〘お題de神話〙 Tria Colorum Prima
神々の世界は鮮やかな色彩に満ちていた。それは彼らがどんな色の波長でも捉えられる目を持っていたからであり、人の目にも同じように映るわけではない。
色彩と虹の女神は思案していた。では、どのようにして世界に彩りをもたらそうか、と。
ヘラの伝令神として役目を果たすイリスが常々思っていたのは、自身が司る中で一番気に入っている虹霓が美しく見えないのはつまらないと言うこと。
天地を虹霓で結び、遠くの地でも瞬く間に移動することが出来、空を翔ける軌跡を虹霓で描くことも容易い。
にも関わらず、神々からは称賛される美しい虹霓が、人々の目に美しく映らないことに一抹の寂しさを感じるのだ。地上に生まれ始めた人々にも、鮮やかな軌跡を生み出す架け橋を感嘆の眼差しで見上げて欲しいと願いはやまない。
「そうだ。ゼウス様の天空とポセイドン様の海、デメテル様が与えた植物、そしてプロメテウス様が与えた火……これらの原色なら人の目にも正しく映える」
楽しげに鼻歌を歌いながら、イリスは掲げた掌にふっと息を吹きかけた。すると、鮮やかな青・緑・赤の光が円を成し、均等に、少しずつ重なり合う。
「重なったところに生まれる色も、人の目に見える色として再現出来ているはず……」
緑と青が重なった部分は青緑、赤と青が重なった部分は赤紫、赤と緑が重なった部分は黄、そして赤・緑・青の3色が重なった部分は白色に。
「うん、これで基本色は良し!」
さらに光を当てて確認し、今度は色たちをスルリと指でつまみ上げると宙に放った。すると無数に散った色の雫が好き勝手に混じり合い、それぞれに違う色へと変化してゆく。
「さあ、みんな、相応しいところへ!」
主であるイリスの声に、色彩たちが文字通り色めき立つように弾けた。
それぞれ単色で存在していたものたち──空や海は深さや光の加減で様々な淡青・青・蒼・碧・紺に、緑一色だった植物は新芽のやわらかい黄緑から深い緑へと色付き、やがて褪せて黄・赤・茶に、火は赤だけでなく温度によって橙や淡青へと変化するようになった。
「そして、私の大事な虹霓は……」
目一杯広げたイリスの掌から光の帯が現れた。弧を描いてゆく光には年輪のようにいくつかの筋があり、それぞれ違う色を帯びている。
「明るく鮮やかに……!」
満足気に眺めるイリスの瞳が、その多彩な色を映して虹色に輝いた。
後に『光の三原色』『色の三原色』と呼ばれる原色から、世界を色で満たした瞬間である。
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ちなみに前職は印刷・写真関係で、飽きるほどRBGの文字とシアンマジェンタイエローを見たり聞いたりしてましたが、当時もさっぱり覚えられず何となくやっていたタワシですwww
印刷に携わる方、写真に携わる方、絵画に携わる方には特に、如何にテキトーかおわかりになるかと思いますが(笑)、色の説明を書き始めると冒頭だけでも1,000文字では足りませんので、見て来たように騙る語る創作神話とご容赦ください(笑)
さて、2019年12月半ばに発足したnote神話部がめでたく3周年を迎えると言うことで、祝☆3周年企画のプレとして #mymyth202212 のお題は『3/TRIAD』になっています。
今回の締切は12月4日ではありますが、本来なら今日が締切だっただろうと言うことで、今日出しました🤣
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