などの個人研究を通して進化や学習の原理を追求してきたのは、会話型AIが登場したことがきっかけでした。AIが自然言語を話し、限定的とは言え論理的な推論や創作ができるようになったことを知り、私はどうやっても人間が勝てなくなる未来は、危機的な状況であると考えました。そして、それを乗り越えるためには、未来を予測するのではなく、まず過去を根本的に理解する必要があると直感したのです。

この記事は、それから1年間で私が考えてきたことの集大成であり、進化と学習を支える根本的なメカニズムについて基礎的なことを整理できたつもりです。そしてそこから、進むべき道が見えてきました。それは、進化のバブルと私が呼ぶ現象を乗り越える方向へと、社会の進歩を向かわせるという道です。

これは、一部の知識人や意識が高い人だけが理解したり、行動することではありません。それでは、自然に強い力で進む進化のバブルを止めることは不可能です。

民主的な観点からも、現実的に必要になる力や知恵の量の観点からも、社会の大多数の人が、進化のバブルを抑制することの必要性を理解し、様々な分野やスケールにおいて、実際にそのための知恵を絞ったり活発な取り組みを行う必要があります。そうでなければ、着実に進化を押し進めようとする強い進化圧力を抑え込んだり、制御することは到底できないでしょう。

理想や道徳を掲げることだけでは、この道は進めません。理想に同意しない人も、道徳を煙たがる人も含めて、ほとんどすべての人がこの道を進むことに同意し、それぞれの立場やそれぞれの考えで力を発揮するようにしなければならないのです。そのためには、自由経済が成功を収めた例のように、様々な価値観を持つ個々人の自由な欲求や主観的な合理性とフィットするような方法で、前に進むような方策を考え出し、社会に組み込んでいくことが必要不可欠だと考えています。

これでようやく最初のマイルストーンまでたどり着きました。この先、まだ長く険しい道が続いていますが、進むべき方向は見えてきたと考えています。この道を進むために、何をすればよいのか、実際に何ができるのか、それを突き詰めていく必要があります。

サポートも大変ありがたいですし、コメントや引用、ツイッターでのリポストをいただくことでも、大変励みになります。よろしくおねがいします!