マガジンのカバー画像

[まちあるき話]

6
月刊誌「大阪人」にて2009年12月号〜2011年2月号まで巻頭コラム、見開きページにて掲載。「大人のための絵本のように」とディレクションを受け、実際に大阪各所を町歩きして、調べ…
運営しているクリエイター

#この街がすき

[まちあるき話]歴史と地域をつなぐ。

[まちあるき話]歴史と地域をつなぐ。

 「天王寺さん」まで時々散歩をする。 朝の6時半にはラジオ体操の人たち。大師会(だいしえ)と太子会(たいしえ)の縁日は、植木や骨董、古着の露店が並び、人々でごった返す。  
 今日は平日の昼間。観光客、外国人、犬の散歩、のんびりした日射しの中。その時々で境内は表情を変える。

 1500年前、大陸の文化とともに、新しい宗教の仏教を支持する蘇我氏と、日本古来の神を崇める物部氏の2大豪族の戦いがあった

もっとみる
[まちあるき話]世界遺産に続く道。

[まちあるき話]世界遺産に続く道。

 阿倍野の近鉄前の陸橋から、あべの筋を南に眺める。左側の近鉄百貨店は改装中、右側は地域の再開発と、今は大きな建物がすっかり無くなり、まっすぐな道の上は見晴らしがよく、広い空が続く。
 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の「熊野三山」に繋がる「熊野街道」は、天満橋の八軒家浜から、ここを通り大阪を縦走している。

 ちんちん電車に沿って歩いて行くと、八軒家浜から距離を示す「熊野かいどう」の石碑があり、

もっとみる
[まちあるき話]路上の園芸コンテスト

[まちあるき話]路上の園芸コンテスト

 日本の庚申信仰発祥の地といわれる青面金剛童子を祀る四天王寺庚申堂。そこに繋がる庚申街道、あびこ筋の一本西の筋を「西田辺」あたりから北上する。すっかり日の伸びた夕方、右へ左へプラプラと脇道を行くと、今も残る長家に出会える。和風、洋風、ステンドグラスに、バルコニー、前庭のあるのやら長家がこんなに多種多様とは知らなかった。昭和に開発され、戦火をのがれたモダーンな建築物。
 それに花を添えるは、路上の本

もっとみる
[まちあるき話]変わり目の風景

[まちあるき話]変わり目の風景

 JR環状線「福島」駅を降り、ドーナツ屋さんを曲がると「福島聖天通商店街」。この道は福島の聖天さん(如意山了徳院)への参拝道として古くより発展した。明治には大和田街道・梅田街道として、北区西天満一丁目を起点に尼崎に通じる物質流通道路でもあった。また、戦前は大阪の4大商店街の一つといわれていた。ただ、数年前の休日に歩いた時は、とても空が広く静かな商店街だった。

 けれど、今日は第4金曜日。テレビや

もっとみる
[まちあるき話]豊かな淀み

[まちあるき話]豊かな淀み

「葦原中国(あしはらのなかつくに)」は水辺に自生する葦が生い茂った中心の世界。日本神話が描いた高天原と黄泉の国の間にあるとされた、人間の住む所の表現だ。
 城北公園の北、堤防を上がると眼下の淀川には葦や夏草が生い茂るワンド群。河川敷に降り、ワンドに渡ると視点は川の中に移り、天は高く大空が広がり、目の前には生い茂った葦が足元まで続く。大阪市内とは思えない景色がここには広がる。

 古代、淀川の水路は

もっとみる
[まちあるき話]濃密な辻

[まちあるき話]濃密な辻

 「辻」という文字は、2つの世界が交差する境界を意味する言葉として、作られたという。そこは、地域の人が集まるのに都合の良い場所であるとともに、人や事、いろんな物が交流する場所である。

 路面電車「神の木」駅から歩くと、住宅地の中、アチコチから道が集まり、すこし広がった所に「六道の辻、閻魔地蔵堂」がある。「閻魔地蔵縁起」によると、こちらの御本尊は難波(なにわ)の浜におられたが、住吉(すみのえ)の大

もっとみる