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職場の決め手

復帰時期の設定

春から社会復帰する。そう決めたのは、二人目を身籠もる前だった。
『お母さんだけでなく社会人でもありたい』と思っていたことと、性格上、期限を決めないいと動き出すのが遅くなって、どんどん復帰が遅れることが予想できたので、自分の中で復帰時期を決めたのだ。
就職してすぐ妊娠はしにくいから、二人目を望むなら復帰前に。そう思い、年子で子供を産んだ。

2020年春には、上の子が2歳、下の子が半年になる。まだまだ幼い。入園は決まったけれど、だからといって、子供を産む前の自分とは残念ながら市場価値が違う。結果的に「就職活動」みたいなことはしなかったが、もししていたとしたら、もっと実感したかもしれない。
幼い子を二人抱えていれば、予想できない事態が起こる可能性はそれなりにある。保育園からの呼び出しの頻度は、親の私でさえ予想できないのだから、現実問題、採用者側はもっと予測できずに不安になって当然だ。

だから、社会復帰先の職場候補を考え始めた日、私は気持ちがやや沈んでいた。この世にたくさん存在する“職場”の中から、(採用してもらえるかはわからなくても)自分に合う場所を見つける。それは自分が望むように生きられるチャンスのはずだけれど、職場探しは心躍るものではなかった。
それはきっと、自身の“市場価値”やら“条件”は悪いということを自分自身に刷り込んでいたから。そんな風に自分で自分の価値を下げるようなことを考えてしまえば、当然、気も沈む。

でも、たとえ自身の価値が変わったとしても、「どこでもいいから雇ってくれるところがあれば就職したい」という気持ちにはなれない。

だから、まずは妥協せずに徹底的に選り好みすると決めた。その結果どこにも採用してもらえなかったら、その時また考えればいいと思ったのだ。


職場に何を求めるか

私の場合、大きく分けるとこんな感じだ。

  • やりたい仕事

  • 勤務条件に満足できる
     時短勤務 土日祝休み 給料 保険 車通勤など

  • 人間関係が良好で雰囲気のいい職場

就職について考え始めた当初、自分の市場価値について考えていたせいか、つい最初から妥協できる範囲までセットで考えてしまいそうになったけれど(例えば給料でいうと、月給いくらが理想だけどいくら以上なら許容範囲かなって考えてしまう。)、そうすると自分のベストの希望がぼやけるので、まずは「これは望みすぎかも」だとか「採用してもらえるならこの辺までは妥協できる」という思考は捨てた。

その上で、自分の希望だけを集めて、それを満たす就職先があるのか考えてみる。あればそこを受ければいい。ない場合や、あったとしても勤務条件の折り合いがつかない場合に備えて、希望の優先順位と譲れる幅を考えようと思った。

「人間関係が良好で雰囲気のいい職場」の探し方

職種や勤務条件とは違って、職場の人間関係が良好か、そして自分もその職場に馴染めそうかというのは外部からは容易にわからない。
そのため、できることならすでに面識のある人と、そして職場の雰囲気がわかっている場所で働きたかった。

もちろん、まったく関わりのなかった場所でも入社してみたらすごくいい人ばかりで、職場の雰囲気も自分によく合うということは往々にしてあるので、「すでに面識がある」という条件は、就職活動の状況次第では省こうと思っていたのだけれど、人間関係がよくない職場だった場合、そこに長年勤めるのは無理なので、できることなら予めそのリスクを回避したかったのだ。
特に私の場合は、小さい子が二人いて職場に迷惑をかけてしまうこともあるだろうから、そういう時に周囲に気を遣うあまり、“言い出しにくい”、“帰りにくい”と萎縮し続けてしまう職場だとしたら、仕事以外に心を砕かなければならなくなって絶対に長続きしないと思った。

そして、子供のことは抜きにしても、職場の雰囲気というのは仕事の士気を大きく左右する。
働くことが「何かのため」だとしたら、私は自分が働く目的の中に上司や同僚も入れたい。働くことは大変だしつらいことだってあるけれど、“この人たちの力になれる自分でありたい”と、そう自然に思える人たちと働くことは、どんな状況下でも踏ん張るための重要な要素のひとつだと思った。

だから、時短勤務や土日祝休みと同じように、人間関係が良好で雰囲気のいい職場というのは自分の中で大切にしたい条件で、そうやって考えた時、自ずとひとつの場所が頭に浮かんだのだ。


「条件」だけでははかれないもの

幸い、その職場への就職が決まったので、就職活動らしいことは何もしないままだった。
ただ、細かいものも含めてすべての希望がかなったかというと必ずしもそうではない。それでも、他の就職先も探してみようとしなかったのは、自分の「希望条件」以外の要素も大きく関係している。

数年前に、前の職場を退職した当時、私はこの春から就職する職場の先生と既に交流があった。そのため、退職を知った先生が一緒に働かないかと声をかけてくれたのだけれど、一度仕事から距離を置くと決めていた私はそれを断り、家庭に入った。
誘いを断ったし、そもそももう働いてさえいないのだから、友達関係ではない以上疎遠になって当然なのに、その先生は毎年私を食事会に招待し、年賀状を送ってくれた。この数年間、関係が途切れなかったのは、先生がそうしてずっと繋ぎ続けてくれたから。

それだけじゃない。
就職のお願いに行った際、二つ返事でOKしてくれたこと。嬉しいと喜んでくれたこと。そして、自分が作ってきたものをあなたに継いでほしいと言ってくれたこと。

こんなに温かい気持ちをもらっているのに、こちらはいろんな「条件面」ばかりで物事を捉えるのはなんか違うと思えて。一緒に働いた時期はなくても、こうしてたくさんの愛情と信頼をもらって、それなのにまだ何の恩返しもできていないよな。尽くしたい、力になりたいという気持ちで働きたいと思った。
そしてそんな風に働ける場所はやっぱりここしかない気がしたのだ。もちろん、他の勤務条件がだいたい希望どおりだったという前提であるけれど、必ずしも全部が希望どおりというわけでなくとも、恩だとか絆だとか、「条件」だけでははかれない大切なものに後押しされて、他を探すことなく就職先を決めた。


選択に自信を持つ

まだ働き始めていないので、実際どうなのかは正直わからない。
働き始めたら、時にはお互いに「思ってた感じと違う!」なんてことももしかしたらあるのかもしれない。

でも、自分の選択に自信を持つことは大切だと思う。
いろんな事情で選択肢が限られていること、そもそも選択肢がなくてそれしか選べなかったということもあるだろう。
いろんな事情のもとで、考えて考えて出した答え。その選択がベストに決まっている。
仮にその選択が失敗だったと思ったとしても、それは選択したからこそ気づけたことなのだから、間違いなどない。気付きを今後に活かせば良いだけの話だから。


春はすぐそこ

長い長いと思っていた休業期間も終わりが迫っている。
社会復帰は楽しみな反面、恐ろしくもあり、不安でもある。“ワクワクしている”と書きたいけれど、それが正直な気持ちだ。

新生活を始める時はいつだって、心がざわっとする。慣れるまでは、疲れも溜まる一方だろう。みんなそんなものかもしれない。

きっと、気付きや悩みも生まれると思う。子育てのこと、保育園のこと、仕事のこと、家族のこと……。その時にはまたここで、そっと吐き出したいと思っている。














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