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きのう、なに読んだ?

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日々読んだ本や長文記事などの、読んだ部分について紹介と感想をメモします。
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#推薦図書

プロフェッショナルとは?のケーススタディー(「取材・執筆・推敲」) | きのう、なに読んだ?

古賀史健さんの「取材・執筆・推敲」を読んだ。これね、すごい本ですよ。(このnote は facebook 初出内容を再掲したものです)

古賀さんはベストセラーにしてロングセラーの「嫌われる勇気」の著者であり、瀧本哲史さん「ミライの授業」の構成・ライティング担当。他にもたくさんの本を手がけてきたかた。その古賀さんが「ライターの教科書」というコンセプトで書いたのが本書です。

ですが、本書はライター

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統計的正しさ、個人にとっての正しさ(「家族の幸せ」の経済学) | きのう、なに読んだ?

統計的正しさ、個人にとっての正しさ(「家族の幸せ」の経済学) | きのう、なに読んだ?

「『家族の幸せ』の経済学」を読んだ。母乳育児や保育園の「効果」についてデータで検証した本だ、とSNSで紹介されていた。それはまさに私の関心事ど真ん中だわ!と早々に購入してあった。

本書は「結婚、出産、子育てにまつわる事柄について、経済学をはじめとした様々な科学的研究の成果をもとに、家族がより「幸せ」になるためのヒントを紹介」している。「経済学は、人々がなぜ・どのように意思決定し、行動に移すのかに

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『モモ』は傾聴とリーダーシップの書だった | きのう、なに読んだ?

『モモ』は傾聴とリーダーシップの書だった | きのう、なに読んだ?

『モモ』を久し振りに再読した。

『モモ』を初めて読んだのは小6の時。中学入試の面接の待ち時間に読む本を買おうと、書店で偶然手に取ったものだ。以来約40年、大切にしてきた。今も本棚のトップポジションに置いてある。

この物語の世界では、人々はゆったりと生活を楽しんでいた。世間話をし、自然に親しみ、子どもたちは空想にふけっていた。しかし、時間泥棒がいつのまにか人々の間に忍び込み、「時間を節約して貯蓄

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日系アメリカ人俳優、ジョージ・タケイの強制収容体験(They Called Us Enemy) | きのう、なに読んだ?

日系アメリカ人俳優、ジョージ・タケイの強制収容体験(They Called Us Enemy) | きのう、なに読んだ?

アメリカのマンガ「They Called Us Enemy」を読んだ。ジョージ・タケイが太平洋戦争中に経験した、日系アメリカ人強制収容のことを中心にした回顧録だ。

著者のジョージ・タケイは、日系アメリカ人の俳優だ。私の世代の人なら、テレビシリーズ「スタートレック」のスールーだと言えば分かるだろうか。宇宙船エンタープライズ号のパイロットだ。ウィキペディアには、日本語吹替版では役名は「カトー」になっ

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社会は「慣習の束」でできている (『日本社会のしくみ』)| きのう、なに読んだ?

社会は「慣習の束」でできている (『日本社会のしくみ』)| きのう、なに読んだ?

『1940年体制』を読んだ流れから『日本社会のしくみ』の前半と、いったん真ん中を飛ばして終章に目を通した。これは、大好きなタイプの本だわー。Kindleでハイライトしてたら、終章なんてほとんどハイライトになってしまったじゃないか。

本書の狙いは、ざっくり言うと、こういうことだ。

本書が検証しているのは、雇用、教育、社会保障、政治、アイデンティティ、ライフスタイルまでを規定している「社会のしくみ

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稀な人(『岩田さん』) | きのう、なに読んだ?

稀な人(『岩田さん』) | きのう、なに読んだ?

「岩田さん」とは、任天堂前社長の岩田聡さんのことだ。4年前、胆管腫瘍のため55歳の若さで亡くなった。

本書は、岩田さんが生前、「ほぼ日刊イトイ新聞」に登場したコンテンツと任天堂社の「社長が訊く」から、岩田さんの語ったものを抜粋し編集したものだ。だから、内容だけで言えば、今もウェブで無料で読める。でも、この本にはお金を出す価値があるし、ウェブ記事より長く読み継がれる可能性もある。「編集」が本書の価

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『1940年体制』 ー 働きかたのアップデートは、戦時体制からの脱却

『1940年体制』 ー 働きかたのアップデートは、戦時体制からの脱却

『1940年体制』は1995年出版。2010年に最後の11章が加筆された。1995年時点での金融制度、経済官庁の体制や税制、企業の仕組みは、どれも1940年前後につくられた戦時体制をそのまま踏襲していることを、シンプルかつ丁寧に論じた本だ。

増補版の前書きに、こうある。

刊行時から日本社会は大きく変貌した。経済体制についても、大きな変化が生じた。したがって、これらについて述べた本文中の記述は、

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「82年生まれ、キム・ジヨン」--親しいひとに異を唱える難しさ

「82年生まれ、キム・ジヨン」--親しいひとに異を唱える難しさ

友人のお勧めで「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んだ。韓国で100万部のベストセラーになり社会現象化した小説で、日本でもヒット中らしい。私も都心の大型書店の目立つところに本書が陳列されているのを見た。

私が実際に読んだきっかけは、友人の推薦。はじめはちょっとピンと来てなくて、読み始めるまでしばらく積ん読だったけど、読み始めたら止まらず、最後まで一気に読んじゃった。思ったこと、考えたこと、たくさん

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『こころの対話 25のルール』 再読

『こころの対話 25のルール』 再読

私はあんまり本を再読しない。でも『こころの対話 25のルール』は例外で、何度か読み返している。人に勧める本を探すとき、よくこの本のことを思い出すから。今回も、人にお勧めするのにちょっと内容を確認しようとして、そのまま始めから終わりまでじっくり読んでしまった。

私が要約したり内容を紹介しても、本書の良さは伝えられないので、本書の序盤から、何カ所か引用させていただく。

コミュニケーションの原則から

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