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毒書:『わが闘争』(上)A.ヒトラー

①紹介

ドイツの政治家アドルフ・ヒトラーによる『わが闘争』(上巻、平野一郎・将積茂訳、角川文庫、2001年)を紹介します。かなり気をつけて読まないと簡単に呑まれますので要注意⚠️みんな口を揃えて「差別はいけない」と言う。では一体なぜ?本書を反面教師として読むことで、その答えが出てくるかもしれません。

②考察

「だから、わたしは今日、全能の造物主の精神において行動すべきだと思う。同時にわたしはユダヤ人を防ぎ、主の御業のために戦うのだ」
➢ ヒトラーは反ユダヤ感情を露わにしてこう語る。「造物主」というインパクトに富む言葉は、敗戦で疲弊したドイツ国民の心を掴むのに十分な効果を持っただろう。これが結果的にホロコーストにつながったと考えると、恐怖を覚えずにいられない。

「われわれが闘争する目的は、わが人種、わが民族の存立と増殖の確保、民族の子らの扶養、血の純潔の維持、祖国の自由と独立であり、またわが民族が万物の創造主から委託された使命を達成するまで、生育することができることを目的としている」
➢ ここでは「創造主」なる言葉が使われており、アーリア人至上主義を正当化する狙いがあったと考えられる。排外主義的な昨今の日本における外国人差別の実態は、これと似ているようだ。イザヤ・ベンダサンが確立した「日本教」に通ずるものがある。

「欠陥のある人間が、他の同じように欠陥のある子孫を生殖することを不可能にしてしまおうという要求は、もっとも明晰な理性の要求であり、その要求が計画的に遂行されるならば、それこそ、人類のもっとも人間的な行為を意味する」
➢ 言うまでもなく優生思想を指している。読むだけで悍ましい。このケースといい、2016年に相模原市の障害者施設で起きた凄惨な殺傷事件といい、なぜ今も昔も、障害を持つ者の生き死にを当事者(または代理人)ではなく、自称・健常者の国家や個人が決めるのか。

③総合

ナチスの悪名高いこれらの政策を「悪行」と言える現代に私たちが生まれたのはまさに奇跡だ。しかし一つ時代が違えば、そのようなことは言えず賛同したかもしれない。悪の本質に迫るべく下巻へ。

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