マガジンのカバー画像

建物がたり

9
運営しているクリエイター

記事一覧

叔母の家の片付けをしてきました。

叔母の家の片付けをしてきました。

先日、父の妹である叔母の着物と人生のお話をnoteしました。その叔母が亡くなり、この度、家の片付けをしてきました。

叔母が50代から約30年住んだ家。再婚相手に終の住処として建てていただいたと推定しますが、そのお相手は早くに亡くなり20年以上一人暮らしでした。
平屋の家屋と趣味の陶芸、園芸用の道具類が納められた小屋が二つとお花と樹木でいっぱいの庭。

家屋のリビングには花器用の棚、食器用の棚に整

もっとみる
沖縄 本部で出会った和琉建築のお話

沖縄 本部で出会った和琉建築のお話

沖縄県の本部(もとぶ)町の居酒屋さん、気になっていたそのお店に行ってきました。
お店のホームページには次のようにあります。

うちなーの味 石なぐは和食と琉球料理の専門店 
沖縄の食材を中心に、和食の料理人が繊細な味付けで素材のうまみを残し、ここでしか食べることのできない「和琉料理」をお楽しみください。

ホームページを見て、石なぐという店名、どこにもないという和琉料理、お店の外観写真が私の気にな

もっとみる
鎌倉彫がすごすぎる格天井のお話

鎌倉彫がすごすぎる格天井のお話

場所は鎌倉の光則寺本堂。長谷寺のすぐ近くにある由緒正しいお寺さん。日蓮上人に深く帰依した宿屋光則という方の自邸を寺に改めたのが始まりです。花木のある庭が有名なようですが建築も見応えがあります。先日、恩師の三回忌法要に参列するために本堂内へ入る機会がありました。

本堂内の庭側入り口に面した外陣に設えられた参列者用の席に着いて、さすが由緒正しいお寺さんの柱や長押は立派だわ〜と思い、ふと見上げてみると

もっとみる
限りなく森に融合した小屋のお話

限りなく森に融合した小屋のお話

その小屋は長野県茅野市にほど近い原村の『エコラの森』にあります。特定非営利活動法人 エコラ倶楽部が地域の人たちと森林保全活動をしている森です。原村で『いっちゃん農園』を営む友人を訪問した際に近くをドライブ途中に目にしました。小さな小屋で中は一間になっていて炉があり、正面の出入口とは別に茶室の躙り口のような小さな出入口もありました。ここではワークショップなどが催されるそうです。

最初に小屋を見たと

もっとみる
店構えのいい経師店のお話

店構えのいい経師店のお話

思い出のある手持ちの書と思い出のある着物の裂をアップサイクルデザインした表装の制作をお願いしたいと思い、いくつかの表具店を調べましたところ、横浜のがんき通りにある木村経師店さんに行き着き、書と裂を持ち込んでお見積もりをしていただくことになりました。

表具店と経師店の違いについてはここでは横道すぎますのでおいておきますが、数あるお店の中から私はまず、このお店の店構えにピンときました。もう、絶対に私

もっとみる
ブルーノ・タウトの地下室

ブルーノ・タウトの地下室

その地下室は熱海駅から海側の高台を登った東山エリアの相模湾を望む斜面にあります。実業家日向利兵衛の別邸の人口地盤の庭の下の地下コンクリート空間に、1936年ブルーノ・タウトが設計した地下室です。タウトはそのロケーションについて次ように述べています。

「すでに引退した老実業家日向氏の別荘は、ちょうど日本の『リヴュラ』といったような風光明媚な太平洋沿岸の、断崖が急勾配で海に落ちかかっているようなとこ

もっとみる
旧矢中邸で素敵な裂使いを発見

旧矢中邸で素敵な裂使いを発見

つくば市に国登録有形文化財に指定された旧矢中邸があります。セメント防水剤の研究者であり、(株)マノールの創業者である矢中龍次郎の邸宅で、贅の限りを尽くした近代和風建築です。

矢中龍次郎が死去して以来ほぼ40年間空き家状態でしたが、2008(平成20)年に旧矢中邸の所有者が変更となることを契機に、地域において旧矢中邸を文化財として再評価し保存活用する機運が高まり、現在「NPO法人矢中の杜の守り人」

もっとみる
心わしづかみ作品 旧川上貞奴別荘にある亀甲寄せ裂の小襖のこと

心わしづかみ作品 旧川上貞奴別荘にある亀甲寄せ裂の小襖のこと

明治から昭和初期にかけて日本初の女優として知られる川上貞奴(本名貞)の別荘と菩提寺が岐阜県各務原市鵜沼宝積寺町にあります。別荘は木曽川の景色を一望でき景勝地にある萬松園、菩提寺は別荘から国道21号線をはさんである貞照寺です。
川上貞奴は、1871(明治4)年に東京日本橋に生まれ、16歳で芸子になり貞奴と名乗り、1891(明治24)年に川上音二郎と結婚し舞台女優となり、その後女優を引退しています。

もっとみる
八勝館のキラーコンテンツ 大襖のこと

八勝館のキラーコンテンツ 大襖のこと

名古屋に八勝館という老舗料亭があります。
そのキラーコンテンツは御幸の間の更紗が貼られた大襖です。これがもう素敵すぎてたまりません。御幸の間は堀口捨己により設計された近代の和室で、大襖の意匠も堀口が大変こだわったものです。

以前に調査した建物の内容は次のとおりです。
八勝館は創業1925(大正14)年の老舗料亭です。先先代が旅館兼料理店を開業しました。八勝館の名の由来は丘陵であるこの地から八つの

もっとみる