ある読書ブログ「淀瀬 揺藍」

Hello!Nice to meet you. インターネットでクリエイティヴをしてい…

ある読書ブログ「淀瀬 揺藍」

Hello!Nice to meet you. インターネットでクリエイティヴをしていると思い込んでいる脳髄です。

最近の記事

山本文緒『プラナリア』から読む、無職の生活について

最近、山本文緒先生の『プラナリア』を読んだ。前に読んだ『自転しながら公転する』が凄まじかったので期待していた。そして、期待していたように面白く、精神を抉られたので書きたいと思う。 『プラナリア』は5篇の小説が収録されていている。 プラナリア 1つ目のプラナリアは、主人公が乳がんの手術で無職になったあとを描いている。この時点で、僕は面白いことを確信した。月並みな書き手は、大きな病気を同情的に書きたがるが、本作はそれが終わったあと、そして終わらせることを嫌がっている姿を描い

    • 『氷菓』の最初の話を読んでいて思い出した、実際に起きたできの悪いミステリ

      米澤穂信先生の氷菓、めっちゃ面白いよね。そして読み返すたびに思い返す事がある。それは高校生の頃、放課後に部室に向かったときの話だ。 僕らの部室、航空実習室は学校の最奥にあると言ってもいい。工業棟の4階は放課後に来る人はほぼいない、来るとしても同じ部活のメンバーだけだ。閑散とした廊下から窓越しに教室の中を伺う。静かだ、誰も居ないだろう、もっともそれはドアの鍵が掛かっていたことからも確認できる。横開きのドアは固く閉じたままだ。 部室の鍵は早く来た人が取りに行くことになっている

      • 春のオルガン(湯本香樹実)

        きれいな文章だった。猫や病気や春、そういった物が織物のようにきれいに組み重なって一つの物語を紡いでいる。 僕が思うに、こういう小説と書きたいのだと思う。 ある事実の羅列や、虚構の設定集に終わるのではなく、現実的でありながら、警句的な出来事のかずかずにであう。そして、少しづつ、読者にも分かる形で成長していく。 心が踊るアクションや、昂った修羅場など、強い状況設定に甘んじず、些細な出来事などに深遠な意味を見出すことこそ文学の本文じゃないのかな。 それでいえば、あとがきも好き。昔の

        • 最近読んだ本について語る。

          最近読んだ、君を愛した1人の僕へ、風の歌を聴け、冬季限定ボンボンショコラ事件について語ろうと思う。 君を愛した1人の僕へはあまり冴えた本ではなかったと思う。こういうのも悪いが、なんというか、微妙だった。すまん 風の歌を聴けは面白かった。特に冒頭の「完璧な文章などと言ったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」が好き。 いつか言いたいですね。あとは、村上春樹の文学の、その構成要素を簡素に抜き出して書かれているように感じる。密度が高くて好き。 冬季限定ボンボンシ

        山本文緒『プラナリア』から読む、無職の生活について

          ドーナツ

          甘いドーナツをお食べる、黒いチョコレートと薄黄色の美しいドーナツ。今日はアイスも食べた、お菓子を食べてしまったことに反省したつもりだったが、私の眼の前には、美味しそうなドーナツがおいたある。つい口に運ぶ、否応もないようだ、幸せで殴られるように甘みが脳裏に到来する。私は昼間のアイスのことを忘れて貪った。思えば、人生もドーナツも、楽しむためには過去を乗り越えなければいけないのかもしれない、と考えた。

          読書系ネット記事+オンライサロンのサイトを作ろうと思う

          サイトの概要 これから、ブログとオンラインサロンをかけ合わせた、読書好きのためのサイトの運営を始めようと思います。 まず、目標を言います。読書好きの人なら誰でもアカウントを持っているような有名サイトを作る、です。 どうしてこれを作ろうとしたのかは、最後に、に記述いたします。 では、具体的な内容の説明に移りたいと思います。 きっかけはフリーペーパーを作る団体と接触したことでした。触発され、僕もライターをやりたいと考えながらも、今ネット記事なんて飽和してるし無名の僕がやる意味

          読書系ネット記事+オンライサロンのサイトを作ろうと思う

          サミング・アップ!

          サマセット・モームのサミング・アップを読んでどうしても書かなければいけない気がしたので、書いていく。これは感想だとか紹介だとか、ましてや書評などでは決して無い。ただの自語りに過ぎない駄文だが、往々にして文章を書くことをライフワークとする人間には、どうしてもかいださなければならない言葉があるのだろうと思う。 さて、ほんの紹介はゆる言語学ラジオの堀本さんよりもうまくできる自身がまったくないので、各自googleで検索して貰って、オイラの文を読みたい人だけが続きを読むと言い。  本

          ある少年の寂寞

          そうだね、この文章はあまりにも時間を持て余しすぎて天井の染みを数えるくらいしかやることがない人に読んでほしいと思う。  この物語は実際に起こった出来事をもとにしている、そう書かれたフィクションには、とてもよくありそうで、しかし考えてみるとありえないような物語が綴られていた。それはこんな話だ。  あるS町の少年は、街を駆け回り、桜餅を探していた。今日は絶好の花見日和、先輩たちにお使いを頼まれた。少年は3千円をポケットに近所のお菓子屋さんを回った。当然というべきか、洋菓子店

          過去について語るとき、電車の中で思いついた話。

          私は雪の積もった街を見ていた。レールが軋み、弱々しい日光が頬を暖かくする、そんな早朝の電車。そして思い出す、過ぎ去ったあの日々の夢を、その結論がわかってしまった地点から。  夏のことだ、私は茹だるような気温の部室にいた。いつもの練習や雑談、そんな日常的で得難いような幸福感を、漫然と過ごした日々だった。これは穿つ後悔が幕を開ける話だ。  僕は、電柱を数える。50hzをながすその線は、ただ右から左に、或いは少しの熱を帯びながら生きている。おそらく、もっと先、人生に冬があるとしたな

          過去について語るとき、電車の中で思いついた話。

          非モテが青春文学を読んだら、カフカ的不条理を感じた。「変身」は青春ゾンビと化した男の話。

          企画説明  どうも、非モテ読書ブログです。人は読書をするとき何を求めるのだろうか?学術書ならば知識、文学なら疑似体験、私はそう思っている。なので普段読まない、自分とはまったっく違った世界の本を読んだらどうなるのだろうか? これまでの人生で、健全な男女の交友と無縁の僕が青春文学を読んだら、カフカ的不条理に悶えた、という話をしようと思う。  前置きな話をしよう。氷菓という小説をご存じだろうか? 日常の謎を描くこの青春ミステリ小説であり、青春部活モノの感も楽しめる一度で2度美味

          非モテが青春文学を読んだら、カフカ的不条理を感じた。「変身」は青春ゾンビと化した男の話。