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藍と暮らす

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藍に携わることで感じたことをまとめています。
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記事一覧

藍染めで儲けられるか?食べていけるか?3

藍染めで儲けられるか?食べていけるか?3

 毎回不完全燃焼に終わるこのタイトルで、しつこく3回目の更新です。前回の2から1年半以上経過し、その間に展開した諸々の取り組みの中で多少アップデートしたことがあるので、そこを踏まえて記録したいと思います。
 が、今までより突っ込んだ内容になるので、今回は有料マガジンに投げ込むことにします。藍染に真摯に向かい合っている人、向かい合おうとしている人に呼びかけもあります。つまり、ここにきて初めて、ちょっ

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明治期、阿波藍ギルド崩壊の意味 (2)

明治期、阿波藍ギルド崩壊の意味 (2)

 明治維新前後の大きな社会変革の中で、一大ギルドを形成していた阿波藍業界にも、輸入もののインド藍やそれに対抗しようとする国産沈殿藍製造工場設立の動きで混乱期が訪れました。
 本来なら手を携えあって輸入ものの藍染料と立ち向かいたい阿波藍ギルドと国産沈殿藍一派ですが、理想的な活動にはなかなか結び付かなかったようです。

国産沈殿藍工場と阿波藍商の対立 明治期、阿波藍ギルド崩壊の意味(1)では、大阪に沈

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忌部藍集中講座

忌部藍集中講座

 3年前から毎年夏に私たちの藍農園で開催しているクローズドの講習会です。メインは「ちょっと神経質で失敗しにくい沈殿藍の作り方実習」。作業の進行に合わせて座学もあり、阿波忌部と藍についての歴史の話、藍が発色する仕組みとタデアイの特徴についての話、その他藍染に関連するさまざまな調査結果からのトピックなどをお話ししています。

 沈殿藍が沈殿するのを待つ間に、関連する場所をいくつか見学に行くこともしてい

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正藍染展「植物の色を纏う」

正藍染展「植物の色を纏う」

 突然ですが、明日から始まるイベントのお知らせです。明日からです。←2度言う
 会場は福岡県福岡市のアクロス福岡 1階 匠ギャラリー(ギャラリー1)です。建物内にはこんな素敵なポスターが掲示されておりますので、目印になさってくださいませ。

 今回の展示は藍染だけでなく、草木染めの作品もラインナップされていて、色合わせを楽しめる内容になっています。出展しているのは、同じ師匠に藍染を教わった4名の仲

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藍を「木」としたときの「森」って…

藍を「木」としたときの「森」って…

 今日は徒然と、藍関連の調査を続ける中で感じたことを書きます。
 藍染に関連したテーマを設定してこまごまと調査を続けていますが、だんだん「藍染」という枠に付随して、もっと大きなテーマがその根底にあるのではないかという実感が深まってきました。
 つまり、「藍」というテーマを「木」に例えると、その木の生きている「森」が周辺に存在しており、その森のありようや成り立ちなどが、「藍」という「木」の存在と密接

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藍の生葉染 絹を澄んだ色に染めるコツ

藍の生葉染 絹を澄んだ色に染めるコツ

 タデアイの生葉で、澄んだ色かつ色落ちしにくく染めるコツ、のご案内です。でもこの方法は、タデアイの葉をたくさん使うという点で原料調達のハードルが高くなります。技術的には全く難しくありませんので、「今年は藍をたくさん植えた」という方にはぜひ取り組んでいただきたい染色作業です。
 今回は、絹を生葉染する場合についてのコツをご案内いたします。

生葉染の色が濁る理由 よく見かける生葉染の生地の色のほとん

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【重要】久留米絣の藍菌レポート(2)

【重要】久留米絣の藍菌レポート(2)

 先の「久留米絣の藍菌レポート(1)」から、昔ながらの藍染に伝えられてきた特徴と藍菌の関連を考察します。その上で、化学合成藍と天然藍の違いを改めて比較してみましょう。
 とは言っても、「藍菌は特定の一つの菌種を指すものではない」ので、ここで考察の結果を断定的にいうのは避け、可能性として考えられることを共有できればよしとしたいと思います。藍染がもっている力の根拠を少しでもクリアにイメージできると、藍

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【重要】久留米絣の藍菌レポート(1)

【重要】久留米絣の藍菌レポート(1)

 このレポートに出会ったのは昨年の夏でした。藍染をする人にとって重要課題である「藍建て」と「藍甕の手入れ」の考え方に直結する、「藍菌」についてのレポートです。この1年の間に補足資料や複数の染め場の経験談に触れ、私なりにある程度噛み砕けたように思いますので、ぜひ藍染に携わっている方々と共有したいと思います。

 藍菌と呼ぶべき菌がいることは確実なところですが、その実態についてはわからないことの方が多

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「インド藍」は染料か植物か

「インド藍」は染料か植物か

 特に気にしたことのなかったことが、突然気になり出しました。気の向くままに調査してみましたら、色々と混乱した状態だったことが見えてまいりました。
 私たちが「インド藍」という言葉を口にする時、もしくは目にするとき、状況によってその言葉が染料を指したり植物を指したりしています。そもそもどうしてそうなったのか…実際に石垣島を訪れた時に初めて伺ったお話がきっかけとなり、調べてみたことをご案内しようと思い

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藍染にタデアイの茎が役にたつ

藍染にタデアイの茎が役にたつ

 タデアイの中でインジカン(藍色に発色する前の成分)を含んでいない部位として、蒅(すくも)作りでは基本的に除去される茎。
 けれどもしかして、意外と役に立ってきたのかもしれないと考えられる記述や体感があるので、まとめてみようと思います。
 藍染めの下準備にお役に立つことがあるかもしれません。

アミノ酸(タンパク質)を豊富に含む茎 タデアイの全草にアミノ酸(タンパク質)が豊富に含まれています。これ

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INDIGO SESSION vol.2 藍と絹 完成

INDIGO SESSION vol.2 藍と絹 完成

 今回はちょっと専門的な内容となっています。
 2023年12月に開催されたインスタライブ、INDIGO SESSION vol.2 「藍と絹」を編集した電子書籍を発売しました。

なぜ絹の藍染は難しい? 木綿や麻といった植物性の繊維(セルロース系)を染めるのと、絹や獣毛といった動物性の繊維(タンパク質系)を染めるのとでは、留意するべき点が違うため、染色の際の手順や工夫を変える必要があります。
 

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阿波の藍ビジネスはシステマチックだった

阿波の藍ビジネスはシステマチックだった

 noteでアカウントを作って記事を書くようになってからずっと、「藍染め 儲かる」「藍染め 儲けられる」というキーワード検索で訪問される方が後を断ちません。そして、私はその期待に応えられるような記事を一度も書いたことがありません。今回もその期待に応えるために書く記事ではありませんが、もしかしたらちょっとしたヒントになるかもしれません。

阿波大尽の誕生 江戸時代、藍染の染料となる藍玉(蒅をついて固

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藍墨『藍晶(らんしょう)』に使用する藍顔料

藍墨『藍晶(らんしょう)』に使用する藍顔料

 久しぶりに在庫を補充した藍晶。
 自分たちの畑からこの色ができていると思うと、嬉しくなります。作り始めて今年で12年ですが、墨師さんの元から墨たちが到着すると、いつも本当に嬉しいのです。

タデアイからでも沈殿藍は作れる 私の藍染めの師匠は、沈殿藍をタデアイから作ることはできないと思っていたそうです。だから、私たちが徳島県で栽培したタデアイで沈殿藍を精製していることを知った時は驚かれたと、ご本人

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藍と旅 第3回本建て正藍染展

藍と旅 第3回本建て正藍染展

 今回のテーマは軽やかですね。そして、初の東京開催です。
 藍染め石けんシリーズも久しぶりにイベント復帰します。なんだか感慨深いですが、浸ってる場合じゃない。まだ予告の段階なのに…

旅する藍の姿 今回の展示会のテーマは「旅」。藍染めは旅人に嬉しい機能満載です。ゴールデンウィークの準備に、ぜひお役立ていただきたいのが藍染アイテムの数々です。
 その機能性や歴史のエピソードを、展示会の前日4月19日

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