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好きからはじまる着物

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着物にかかわりはじめてからこれまでのあいだで、よかったことや困ったことの体験を綴りました。ふだんの生活の中に、着物を身近に感じる。着物っていいかもと感じる。着物をきっかけに交流の… もっと読む
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あの日

あの日

なぜか、大人になって出会う〝同い年〟の人に、親近感があります。〝同い年〟と知って生まれる心理は、日本独特の文化的なものが影響しているのだとか。

短大の茶道サークルがきっかけで、着物が好きになりました。いつか、お気に入りの一枚を見つけて、買ってみたい。と、憧れました。

社会人三年目。休日に立ち寄ったショッピングセンターで、着物が目に留まります。呉服店は、重厚な店構えを想像していましたが、違いまし

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自己紹介

自己紹介

こんにちは。はじめまして。小谷有里です。

学生の時、茶道サークルで着たことがきっかけで、着物が好きになりました。着ると背筋が伸びる心地良さがあります。着付けを習い、自分で着ることができるようになりました。 もっと着物に関わりたくて、結婚式場でアルバイトをしました。着付けのプロが、どんなところに配慮して、着付けているかを目の当たりにしたときは、奥深さを感じました。着物を通して日本文化に触れる、とい

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きっかけ

きっかけ

「せっかくだから口紅を付けましょうね。」

平成元年。秋風が朝の冷たさを届ける。近所の小さな美容室。赤い口紅。ヘアセットと着付けが終わると、いつもと違う、特別な日がはじまりました。

その日は、短大の学園祭。所属していた茶道サークルでは、キャンパス内でお茶会を開催することになっており。着物でおもてなしをするために、早朝からの支度となりました。

母の友人から借りた、小紋の着物を身にまとうと、暖かく

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雨模様

雨模様

平成四年の秋。友人代表スピーチを任されたあの日は、快晴でした。

ハレの日には、母が贈ってくれた加賀友禅の付け下げと、佐賀錦の帯と決めていました。付け下げの着物は、紅梅色に秋草、牡丹などが描かれているもの。その衿元には、マゼンタ色の伊達衿を入れて、つつじ色の帯揚げと帯締めでコーディネートしました。華やかに装い、緊張しながら、披露宴会場へ向かいました。

乾杯の準備が始まると、ドキドキが増してきまし

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送別

送別

契約満了のため、居心地のよかった職場を退職することになりました。二〇〇一年の秋でした。

送別の記念品に、職場の方から帯締めをいただきました。薄香色(うすこういろ)の冠組(ゆるぎぐみ)の組紐で、フォーマルでもふだん使いにもできるという、便利な帯締めでした。絹の柔らかさと光沢を感じる素敵なもので、手に取ると、当時を思い出します。

新橋駅近くの古めのオフィスビルで、デスクワークをしていました。メール

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押し花

押し花

着物は、式典に華やかさを添えます。式典こそ着る機会として、入学式や卒業式は、着物で参列しようと心に決めています。

2017年4月。息子の中学校入学式でした。

新一年生は165名。少し大きめの、真新しい制服が初々しい。全員が紺色のブレザーとグレーのスラックス。当時は男子校でした。付き添う保護者は、生徒数より多く、ほとんどの人がスーツ姿の中、着物のお母様方を数人見かけました。着席すると、黒っぽく埋

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姿勢

姿勢

着物の「帯」には役割があります。

帯の種類には、袋帯、名古屋帯や半幅帯など、着物に合わせて素材やデザインが使い分けられています。どの帯にも共通することは、着物の上から、帯を腰の上に巻いて結び、着物を身体に固定させる、ということ。着るために必要なものですが、その他に、「帯」に効果があることを体験しました。

令和四年春学期、早稲田オープンカレッジの講座「声優が教えるヴォイストレーニング」。全十回の

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きもの特典

きもの特典

「きものでご来館された方は、一般200円引きの料金となります」。恵比寿の山種美術館のホームページに書かれていた特典は、着物好きには嬉しい割引です。そして、特典があることで美術館に着物姿の来場者が多いことを期待しました。

令和四年。冬の日。暖かな日差しの中、ひんやりとした風を頬にうけて、足取り軽く美術館へ向かいました。コーディネートは、濃藍に近い地色に花唐草の模様が水浅葱色で着物全体に描かれている

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革のきもの

新しい自然の美しさに、着物の存在感を感じます。

令和四年五月。篠原ともえさんが、デザインとアートディレクションを務めた鹿革のきもので、世界的な広告賞ニューヨークADC賞を受賞したことが、朝の情報番組で取り上げられていました。

着物って、正絹や木綿などが、よく目にするものだけれど、皮革で着物が作れるのか、などと思いながら、篠原さん自身が出演されていたこともあり、情報番組にくぎ付けになりました。

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猛暑

猛暑

夏着物は涼を届けてくれます。

青空が眩しい夏。街中で、薄物の夏の着物姿が目に留まります。明るい色目の物が軽やかに映り、不思議と涼しさを感じます。

二十年以上前に購入した夏の着物を、タンスの中から取り出しました。これまでに一度、家の中で着ただけで、出かけたことはありませんでした。

夏の日差しは暑くないのだろうか。着物は、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるようにできている、と聞いたことがあるけれど、

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声

あー、無かったことにしたい、カビとシミ。着物の惨状に。心の悲鳴が止まらない。

久しぶりにタンスから着物を取り出すと、大変なことになっていました。防虫剤と除湿剤の取り換えは、間に合っておらず。加えて、タンスを置いていた部屋は、日中過ごすことのない、荷物置き部屋。湿度が高かったのです。

六~七年前、勤務先は、合併などで組織変更が頻繁にありました。人の流動が激しいせいか、仕事はこれまでで一番忙しく、

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掘り出し物

掘り出し物

「着物って、どこで買ったらいいの?」。そう聞かれて、気軽に比較できるネット通販を思い浮かべます。気になる着物は……と、「更紗 更勝」で検索。すると、「メルカリ」がヒット。呉服店の新品ではなく、中古品が見つかりました。

三十年前、社会人二年目の頃。仲の良い呉服店の店員から勧められ、更紗染の着物を購入しました。

若葉色の地色、草花や動物柄が細かく敷き詰められ、色数も多い小紋に、心を奪われました。色

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成人のお祝い

成人のお祝い

息子の「着たい」にこたえたい。

中学生の時、浴衣を着て同級生と花火大会を楽しんでいました。あれから六年経ちますが、その体験がよかったそうで、今年の夏、また着たいと話してくれました。そこで、成人式に着物をすすめてみると、

「うん、着るでしょ。着物、着てみたい。〝和〟って感じがする」

と、思いがけない返事がありました。一生に一度の新成人のお祝いに、記念に残ることをしたい。どんな着物がいいだろうと

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着物との日々

着物との日々

好きな着物を好きな人と共に。

早稲田大学Life Redesign Collegeへの入学は、自分のスキルの棚卸をして、これから何をしたいかを考えることを目的のひとつにしていました。忙しさに追われる生活をリセットしたかったので、仕事を辞めました。

これまで、好きな着物は、買う事が出来ても、装い、楽しむ時間は、ほとんど作れていませんでした。

通学をきっかけに、約一年間着物に触れて、もっとコーデ

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