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ケンヨウ
2024年3月26日 16:13
見上げた天井は、どこか虚ろで、今までも、これからもずっと変わらないのかななんて思って眺めていた。少し湿った空気が辺りを漂う土曜の昼下がり。 なにかするにも、ままならず、ずいぶん前に撮った六本木の写真をインスタのストーリーズにアップする。たかだか200人くらいのフォロワーのための虚しい作業に、いつものように後悔をする。ものの数分で3つのいいねがついて、そのあとパタっとなにもなかったように、めくる
2023年4月18日 16:41
ここは静かなところだった。 いつも思うのは、喧騒は心地よいということだった。人ごみに紛れていると、人が自分の壁となって守ってくれているような錯覚を覚えた。私は、ずっと、この片田舎で生まれたことに嫌悪を抱いていた。それが如実に心に存在したのは、中学生の頃からだったと思う。親元から離れる機会が増えるほど、故郷を遠ざける傾向は強くなっていった。 同じ学校の男と付き合ったときに、私はこの地を離れる
2022年3月29日 16:26
ある春の日の午後だった。部活がはやくに終わり、僕は着替えて教室を出た。あたたかな風が廊下を吹き抜ける。その誘いに足は運ばれる。さらさらとなびくカーテンは、人の気配を薄くしていく。風にさらわれたカーテンの裏側に現れた人影。僕はドキッとする。でも微塵も動かない、その影は半身をこちらに向けて佇んでいる。風に乗った葉の香り。近づくにつれて、乾きがなびいて、髪の毛を揺らす。手をその肩に置くと
2021年12月28日 14:49
吹き荒ぶ風の音に目が覚める。 布団の触りと留まったほのかな温かさが体を動かしてくれない。しかし微かに聞こえるお湯の沸く音。まもなく生活の針が動き出す頃だ。 窓から見える空の色は、澄んでいて、冬の日のそれを一身に表していた。 ふと目を閉じてみると、季節の環が駆け巡る。春の、夏の、秋の、それぞれの時は都合よく目の前に現れては消えてゆく。 一瞬の光は、常に重なり合って、また季節は折り重なる
2021年12月7日 14:50
電車の座席が好き。 硬くもなく、やわらすぎず、体にフィットする感じが、好きなのだ。 でも、がらんとした車内はあまり好きではない。立っている人は少ないが、座席はある程度埋まっている方が、安心する。 ほら、今も目の前に並ぶ人たちが、各々本を読んだり、スマホを眺めたりしている。 ゆらりゆられ、電車の振動は世界を運ぶ。そして時も運ぶわけだ。なんてことのない日常だけれど、この走るスピードのざわ