ある読書ブログ「淀瀬 揺藍」

Hello!Nice to meet you. インターネットでクリエイティヴをしてい…

ある読書ブログ「淀瀬 揺藍」

Hello!Nice to meet you. インターネットでクリエイティヴをしていると思い込んでいる脳髄です。

記事一覧

『こころ』夏目漱石/あらすじ・感想

私は昨日まで自殺しようとしていました。 抱えきれない孤独が、私の眼前に横たわっていて、ずっと心臓のあたりを冷たい手で触られているような気分でした。 こころは、先…

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』/斜線堂有紀.あらすじ・感想

始めまして、今回は斜線堂有紀さんの『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』の紹介・感想の話をします。 まず、この記事には本のネタバレが含まれますので、未読の方は…

本当に読んでほしくない話

取り敢えず、文章を書かなくてはならない気持ちなので、書いてみる。などとつまらない書き出しに、嫌気が指して、筆が止まってしまう。 よし、これだけ無駄な文章を書いて…

山本文緒『プラナリア』から読む、無職の生活について

最近、山本文緒先生の『プラナリア』を読んだ。前に読んだ『自転しながら公転する』が凄まじかったので期待していた。そして、期待していたように面白く、精神を抉られたの…

『氷菓』の最初の話を読んでいて思い出した、実際に起きたできの悪いミステリ

米澤穂信先生の氷菓、めっちゃ面白いよね。そして読み返すたびに思い返す事がある。それは高校生の頃、放課後に部室に向かったときの話だ。 僕らの部室、航空実習室は学校…

春のオルガン(湯本香樹実)

きれいな文章だった。猫や病気や春、そういった物が織物のようにきれいに組み重なって一つの物語を紡いでいる。 僕が思うに、こういう小説と書きたいのだと思う。 ある事実…

ドーナツ

甘いドーナツをお食べる、黒いチョコレートと薄黄色の美しいドーナツ。今日はアイスも食べた、お菓子を食べてしまったことに反省したつもりだったが、私の眼の前には、美味…

サミング・アップ!

サマセット・モームのサミング・アップを読んでどうしても書かなければいけない気がしたので、書いていく。これは感想だとか紹介だとか、ましてや書評などでは決して無い。…

ある少年の寂寞

 そうだね、この文章はあまりにも時間を持て余しすぎて天井の染みを数えるくらいしかやることがない人に読んでほしいと思う。    この物語は実際に起こった出来事をもと…

過去について語るとき、電車の中で思いついた話。

私は雪の積もった街を見ていた。レールが軋み、弱々しい日光が頬を暖かくする、そんな早朝の電車。そして思い出す、過ぎ去ったあの日々の夢を、その結論がわかってしまった…

青春文学を読んだら、カフカ的不条理を感じた。「変身」は青春ゾンビと化した男の話。

企画説明  どうも。人は読書をするとき何を求めるのだろうか?学術書ならば知識、文学なら疑似体験、私はそう思っている。なので普段読まない、自分とはまったっく違っ…

『こころ』夏目漱石/あらすじ・感想

『こころ』夏目漱石/あらすじ・感想

私は昨日まで自殺しようとしていました。
抱えきれない孤独が、私の眼前に横たわっていて、ずっと心臓のあたりを冷たい手で触られているような気分でした。

こころは、先生の遺言が特に秀逸です。もちろん、言うまでもない夏目先生の作品ですから、筆致の豊かさは筆舌に尽くしがたいです。

こころは罪の意識に苛まれる続ける男が自殺に至る話です。
Kの自殺、先生の意識上では他殺かもしれませんが。
夜中、何かを感じた

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『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』/斜線堂有紀.あらすじ・感想

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』/斜線堂有紀.あらすじ・感想

始めまして、今回は斜線堂有紀さんの『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』の紹介・感想の話をします。

まず、この記事には本のネタバレが含まれますので、未読の方は注意してください。
また、僕の理解が間違っていたり、牽強付会な箇所が見られると思います。慎重を期して制作しておりますが、ご指摘などコメントお願いします。

あらすじ紹介

それでは、あらすじを説明します。
金塊病という全身が金に変化してし

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本当に読んでほしくない話

取り敢えず、文章を書かなくてはならない気持ちなので、書いてみる。などとつまらない書き出しに、嫌気が指して、筆が止まってしまう。

よし、これだけ無駄な文章を書いておけば、続きを読む人間は天井のシミを数えるくらいしかやることのない、暇な人間だけだろう。
こうして、ボクは自由帳を手に入れたのだ。

さて、冗談は程々にして、今の僕の悩みは何処までが読書エッセイなのかというところだ。ボクは今Youtube

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山本文緒『プラナリア』から読む、無職の生活について

山本文緒『プラナリア』から読む、無職の生活について

最近、山本文緒先生の『プラナリア』を読んだ。前に読んだ『自転しながら公転する』が凄まじかったので期待していた。そして、期待していたように面白く、精神を抉られたので書きたいと思う。

『プラナリア』は5篇の小説が収録されていている。

プラナリア

1つ目のプラナリアは、主人公が乳がんの手術で無職になったあとを描いている。この時点で、僕は面白いことを確信した。月並みな書き手は、大きな病気を同情的に書

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『氷菓』の最初の話を読んでいて思い出した、実際に起きたできの悪いミステリ

『氷菓』の最初の話を読んでいて思い出した、実際に起きたできの悪いミステリ

米澤穂信先生の氷菓、めっちゃ面白いよね。そして読み返すたびに思い返す事がある。それは高校生の頃、放課後に部室に向かったときの話だ。

僕らの部室、航空実習室は学校の最奥にあると言ってもいい。工業棟の4階は放課後に来る人はほぼいない、来るとしても同じ部活のメンバーだけだ。閑散とした廊下から窓越しに教室の中を伺う。静かだ、誰も居ないだろう、もっともそれはドアの鍵が掛かっていたことからも確認できる。横開

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春のオルガン(湯本香樹実)

きれいな文章だった。猫や病気や春、そういった物が織物のようにきれいに組み重なって一つの物語を紡いでいる。
僕が思うに、こういう小説と書きたいのだと思う。
ある事実の羅列や、虚構の設定集に終わるのではなく、現実的でありながら、警句的な出来事のかずかずにであう。そして、少しづつ、読者にも分かる形で成長していく。
心が踊るアクションや、昂った修羅場など、強い状況設定に甘んじず、些細な出来事などに深遠な意

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ドーナツ

甘いドーナツをお食べる、黒いチョコレートと薄黄色の美しいドーナツ。今日はアイスも食べた、お菓子を食べてしまったことに反省したつもりだったが、私の眼の前には、美味しそうなドーナツがおいたある。つい口に運ぶ、否応もないようだ、幸せで殴られるように甘みが脳裏に到来する。私は昼間のアイスのことを忘れて貪った。思えば、人生もドーナツも、楽しむためには過去を乗り越えなければいけないのかもしれない、と考えた。

サミング・アップ!

サマセット・モームのサミング・アップを読んでどうしても書かなければいけない気がしたので、書いていく。これは感想だとか紹介だとか、ましてや書評などでは決して無い。ただの自語りに過ぎない駄文だが、往々にして文章を書くことをライフワークとする人間には、どうしてもかいださなければならない言葉があるのだろうと思う。
さて、ほんの紹介はゆる言語学ラジオの堀本さんよりもうまくできる自身がまったくないので、各自g

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ある少年の寂寞

 そうだね、この文章はあまりにも時間を持て余しすぎて天井の染みを数えるくらいしかやることがない人に読んでほしいと思う。
 
 この物語は実際に起こった出来事をもとにしている、そう書かれたフィクションには、とてもよくありそうで、しかし考えてみるとありえないような物語が綴られていた。それはこんな話だ。
 あるS町の少年は、街を駆け回り、桜餅を探していた。今日は絶好の花見日和、先輩たちにお使いを頼まれた

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過去について語るとき、電車の中で思いついた話。

私は雪の積もった街を見ていた。レールが軋み、弱々しい日光が頬を暖かくする、そんな早朝の電車。そして思い出す、過ぎ去ったあの日々の夢を、その結論がわかってしまった地点から。
 夏のことだ、私は茹だるような気温の部室にいた。いつもの練習や雑談、そんな日常的で得難いような幸福感を、漫然と過ごした日々だった。これは穿つ後悔が幕を開ける話だ。
 僕は、電柱を数える。50hzをながすその線は、ただ右から左に、

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青春文学を読んだら、カフカ的不条理を感じた。「変身」は青春ゾンビと化した男の話。

青春文学を読んだら、カフカ的不条理を感じた。「変身」は青春ゾンビと化した男の話。


企画説明

 どうも。人は読書をするとき何を求めるのだろうか?学術書ならば知識、文学なら疑似体験、私はそう思っている。なので普段読まない、自分とはまったっく違った世界の本を読んだらどうなるのだろうか? これまでの人生で、健全な男女の交友と無縁の僕が青春文学を読んだら、カフカ的不条理に悶えた、という話をしようと思う。
 前置きな話をしよう。氷菓という小説をご存じだろうか? 日常の謎を描くこの青春ミ

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