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読書:『論語』齋藤孝訳

①紹介

儒教の開祖・孔子。その弟子たちがまとめた言行録『論語』(齋藤孝訳、ちくま文庫、2016年)を紹介します。それは数千年の時を超えて今なお読み継がれている古典的名著。「温故知新」をはじめとする名言の数々は、こじれた人間関係を見直すきっかけになるかもしれません。

②考察

「人の己れを知らざるを患えず、人の知らざるを患うる也」
➢「自分がわかってもらえないことを嘆くより、自分が相手を理解していないことに気づけ」という意味である。理解されないことには何らかの理由があるかもしれないので、心当たりがあれば改める必要があろう。わかってもらおうと思うことは時に傲慢さを生む。そこに相手の意思を尊重する気持ちや謙虚さはあるか。

「吾れ十有五にして学に志ざす。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順う。七十にして心の欲する所に従って、矩を踰えず」
➢これを読んでいると、20代のうちにとても大きな経験や仕事ができなくても肩を落とす必要は全くないと思えてくる。私は今20代後半だが、そもそもこの代で人生の答えを出すこと自体無理がある。歳を重ねるごとに意志が堅くなっていく生き方は魅力的だ。

「其の位に在らざれば、其の政を謀らず」
➢ざっくり言うと、「その肩書きを持っていなければ、その仕事に口出しするな」の意。今の時代、「何を」言うかよりも「誰が」言うかが重要なのではなかろうか。例えば、教会での説教はノンクリスチャンが行うよりも牧師が行う方が説得力に富んでいる。なお、SNS上で政治の知識を持たない芸能人が政治的発言をして風当たりに遭う様子がたまに見受けられるが、つぶやきが的を射ていない感情的なものである限りは「仕方ない」の一言で片付けられるのが常だろう。

③総合

孔子の言葉はいずれも、組織内における人間関係に悩む現代の私たちの心の奥深くに突き刺さるものばかりだ。思わず「これ自分のことだ!」と思う箇所を挙げればキリがない。本書の随所に見られる師と弟子の対話に目を通し続けていれば、古代中国において仁と礼を重んじ、ブレーンとして活躍した孔子の素顔がやがて見えてくるだろう。

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