『風の神話5』 人の世の暦には切替があると言う。 『新しい年』など、我らにはとんと関係ないものだが、同じに吹いても人の心の持ち用で風の塩梅は違って来るらしい。 なればゼフュロス、エウロス、ノトス、ボレアス──我がアネモイよ、このアイオロスの下に集え。 ここからまた新しい風となれ。
『風の神話4』 「来たか…」 冷気を纏ったボレアスが近づいて来たのを感じる。 「主様。お久しゅうございます」 「息災で何よりだ。が、あまり荒ぶるでないぞ」 「私とて不本意なのです。しかし、人には時に試練が必要でございましょう」 憂い顔のボレアスを、アイオロスは不憫そうに見送った。