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沖縄 本部で出会った和琉建築のお話

沖縄県の本部(もとぶ)町の居酒屋さん、気になっていたそのお店に行ってきました。
お店のホームページには次のようにあります。

うちなーの味 石なぐは和食と琉球料理の専門店 
沖縄の食材を中心に、和食の料理人が繊細な味付けで素材のうまみを残し、ここでしか食べることのできない「和琉料理」をお楽しみください。

ホームページを見て、石なぐという店名、どこにもないという和琉料理、お店の外観写真が私の気になりポイントでした。

お店は本部港近く、Googleマップでは辿り着けないわかりにくい所にあり、そのアクセスにまず期待感が膨らみます。

建築外観は木造平家で張り出た軒(のき)と製材していない自然のままの木の柱が特徴的です。店内に入ると天井の無い吹き抜け空間、柱、梁、建具、座卓にふんだんに使われた木材が目に入ります。好み過ぎる空間が広がっていて既に食前酒をいただいたような気分に。

そして、お料理とお酒。パッと見は琉球料理に見えるのですが、盛り付けや味わいにどことなく和の洗練を感じます。鰹出汁のきいた滋味深い田イモの餡掛けが私はこの日のメニューNO.1でした。

大将は京都で修行をしていたそうで、沖縄の食材を和風の味付けで出している、とおっしゃっていました。なるほど〜、ここでしか食べることのできない和琉料理とはそーゆーことなのね!と大納得でした。

店内にふんだんに使われた木材について大将に質問してみると、山桜、銀杏(いちょう)、楠の木などポンポンと材木名が出てきました。あれ、料理人が木材に詳し過ぎでは?と不思議に思ったところ、福島へ店舗建設用の木材を仕入れに行ったら取り憑かれて木工を修行し、工房を開設した経験がおありとのこと。なるほど〜、そーゆーことなのね!と再び大納得でした。

改めて店舗の外観をゆっくり拝見しました。目を引いた張り出た軒は琉球の民家の特徴である雨端(あまはじ)だと知りました。玄関を持たなかった琉球の民家特有の、内部でも外部でもない空間。来客をもてなし、風雨を防ぎ、直射日光を遮る機能があります。軒を支える柱は雨端柱(あまはじばしら)。材はチャーギ(イヌマキ科の常緑高木)で、近所で育った木を切って寝かしておいたものを使用したそうです。
調べてみますと、チャーギは材は堅くて、耐湿性があり、白アリにも強いので高級な木材として重宝され、特に沖縄では建築材・家具や仏壇で使用されている、とのこと(沖縄方言辞典より)。
製材しないで自然のままの姿であることが特に興味深かったです。製材すると風雨に弱くなる、根元はとても水に強い、ために自然のままの姿で使用するようです。そして、一本一本異なる木の姿は美しい!

木工職人だった大将の木材へのこだわりに興味が尽きずに質問し過ぎたところ、店舗に繋がるご自宅を見せていただくことに。実はお店に入る前に店舗横の住宅の玄関の造りが気になって見に行こうとしたら、犬に吠えられて断念したのでした。その玄関を入ってご自宅を拝見できることになるなんて〜!

玄関は入母屋(いりもや)の庇(ひさし)のある純和風な構え。庇を支える材は特に太い自然の姿のチャーギ。和風の玄関に琉球のエッセンスが効いた、ここにしかない建築の面構えを創っていました。
木の引き戸をくぐると上り框(あがりがまち)は重厚な一枚板が二段。
その先のダイニングには一枚板の楠の木の大テーブル、脚も楠の木の根元の造形をそのまま活かしたもの。
隣の座敷との間の梁せいの高いこと。その下面は4枚の戸襖(とぶすま)の溝が彫られていました。
座敷にはまたまたドーンと楠の木の一枚板の大座卓、脚も楠の木の根元でした。床の間の柱と仏壇の扉は縮杢(ちぢみもく)の入った紅葉(もみじ)。天井は当然、格天井(ごうてんじょう)。
琉球スタイルの仏壇以外は紛れもなく、ふんだんに使われた木材と確かな職人技の木造在来工法のザ•和風建築でした。

お料理とお酒を味わい建築を拝見しお腹も心もいっぱいになりました。ここでしか食べられない和琉料理の居酒屋さんに行ってみたら、思いがけず琉球と日本が融合した和琉建築に出会った、沖縄 本部の建物がたりです。

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