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読書:『ブッダのことば』中村元訳

①紹介

今日は『ブッダのことば-スッタニパータ』(中村元訳、岩波文庫、1984年)を紹介します。「スッタニパータ」はパーリ語で「経の集成」という意味。バラモンの家系に生まれたゴータマ・シッダールタ(後のブッダ)の残した言葉の数々が、高名な仏教学者・中村元の手により現代に復活します。

②考察

「生れによって賤しい人となるのではない。生れによってバラモンとなるのではない。行為によって賤しい人ともなり、行為によってバラモンともなる」
➢ 自分の将来に不安を抱えて生きるくらいなら、やはり行動で現状を変えるしか道はないと思われる。昨今の日本で「親ガチャ」、「国ガチャ」なる言葉を聞く機会が増えたが、結局それは変化しない人の言い訳に過ぎない。努力が難しくても、できることをすれば、変なことで悩まずに済むだろう。


「口穢く、不実で、卑しい者よ。生きものを殺し、邪悪で、悪行をなす者よ。下劣を極め、不吉な、でき損ないよ。この世であまりおしゃべりするな。お前は地獄に堕ちる者だぞ」
➢ 今の世を見れば、地獄に堕ちる者は無数にいることに気づく。特にネットはその温床だろう。誹謗中傷と批判の区別もつかない輩がいる。彼らはそこでの論戦を高尚なものと思っているのだろうが、所詮はただの罵り合い。続きは地獄でどうぞ。

「凡夫は欲望と貪りとに執著しているが、眼ある人はそれを捨てて道を歩め。この(世の)地獄を超えよ」
➢ 「凡夫」とは、平凡な人の意。キリスト教における「罪人」に近い概念か。「この世の地獄を超えよ」ほど、時間の余裕を失い疲弊した私たち凡夫の心に刺さる言葉があるだろうか!地上でも地下でも人間は苦しむ存在なのかもしれないが、地上にいるだけ少しマシか。

③総合

紀元前のブッダの教えは宗教色をあまり持たず、むしろ哲学的と言えよう。彼は一人の人間に過ぎず、本書には神についての言及がほとんど見られないからだ。死んだら人間みな仏になるというのは何とも日本的なもので、そこに原始仏教の要素は限りなく皆無に近い。だからこそ本書は原始仏教の様相を今に伝える書として大いに価値があるのだろう。

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