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猛暑

夏着物は涼を届けてくれます。

青空が眩しい夏。街中で、薄物の夏の着物姿が目に留まります。明るい色目の物が軽やかに映り、不思議と涼しさを感じます。


二十年以上前に購入した夏の着物を、タンスの中から取り出しました。これまでに一度、家の中で着ただけで、出かけたことはありませんでした。

夏の日差しは暑くないのだろうか。着物は、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるようにできている、と聞いたことがあるけれど、本当だろうか、と疑心暗鬼。これまでは躊躇していたけれど、今年こそ体験してたしかめてみよう、そんなふうに意気込んでいました。


毎年のように増えている猛暑日。令和四年の夏も、連日、暑い日が続いていました。

取り出したのは、麻の着物。夏用で、とても軽くて、ふわっと張りがあります。そのため、身体に添わせて着付けをするのが少し難く、何度も着付けをやり直すことに……。でもその分、密着度が少ないので風が通りました。いい調子、と思い、最後に夏用の帯を締めて完成です。

早速、家を出ると、もわっとした、熱気が襲ってきました。やはり猛暑、じわじわと汗ばんできました。暑さの理由はなんだろう。着物自体は暑さを感じないものでした。補正で使っているウエストに巻いたタオルか、着物を留めている腰紐なのかもしれません。

日傘で影を作りながら歩くと、風が通り始めました。袖口からは、すーっと風が抜けると涼しさを感じました。着物は、腕や脚を覆っているので、日差しを遮ってくれました。夏着物は、想像していたよりも涼しいものでした。

外では、暑さと涼しさの両方を感じましたが、建物の中は違いました。洋服のときには、空調が寒く感じたことがありましたが、着物は、暑くもなく寒くもなく過ごせました。上着で調節がいらないことは、発見でした。


それでも、外から建物に入ったばかりだと、暑さと汗がすぐには引かないこともありました。街で涼しげに歩いている人は、何か工夫をしているのかもしれません。ある日、私の姿をみていた友人から、

「大変だね、無理しないでね」

と、言われてしまいました。

自分も涼しく、周りには「涼」を届けているつもりだったのですが、そうではないこともあるようです。私にとっては、着慣れない夏着物。無理することもないでしょう。盛夏に限っては、「着る日」「着ない日」を選ぶことにして、街で見かける着物姿から届く涼を、楽しむ夏となりました。

来夏も、涼が訪れますように。そして、涼を届けられますように。

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