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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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2024年5月の記事一覧

読書:『ボラード病』吉村萬壱

読書:『ボラード病』吉村萬壱

①紹介

小説家の吉村萬壱氏による『ボラード病』(文春文庫、2017年)を紹介します。ボラードとは、埠頭に停留する船を綱で繋ぎ止める鉄の杭のこと。とある県の被災地・海塚市で一人また一人と死んでいく小学校の同級生。少女の回想という形で語られる同調圧力の恐ろしさと「絆」の弊害に絶句すること間違いありません。

②考察

● 「お前、ちゃんと海塚を歌え」
➢ ここで言う海塚とは、復興のために海塚市民が一

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読書:『論語』齋藤孝訳

読書:『論語』齋藤孝訳

①紹介

儒教の開祖・孔子。その弟子たちがまとめた言行録『論語』(齋藤孝訳、ちくま文庫、2016年)を紹介します。それは数千年の時を超えて今なお読み継がれている古典的名著。「温故知新」をはじめとする名言の数々は、こじれた人間関係を見直すきっかけになるかもしれません。

②考察

●「人の己れを知らざるを患えず、人の知らざるを患うる也」
➢「自分がわかってもらえないことを嘆くより、自分が相手を理解し

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読書:『新版 エルサレムのアイヒマン』H.アーレント

読書:『新版 エルサレムのアイヒマン』H.アーレント

①紹介

ドイツの政治哲学者ハンナ・アーレントによる『新版 エルサレムのアイヒマン-悪の陳腐さについての報告』(大久保和郎訳、みすず書房、2017年)を紹介します。ナチスの幹部であり、ユダヤ人絶滅の責任者アドルフ・アイヒマンが裁判で語ったこととは。「悪」とは何かという問いに真正面から向き合った衝撃の一冊です。

②考察

● 「概ね直接に死の道具を操った人間から離れれば離れるほど、責任の程度は増大

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読書:『コンビニ人間』村田沙耶香

読書:『コンビニ人間』村田沙耶香

①紹介

小説家・村田沙耶香氏による『コンビニ人間』(文春文庫、2018年)を紹介します。コンビニバイトを始めて18年。風変わりな店員・古倉恵子の生き方に共感する人は一定数いるかもしれません。第155回芥川賞受賞作の本書に見る「普通」の意味とは?


②考察

● 「この世界は異物を認めない。僕はずっとそれに苦しんできたんだ」
➢ 古倉の元バイト仲間である男・白羽の告白。古倉と同じく、就職や恋愛

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読書:『ブッダのことば』中村元訳

読書:『ブッダのことば』中村元訳

①紹介

今日は『ブッダのことば-スッタニパータ』(中村元訳、岩波文庫、1984年)を紹介します。「スッタニパータ」はパーリ語で「経の集成」という意味。バラモンの家系に生まれたゴータマ・シッダールタ(後のブッダ)の残した言葉の数々が、高名な仏教学者・中村元の手により現代に復活します。

②考察

● 「生れによって賤しい人となるのではない。生れによってバラモンとなるのではない。行為によって賤しい人

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毒書:『わが闘争』(下)A.ヒトラー

毒書:『わが闘争』(下)A.ヒトラー

①紹介

ドイツの政治家アドルフ・ヒトラーによる『わが闘争』(下巻、平野一郎・将積茂訳、角川文庫、2001年)を紹介します。上巻に引き続き、これを読む日が来ようとは……。センセーショナルな文言が多いので、読む際には相応の覚悟と注意・批判力が要るでしょう。


②考察

● 「ただ健全であるものだけが、子供を生むべきで、自分が病身であり欠陥があるにもかかわらず子供をつくることはただ恥辱であり、むし

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読書:『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ

読書:『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ

①紹介

韓国の小説家チョ・ナムジュ氏による『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子訳、筑摩書房、2018年)を紹介します。韓国の男性優位社会に翻弄される一人の女性の半生が病院のカルテという形で語られる本書から私たちは何を読み取るべきか。140字という限られたツイート数では到底説明できないフェミニズムのリアルがここにあります。

②考察

● 「大丈夫。二人めは息子を産めばいい」
➢ ジヨンの母

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読書:『21 Lessons』Y.N.ハラリ

読書:『21 Lessons』Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『21 Lessons-21世紀の人類のための21の思考』(柴田裕之訳、河出文庫、2021年)を紹介します。『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』がそれぞれ人類の過去と未来を語っているのに対し、本書が指し示す地点は「今、ここ」です。情報が錯綜する現代に私たちが生きる意味を21あるテーマの中から探してみませんか?


②考察

● 「人間の

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毒書:『わが闘争』(上)A.ヒトラー

毒書:『わが闘争』(上)A.ヒトラー

①紹介

ドイツの政治家アドルフ・ヒトラーによる『わが闘争』(上巻、平野一郎・将積茂訳、角川文庫、2001年)を紹介します。かなり気をつけて読まないと簡単に呑まれますので要注意⚠️みんな口を揃えて「差別はいけない」と言う。では一体なぜ?本書を反面教師として読むことで、その答えが出てくるかもしれません。

②考察

● 「だから、わたしは今日、全能の造物主の精神において行動すべきだと思う。同時にわた

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