見出し画像

2022年に読んだ書籍10選

毎年恒例、年間の書籍10選をまとめてみる。

といっても、今年は書籍よりも映画にフォーカスした1年だったので、数えるほどしか本を読めていない。だから紹介する本も、吟味したというよりは、「タイミングが合って読めた本だよね」という振り返りに近いような形になっている。

もちろん以下で紹介する本は、どれも僕の琴線には触れたものだ。だけど、いつものように「あの本も10選に入れたいな、いや、どうしよう」といった嬉しい悲鳴を上げられないのが悔しい。

そんな2022年だったけれど、毎年の定点観測は重要で。僕の生活にも深く影響し、今も印象に残る10冊を以下に紹介したい。

──

土井善晴『一汁一菜でよいという提案

「おかず何しようかな」でなく、「そもそもお味噌汁さえあれば十分」という、料理におけるパラダイムシフトの転換を提起してくれた一冊。仕事と家事の両立に悩んでいたときに、誇張でなく、土井さんの言葉に救われた。

土井さんは、先日、星野源さんのオールナイトニッポンにゲストとして登場。星野さんが「鬱々としていたときに土井さんの本が救いになった」といったことを言っていて、だいぶ別地点でクロスオーバーしていたなと。まあ、同じような人、結構いるんじゃないかなとも思ったり。

*

神吉晴夫『編集者、それはペンを持たない作家である

実は昨日、読了したばかりの本。読者への信頼が伝わる本。「良い読者がいるからこそ、良い本は成立する」。そんな考えが根底にあるからこそ、編集者として、作家とともに腕を振るわなければならないのだという哲学が貫かれていることを実感した。

「人生観の反射」「才能も思想も商品」「立地条件を生かす」など、神吉さんの言葉に、心が震える。目の前の仕事に奔走する日々だけど、もう少し未来を見つめながら仕事しようと誓えた1冊。

*

北尾修一『いつもよりも具体的な本づくりの話を。

菅付雅信さんの私塾「菅付雅信の編集スパルタ塾」の仲間が教えてくれた一冊。「いつか本を作りたい」と思っていた僕にぴったりというか、編集の在り方すら滲む一冊に、心から刺激を受けた。

本屋をやりたいなら内沼晋太郎さんの『これからの本屋読本』を、独立独歩な出版社を作りたいなら本書を。併読すれば、本に関わる喜びを疑似体験できること間違いなし。

*

菅付雅信『不易と流行のあいだ〜ファッションが示す時代精神の読み方〜

noteにも書いたが「ファッションに興味がない人こそ、本書を読むべし」ということに尽きる。ファッションは洋服や靴のことでなく、ジャンルである。本もゲームも映画も建築も、ファッション抜きに語ることはできない。

今を生き、何か具体的な「もの」をアウトプットしたいと考えている人。ファッションには、モノづくりの全てが詰まっているといっても過言ではない。そのことが、本書を読めば理解できるはずだ。

*

トゥキュディデス『人はなぜ戦争を選ぶのか

友人の編集者、曽我彩さんが担当した本ということでなく。

ロシアがウクライナに侵攻し、日本の安全保障がこれまでになく議論されている今だからこそ、戦争の本質について実感・体感すべきタイミングだと思っている。映画「島守の塔」も素晴らしい作品だったが、トゥキュディデス『人はなぜ戦争を選ぶのか』は、2000年以上、人間が戦争に固執してきた悲しい「性」を垣間見ることができる一冊だ。

人間の本質は変わらない。それでも人間の知性を信じたい。そんなせめぎ合いが続くけれど、僕は、戦争抑止に声をあげ続けたいと思っている。

*

上野千鶴子、鈴木涼美『往復書簡 限界から始まる

フェミニズムとは何だろうか。

そのことを、いつになく考えた1年だった。それは「女性」が「男性」に抑圧されてきた歴史を語る学問に留まるものではないはずだ。男性にとってもフェミニズムは当事者として、あるいは共事者として、捉えなくてはならないもので、「弱さ」と向き合うための学問なのかもしれないと思うのだ。

上野さんから鈴木さんに投げ掛けられる言葉は厳しい。鈴木さんを通して、読者の僕にもズバズバ刺さって痛い。痛いけれど、良薬口に苦しということで、きっと将来の自分に向けた格好の処方箋的な1冊だ、と思う。

*

安藤広大『数値化の鬼〜「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法〜

書かれていることは至極当然のもので。定性じゃなく、定量で物事を捉えてビジネスに生かそうというメッセージだ。それは、社会人1年目でも「知って」いる、ビジネスルールの定石だ。

だけど創業して、全ての結果責任を負う立場になったとき、数字が大事というのは「知って」いただけに過ぎないと思い知った。心から理解し、そして日々の行動や思考も、数値ベースであることが大事。2022年10月、遅まきながら数値化を意識するようになった。その反省と気付きを、この年末に記しておこうと思う。

*

近内悠太『世界は贈与でできている〜資本主義の「すきま」を埋める倫理学〜

等価交換でない、物事のやりとりが増えている。

報酬が低い仕事に対して、不満や愚痴が発生するのは当たり前のこと。その一方で、進んでボランティアやプロボノに取り組む人もいる。資本主義では語れない「何か」を、近内さんは「贈与」という言葉で表現する。それは今は「すきま」に過ぎないけれど、5年後にはメインストリームになっているかもしれない。

そんな世界を、僕は待望してしまう。決して、非現実な空想ではないと思うのだ。

*

桐野夏生『砂に埋もれる犬

TBSラジオ「アシタノカレッジ」で桐野夏生さんが出演されたのをきっかけに、久しぶりに桐野作品に触れる。さすがの筆致であることは言わずもがな、世の中の格差社会や生きづらさをこんなにも忖度なく切り取ったことに驚いてしまった。

それでも桐野さんの目線は、弱い立場の人たちに優しくて。それを読者と分かち合っているところに、小説家として引き受けているものの重みを感じてしまう。僕は、いったい何を引き受けられるだろうか。桐野さんの歩みや発言が、どれほど勇気の要るものだっただろうか。

*

岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気』『幸せになる勇気

食わず嫌いでずっと読んでいなかったアドラー。「現状維持で留まるのは、現状維持でいたいと心理的に思っていたのだ」という言葉がグサっとくる。

アドラーの教えは、本質的だ。だから表面的に真似ようとする人がいるのは想像に難くないけれど、本当に実践するのは難易度が高い。自分のこれまでの成功体験を否定し、苦しみと共に、前進しなければならない。キーワードは、本書タイトルにも掲げられている「勇気」であり、「勇気」を持つことが一番しんどいことなんだよなあと。

──

まとめ(紹介した10作品)
・土井善晴『一汁一菜でよいという提案』
・神吉晴夫『編集者、それはペンを持たない作家である』
・北尾修一『いつもよりも具体的な本づくりの話を。』
・菅付雅信『不易と流行のあいだ〜ファッションが示す時代精神の読み方〜』
・トゥキュディデス『人はなぜ戦争を選ぶのか』
・上野千鶴子、鈴木涼美『往復書簡 限界から始まる』
・安藤広大『数値化の鬼〜「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法〜』
・近内悠太『世界は贈与でできている〜資本主義の「すきま」を埋める倫理学〜』
・桐野夏生『砂に埋もれる犬』
・岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』

──

昨年までのエントリは以下をご参照ください。

──

書籍10選のPodcastも収録しました。お時間ある方は聴いてみてください!

■Spotify

■Apple Podcast

■Google Podcast

#読書
#読書日記
#読書記録
#読書感想文
#振り返り
#振り返りnote
#2022年
#2022年振り返り
#読書ラジオ
#Podcast
#本屋になれなかった僕が

この記事が参加している募集

読書感想文

振り返りnote

記事をお読みいただき、ありがとうございます。 サポートいただくのも嬉しいですが、noteを感想付きでシェアいただけるのも感激してしまいます。