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藍と暮らす

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藍に携わることで感じたことをまとめています。
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#藍染

藍を「木」としたときの「森」って…

藍を「木」としたときの「森」って…

 今日は徒然と、藍関連の調査を続ける中で感じたことを書きます。
 藍染に関連したテーマを設定してこまごまと調査を続けていますが、だんだん「藍染」という枠に付随して、もっと大きなテーマがその根底にあるのではないかという実感が深まってきました。
 つまり、「藍」というテーマを「木」に例えると、その木の生きている「森」が周辺に存在しており、その森のありようや成り立ちなどが、「藍」という「木」の存在と密接

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藍の生葉染 絹を澄んだ色に染めるコツ

藍の生葉染 絹を澄んだ色に染めるコツ

 タデアイの生葉で、澄んだ色かつ色落ちしにくく染めるコツ、のご案内です。でもこの方法は、タデアイの葉をたくさん使うという点で原料調達のハードルが高くなります。技術的には全く難しくありませんので、「今年は藍をたくさん植えた」という方にはぜひ取り組んでいただきたい染色作業です。
 今回は、絹を生葉染する場合についてのコツをご案内いたします。

生葉染の色が濁る理由 よく見かける生葉染の生地の色のほとん

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【重要】久留米絣の藍菌レポート(2)

【重要】久留米絣の藍菌レポート(2)

 先の「久留米絣の藍菌レポート(1)」から、昔ながらの藍染に伝えられてきた特徴と藍菌の関連を考察します。その上で、化学合成藍と天然藍の違いを改めて比較してみましょう。
 とは言っても、「藍菌は特定の一つの菌種を指すものではない」ので、ここで考察の結果を断定的にいうのは避け、可能性として考えられることを共有できればよしとしたいと思います。藍染がもっている力の根拠を少しでもクリアにイメージできると、藍

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【重要】久留米絣の藍菌レポート(1)

【重要】久留米絣の藍菌レポート(1)

 このレポートに出会ったのは昨年の夏でした。藍染をする人にとって重要課題である「藍建て」と「藍甕の手入れ」の考え方に直結する、「藍菌」についてのレポートです。この1年の間に補足資料や複数の染め場の経験談に触れ、私なりにある程度噛み砕けたように思いますので、ぜひ藍染に携わっている方々と共有したいと思います。

 藍菌と呼ぶべき菌がいることは確実なところですが、その実態についてはわからないことの方が多

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INDIGO SESSION vol.2 藍と絹 完成

INDIGO SESSION vol.2 藍と絹 完成

 今回はちょっと専門的な内容となっています。
 2023年12月に開催されたインスタライブ、INDIGO SESSION vol.2 「藍と絹」を編集した電子書籍を発売しました。

なぜ絹の藍染は難しい? 木綿や麻といった植物性の繊維(セルロース系)を染めるのと、絹や獣毛といった動物性の繊維(タンパク質系)を染めるのとでは、留意するべき点が違うため、染色の際の手順や工夫を変える必要があります。
 

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藍と旅 第3回本建て正藍染展

藍と旅 第3回本建て正藍染展

 今回のテーマは軽やかですね。そして、初の東京開催です。
 藍染め石けんシリーズも久しぶりにイベント復帰します。なんだか感慨深いですが、浸ってる場合じゃない。まだ予告の段階なのに…

旅する藍の姿 今回の展示会のテーマは「旅」。藍染めは旅人に嬉しい機能満載です。ゴールデンウィークの準備に、ぜひお役立ていただきたいのが藍染アイテムの数々です。
 その機能性や歴史のエピソードを、展示会の前日4月19日

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本建て正藍染展 in 大阪2023

本建て正藍染展 in 大阪2023

 明日から始まるイベントのご紹介を今日している時点で、どれほど内心で滝汗を流している状況かバレまくりの更新です。
 どうしてもお伝えしたいことがありますので、ギリギリになってもお構いなしにまいります。(大阪行きのバスの乗車時間があと3時間後に迫っている…)

本建て正藍染の仲間達 今回の展示会は、同じ師匠の元で藍染めを教わった仲間たちの作品が集います。
 栃木県佐野市で藍染めの工房「紺邑(こんゆう

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藍染めの堅牢度

藍染めの堅牢度

 天然の染料で染めている、と言えば草木染めをイメージされることが多いと思うし、草木染めなら色褪せも色落ちもしやすいのだろうとも思われがち…
 ですが、染料の調整の仕方や染め方によっては、そうでも無いのです。

とても尊敬している絹織物の草木染め工房IKTT 草木染めのクオリティの高さで掛け値なくリスペクトしている工房が、カンボジアにあります。クメール伝統織物の工房で、絹糸を括り、草木染めで先染めし

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古い資料・一次資料の大切さ

古い資料・一次資料の大切さ

 先日、築50年以上経つ自宅の片付けをしておりましたら、藍染めについて書かれた資料がひょっこり出てきました。
 亡き祖父が勉強していたと思しきメモ書きがページの余白に残されており、思わず目を凝らしてその文字を追いました。阿波藍の歴史がどのようにして始まったのか。それは誰が何故どのようにして始めたのか。祖父は資料の中からキーワードを引き出して簡潔に整理し、把握しようと努めていたようです。

「通説」

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アナログ人間の電子書籍出版社

アナログ人間の電子書籍出版社

 江戸時代と変わらず、灰汁と蒅(すくも)しか使わずに甕(かめ)を建てる(調整する)人が、電子書籍ですか。って面白がられました。自分でもウケてます、この状況。

何か言いたい。私もみんなも。 何かを作ったり表現したりすることをライフワークにしている人が、私の周りには多いです。あなたの感覚的性質はデジタルかアナログかと問われれば、ほぼ全員が「私はアナログ」と答えるでしょう。当然私もそうなのです。
 そ

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電子書籍を出版しました

電子書籍を出版しました

いつも言い足りない気持ちでいたアレコレを、ぎっしり詰め込みました。

藍オタク話炸裂本 本日、初の電子書籍を出版しました。(自分で好きなように出版したかったので、出版社も立ち上げました。)
 植物のタデアイのことや藍染めのこと、顔料の沈殿藍のことを主に書きました。
 栽培方法や染色方法などのhow-toにはほとんど触れていません。主にタデアイや沈殿藍(青黛)の効能、藍染めの機能性、現在期待を寄せて

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藍染めで儲けられるか?食べていけるか?2

藍染めで儲けられるか?食べていけるか?2

意識しておかなければならないこと 以前、同じテーマで記事を書いた時は、いわゆる藍染めで儲けるためのノウハウを提示するでもなく、ただひたすら「自分で考えろ」と書いて終わった記憶です。誰の何らの期待にも応えない内容なのにどこかドヤ顔という、変な記事でした。ごめんなさい。

 今回は、あの記事から少し時間が経ちましたので、現時点でこのテーマについて私が実感していることをお伝えしてみたいと思っています。

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古着を藍染めする 2

古着を藍染めする 2

 ご依頼分の染色作業の合間に、自分の修行として古着の染色を行なっています。今回はPRADAの年季の入った白いブラウスをゆっくり染め上げました。細やかなディテールを楽しみながらの染色作業となりました。

1、PRADAのブラウス(白)

 今回入手した古着のPRADAの白いブラウスは、元の持ち主さんにとても気に入られて長く着用された様子で、画像では分かりにくいのですが全体が軽くクリームがかるほどに変

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藍染めに「至上の染め方」は存在しない

藍染めに「至上の染め方」は存在しない

 タイトル画像は、藍染めの染料「すくも」です。こんな土塊のようなものからあの美しい藍色にどうやって染め上げるのか。本藍染め、正藍染め、化学染めとか割り建てとか、沼に足を取られて引き摺り込まれそうな気持ちになるほど、紛らわしい「言葉」と「技法」に溢れた藍染めの世界。
 ああ、誤解を呼びそうなタイトルをつけてしまったと、既にうっすら後悔しつつ書き進めようと勇気を奮い立たせているところです。

1、方法

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