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旅と建築探訪記

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#海外旅行記

【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

【建築】街中なのに森の中のような台北市立図書館北投分館(九典聯合建築師事務所)

台湾台北市の北投区。台北という大都市にありながら温泉の湧く街としても知られている。

北投区へは台北中心部から地下鉄MRTに乗ること20分、北投駅で降りる。駅前は郊外らしい庶民的な街並みだ。日本にもありそうな風景に見える。

駅から行き交う車に注意しながら15分程歩いていくと、

集合住宅や商業施設に囲まれた北投公園に突き当たる。公園はこの奥にある日本統治時代に開発された温泉街まで続いており、ホテ

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【建築】水と光と影がつくるセレモニーホール Hofheide(RCRアルキテクタス)

【建築】水と光と影がつくるセレモニーホール Hofheide(RCRアルキテクタス)

人生の最後の場、家族や友人が集まり大切な人を偲ぶ場である葬礼。かつてはお寺や個人宅、現在はセレモニーホールで行われることが多い。
そのセレモニーホール、不特定の人が短時間利用するだけなので、装飾は控えめな建物が多い。実用的と言えるが、凡庸とも言える。

しかし近年は、日本でも海外でも建築家が設計した洗練されたデザインのセレモニーホールもある。伊東豊雄さん設計の「瞑想の森 市営斎場」は有名だ。

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【建築】穏やかな光で満たされたベス・ショロム・シナゴーグ(フランク・ロイド・ライト)

【建築】穏やかな光で満たされたベス・ショロム・シナゴーグ(フランク・ロイド・ライト)

古都フィラデルフィア。美術館や独立記念館など観光施設には事欠かない街だが、その中で私が選んだのはベス・ショロム・シナゴーグ。現役のシナゴーグであり、フランク・ロイド・ライトの最後の作品の一つでもある。2007年にはNational Historic Landmarkにも指定された建築だ。

日本ではあまり馴染みがないが、シナゴーグとはユダヤ教の礼拝所のことである。キリスト教の教会などは宗教施設であ

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【建築】捻ってねじってターニング・トルソ(サンティアゴ・カラトラバ)

【建築】捻ってねじってターニング・トルソ(サンティアゴ・カラトラバ)

デンマーク・コペンハーゲン。当初は「コペンハーゲン? ケンチクは何があるの? 人魚姫以外の観光名所は?」とほとんど期待感ゼロであったが、調べてみると楽しめるところがたくさんあった。既に紹介している記事を挙げれば、ルイジアナ近代美術館、オードロップゴー美術館、オーフス市庁舎、Dragør、市内散策などなど。
もちろん現代建築を楽しむこともできる。特にコペンハーゲンを地元とするビャルケ・インゲルスの建

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【建築】神聖さと親しみやすさを併せ持つ聖ベネディクト教会(ピーター・ズントー)

【建築】神聖さと親しみやすさを併せ持つ聖ベネディクト教会(ピーター・ズントー)

宗教の聖地巡礼があるように、建築にも巡礼がある。対象となるケンチクや建築家、テーマは人それぞれだが、分かり易い例を挙げると、ル・コルビュジエの建築を巡る旅などがあるだろう。

スイスの建築家ピーター・ズントーも巡礼対象の一人といえる。しかもズントー建築の多くは交通の便が良いとは言えない場所にあるので、巡礼と呼ぶにはピッタリなのである。(以前、ノルウェーの2つのズントー建築を紹介させてもらったが、あ

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【建築】"どんでん返し"のストアフロント・ギャラリー(スティーヴン・ホール)

【建築】"どんでん返し"のストアフロント・ギャラリー(スティーヴン・ホール)

ロウアー・マンハッタン、あるいはダウンタウンと呼ばれるマンハッタン島南部。ウォール街やワールド・トレード・センターといったオフィス街や観光地でもあるが、その北にはやリトル・イタリーやチャイナタウン、バワリーといったかつて移民たちが移り住んだ地区がある。

今でも少しゴチャっとしており、良く言えば生活感があるが、一部には治安があまりよろしくないエリアもあるようだ。しかし最近はこうした地区でもジェント

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【建築】昼寝には最適なロレックス・ラーニング・センター(SANAA)

【建築】昼寝には最適なロレックス・ラーニング・センター(SANAA)

滞在先のスイス・バーゼル。午前5時の中央駅は閑散としていた。当然か。

向かうはレマン湖ほとりのローザンヌ。目的地はスイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)のロレックス・ラーニング・センターである。

こんな早朝に出発する訳も夕方まで建築探訪のスケジュールがパツパツに詰まっているためだが、さすがに眠い。まあ自分が組んだスケジュールなので仕方ない。

ロレックス・ラーニング・センターの設計は、妹島

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【建築】絵に描いたような森の中のオードロップゴー美術館(ザハ・ハディッド)

【建築】絵に描いたような森の中のオードロップゴー美術館(ザハ・ハディッド)

今回の建築探訪はザハ・ハディッド設計の美術館だが、規模も小さいし、あまり有名でもない。しかも、予め調べて分かっていたことだが、増築工事のため長期休館中であった。それでも訪れた理由は、世界で最も美しいと評判のルイジアナ近代美術館への道中にあるからだ。つまり"ついで"だ。なのでサクッと進めよう。

コペンハーゲンから電車に乗ること20分。ルイジアナ近代美術館はもう少し先だが、途中のKlampenbor

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【建築】お役御免の倉庫から再生したエルプフィルハーモニー・ハンブルク(ヘルツォーク&ド・ムーロン)

【建築】お役御免の倉庫から再生したエルプフィルハーモニー・ハンブルク(ヘルツォーク&ド・ムーロン)

Hamburg ハンブルク。
ドイツもハンバーグも好きだが、ハンブルクにはあまり興味がない。しかしその街にはどうしても見たい建築があった。ヘルツォーク&ド・ムーロン(H&deM)設計によるエルプフィルハーモニー・ハンブルクである。
そこで2018年の旅行中、ヘルシンキからコペンハーゲンへの移動の際、この建築を見るために1泊2日という慌ただしい日程でハンブルクに立ち寄ることにした。(ついでにザハ・ハ

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【建築】本がないプリンストン大学ルイス科学図書館(フランク・ゲーリー)

【建築】本がないプリンストン大学ルイス科学図書館(フランク・ゲーリー)

「我ながらこんな所までよく来たなあ」と思う建築がある。遠いとか交通の便が悪いということとは別に、一般的には誰も、おそらくは建築ファンでさえも関心が薄いであろう建築のことだ。
フランク・ゲーリーの設計によるプリンストン大学の図書館もその一つである。フランク・ゲーリーとプリンストン大学。どちらも有名であるが、この組合せの建築をわざわざ訪れる人は何故か少ないようだ。

前夜、マンハッタンのバスターミナル

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【建築】建築と自然が最高に調和した落水荘(フランク・ロイド・ライト)

【建築】建築と自然が最高に調和した落水荘(フランク・ロイド・ライト)


Fallingwater
なんと美しい名前だろう!
落水荘
直訳なのに、漢字も読み方も美しい!

フランク・ロイド・ライトの最高傑作との評価もある落水荘は、1936年にペンシルベニア州ピッツバーグのデパート経営者であるエドガー・J・カウフマンの週末の別荘としてつくられた。

ピッツバーグは鉄鋼業を中心として1960年代まで発展してきた都市だ。落水荘が建てられた1930年代は正に鉄鋼業が盛んであっ

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【建築】“グリーン”なミュンヘン・オリンピック公園

【建築】“グリーン”なミュンヘン・オリンピック公園

選手のいないフィールド、空っぽの観客席。

ゲームが行われていないスタジアムには不思議な魅力がある。エキサイトした試合、時に歴史的な名試合が行われたであろうそのスタジアムには、まだ選手や観客のエネルギーが残っているようにも感じられる。

それはミュンヘン・オリンピック公園も同じであった。

ミュンヘン・オリンピック公園(Olympiapark)は、1972年に開催されたオリンピックのための競技施設

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【建築】“オリジナル”とは何かを考えてみたバルセロナ・パビリオン(ミース・ファン・デル・ローエ)

【建築】“オリジナル”とは何かを考えてみたバルセロナ・パビリオン(ミース・ファン・デル・ローエ)


オリジナル:独創的。独自のもの。原作。原物。

国際観光都市バルセロナ。
旧市街あり、カテドラルあり、ピカソやミロの美術館あり、現代建築も多くある。また地中海に面した温暖で過ごしやすい街でもある。

もちろんFCバルセロナはマスト!

しかしやはりこの街の見どころは、アントニ・ガウディによる数々の建築だろう。特にバルセロナの象徴でもあるサグラダ・ファミリアは外せない。

でもね...

サグラダ

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【建築】氷山のようなオスロ・オペラハウス(スノヘッタ)

【建築】氷山のようなオスロ・オペラハウス(スノヘッタ)

以前のことだが、海外に行くと、何故だかオペラを観ていた。ミラノ・スカラ座では天井桟敷を求め(売切だったが)、ウィーン国立歌劇場では「ユダヤの女」を、シドニー・オペラハウスでは「フィガロの結婚」を観劇した。しかし特にオペラに興味があった訳ではなく、日本ではオペラ鑑賞をしたこともなかった。

やがて”建築”に興味を持つと、その対象は建物に向かい、海外でオペラハウスに行っても「観劇しよう」などとは思わな

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