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誰かとかかわること。

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軋轢もあれば葛藤もある。 そんなときは、書いてみる。
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2023年6月の記事一覧

消えない言葉。

消えない言葉。

学生の頃によく使った赤や緑の透明なシート。
参考書なんかに開いて乗せると、答えが消えるプラスチックのペラペラとした。
じつにシンプルな原理だけれど、よく考えたものだと思う。

同じ色を通して見れば、その先にあるものはまるで何もないかのように見える。
たとえどんなに嫌な言葉が書かれていたとしても、同じ色が重なれば、見えなくなる。
きっと、誰かが言ったことをその通りだということにしておけば、自分も書き

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贈り物の蓋を閉めるまで。

贈り物の蓋を閉めるまで。

ここ数年、贈るにしても貰うにしても、誕生日プレゼントというものが即座に思い浮かばなくなってきている。
子どもの頃はあんなに次々とあれが欲しい、これが欲しいと言えたのに。
誕生日が嬉しいか否かも、なんだか揺らぎつつある。

しかしやはり、遠く離れた友人になにか、とは思う。
あの和菓子は去年送ったし、クッキーを食べたくなる季節でもない。
かといって、雑貨なんておよそ見当違いなものを送ってしまいそうで。

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empty room

empty room

何も形になっていないと言われたことがある。
習い事や出た学校、そういうものが、今の自分に何ひとつ活かされていないということらしい。

至って失礼な話ではある。
人の経験など、誰にもまったく同じように体感することなどできない。
いったいどうやって私の辿った道が無意味だったと評することができるのだろう。
腹立たしさよりも、なんだか唖然としてしまった。

曰く、資格や評価、階級、目に見えるものが残ってい

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なりすます言葉

なりすます言葉

「お互いさま」という言葉がある。

こちらに対して相手が遠慮したとき、「お互いさまですから」とひと声かける。
誰かが失敗したことを悔やんでいるとき、「お互いさまです」と言って手を差し出す。
そんな「お互いさま」にはきっと、相手を安心させたいと思う気持ちが入っている。

誰かと言い争ったときの「お互いさま」。
自分が正しいと思っているときの「お互いさま」。
これはよくない。
はたして本当にお互いさま

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