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旅と建築探訪記

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#建築

【建築】翼を広げるミルウォーキー美術館(サンティアゴ・カラトラバ)

【建築】翼を広げるミルウォーキー美術館(サンティアゴ・カラトラバ)

最初に書いておくが、このタイトルは比喩ではない。
ホントに翼を広げるのだ。

2024年5月、シカゴから北へ150kmにあるミルウォーキーまでやってきた。
五大湖の一つ、ミシガン湖の西岸に広がるこの都市は、人口約57万人のウィスコンシン州最大の街である。

この街でどうしても見たい建築家の建物があった。
その建築家とはスペイン出身のサンティアゴ・カラトラバ。
建築家であり、構造家であり、芸術家でも

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エピローグ:常滑のタイルテラスとドーナツカフェ

エピローグ:常滑のタイルテラスとドーナツカフェ

そうか、杉江製陶所のタイル救出プロジェクトからもう2年経ったのか。あの時は八角煙突の中にも潜らせてもらったなあ…。

2024年8月、私は「ちかつの窯」にいた。

「ちかつの窯」とは、とこなめ地域活動支援センター(障がいのある方の余暇活動や地域交流をサポートする常滑市の組織)とワークセンターかじま(就労支援継続B型事業所)が運営するドーナツカフェのことだ。

普段のワークセンターかじまでは、利用者

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建築ツアーはHow much?

建築ツアーはHow much?

皆さんは建物を見学する時にいくらが妥当だと考えるだろうか?
私は(内容にもよるが)1万円までだったら払う。もっとも日本ではそんな建築見学は今までなかったけど…。

2024年5月、アメリカのシカゴを中心に建築を見て回った。建築ツアーでは見学料を徴収される場合もあるが、その際に料金が高いという理由で見学を諦めたことはなかった。

一般に建築ツアーにはいくつかのコースがある。
「ガイドツアー」とはガイ

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【建築】空を見ながら故人を偲ぶセレモニーホールCrematorium Polderbos(OFFICE KGDVS)

【建築】空を見ながら故人を偲ぶセレモニーホールCrematorium Polderbos(OFFICE KGDVS)

ブリュッセルから北東へ120km、海辺の町オーステンデ。その郊外の干拓地の一画、かつてのレンガ工場の敷地にセレモニーホールがある。

そう、今回の建築探訪はセレモニーホール、つまり葬儀場だ。
以前も書いたが、近年は日本でも海外でも"建築家"がセレモニーホールを設計することは珍しくない。そして建築ファンは罰当たりにもそういった建築も訪れる。もちろん私もその一人。

しかし通常セレモニーホールは突然訪

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【建築】昭和塾堂から近代建築の保存を考えてみる

【建築】昭和塾堂から近代建築の保存を考えてみる

自宅近くに城山八幡宮がある。
戦国時代は織田信長の父・信英の居城であった末森城だったが、信英から引き継いだ信行(信長の弟)が信長に謀殺された後は廃城となった。しかし信行時代に城内に建立された白山神社が廃城後も信仰され、明治になると八幡宮に合祀されて今に至っている。

さすがに戦国時代の建物はないが、空堀などの遺構はよく残っている。

そんな遺構の一画、二の丸跡には一風変わった建物がある。

昭和塾

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【建築】分かっていたのに感動してしまったユニティ教会(フランク・ロイド・ライト)

【建築】分かっていたのに感動してしまったユニティ教会(フランク・ロイド・ライト)

2014年3月、シカゴ郊外のオークパークを訪れた。フランク・ロイド・ライトの自邸スタジオや彼が設計した住宅が数多くある街だ。それら彼の建築を見て回っていた時、近くに代表作の一つであるユニティ教会があることを知った。
早速教会を訪れたが、残念ながらその日、教会のドアは閉ざされていた。

仕方ない。事前に調べていなかった自分が悪いのだ。私は素直にその場を離れた。「いつかまた必ず訪れるぞ!」と誓いながら

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【建築】早朝からテンションMAXな建築探訪はクリーブランド・アーケード

【建築】早朝からテンションMAXな建築探訪はクリーブランド・アーケード

その日、オハイオ州クリーブランドに着いたのは早朝6:30。

朝食も食べず(というかどのお店もまだオープンしておらず)、真っ直ぐ向かった先はダウンタウンにあるショッピングセンター。その名もThe Arcade。

生憎の雨模様で外観は映えない。しかしこの建築の見所は内部だ。

中に入ると圧巻の空間が出迎えてくれる!
朝7:00からテンションMAXである。

クリーブランドのこのアーケードは1890

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【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

【建築】重なり合うガラスが独自の空間をつくるトレド美術館ガラス・パビリオン(SANAA)

妹島和世さんと西沢立衛さんによる建築家ユニット SANAA。このnoteでも何度か記事を書いているように、私のお気に入りの建築家である。今回、久しぶりに海外のSANAA建築を訪れるチャンスがやってきた。しかもアメリカ合衆国のトレドという微妙に不便な場所にある。これは行くしかない!

オハイオ州第4の街トレドは1970年代までは全米屈指の工業都市として栄えていた。またThe Glass Cityとい

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【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

【建築】拝啓、フランク・ゲーリー様

拝啓、フランク・O・ゲーリー様

私が初めてあなたの建築に出会ってからもう15年が経ちました。
そうです。それは建築専門外の私が"建築"というものに興味を持つきっかけだったのです。

初めて見たゲーリーさんの建築はウォルト・ディズニー・コンサートホール。そのありえないウネウネの造形に衝撃を受けました。それ以来、他の誰にも真似できないその独特の造形に魅せられ、私はゲーリーさんの建築を巡礼してきました

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【建築】"天に近づく崇高さ"が表現されたカトリック桂教会(ジョージ・ナカシマ)

【建築】"天に近づく崇高さ"が表現されたカトリック桂教会(ジョージ・ナカシマ)

「恋人よ 僕は旅立つ 東へと向かう 列車で 〜」
という歌があるが、その日、僕は西へと向かう列車で、岡山で下車して瀬戸内海を渡り高松に降り立った。カトリック桂教会の訪問記を書くためである。なぜ京都の建築の話のために高松に行くのか?
そう、どうしても行かねばならぬ理由があったのだ。

カトリック桂教会は京都市の桂駅から10分程歩いた住宅街にある。西院教会巡回教会として創立され、1958年にカトリック

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【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

【建築】インドにも国立西洋美術館があった?(ル・コルビュジエ)

ル・コルビュジエ設計の建築として名高い日本が誇る国立西洋美術館。この国立西洋美術館とほぼ同じ建物がインドにもあるらしい。コルビュジエはインドでも仕事をしているので不思議ではない。
その美術館とはチャンディーガル政府博物館・美術館(Government Museum and Art Gallery, Chandigarh)。

今回はその"ほぼ同じ"という2つの美術館を比較しながら見てみよう。

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【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

台湾台北市の北投区。台北という大都市にありながら温泉の湧く街としても知られている。

北投区へは台北中心部から地下鉄MRTに乗ること20分、北投駅で降りる。駅前は郊外らしい庶民的な街並みだ。日本にもありそうな風景に見える。

駅から行き交う車に注意しながら15分程歩いていくと、

集合住宅や商業施設に囲まれた北投公園に突き当たる。公園はこの奥にある日本統治時代に開発された温泉街まで続いており、ホテ

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【建築】光とコンクリートがつくる神聖な空間は神言神学院(アントニン・レーモンド)

【建築】光とコンクリートがつくる神聖な空間は神言神学院(アントニン・レーモンド)

タイトルから安藤忠雄さんの教会を想像した方もいらっしゃるかと思うが、今回は建築家アントニン・レーモンド。建築好きな方ならご存知だろう。私もお気に入りの建築家の一人だ。
フランク・ロイド・ライトの助手として帝国ホテル建設の際に来日し、後に独立して日本で設計事務所を開設した。日本の近代建築の巨匠と呼ばれる前川國男や吉村順三もレーモンド事務所で学んでいる。東京女子大学や群馬音楽センターなど文化財やDOC

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アルヴァロ・シザの建築を見に行ったらテレサ・テンのお墓参りをしてきた話

アルヴァロ・シザの建築を見に行ったらテレサ・テンのお墓参りをしてきた話

それは建築メディアで紹介されていたアルヴァロ・シザらの設計による霊廟の記事を読んだ時だった。

アルヴァロ・シザといえばポルトガルを代表する偉大な建築家である。彼の建築は実際に訪れた人たちからの評価も高いが、その多くは地元ポルトガルにあり、私もまだシザ建築は見たことがなかった。しかもこの建築メッチャ良さそうじゃん。
ヨシ、コレを見に台湾に建築探訪に行こう!

記事によれば、場所は新北市金山区とし

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