鼻下長紳士回顧録

娼婦を、作家を、蝕んでいく顔の見えない「人気」という怪物『鼻下長紳士回顧録』

娼婦を、作家を、蝕んでいく顔の見えない「人気」という怪物『鼻下長紳士回顧録』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部) 【レビュアー/佐渡島庸平】 安野モヨコの8年ぶりの新作ストーリーが出る。 時間は数えないようにしていた。僕自身も、数えだすと不安になり、焦るから。帯に載せるために調べて、8年もたっていたのかと認識した。 長かった。 編集者にとってこれだけ長かったのだから、安野モヨコにとっては、もっともっと長い抜け出すことのできない地獄のような8年だっただろう。 見本として届いた通常盤と特装版の両

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「鼻下長紳士回顧録」(上)安野モヨコ

「鼻下長紳士回顧録」(上)安野モヨコ

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ブロードウェイ ミュージカル製作

ブロードウェイ ミュージカル製作

 2020年1月より、ニューヨークに移り住み、ミュージカルを製作しています。 今は、安野モヨコさんの『鼻下長紳士回顧録』を、トニー賞受賞クリエイターとミュージカル化しブロードウェイ 上演を目指しています。 ミュージカル製作の過程、ニューヨークでの生活など、お伝えしていきます。

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不安はおまじない

不安はおまじない

杞憂という言葉がある。 昔々の中国で、「杞」の国の人が「空が崩れ落ちてくるのでは」と非常に恐れ「憂」いたことから「そんなことありえな~い」の意味として生まれた言葉だ。 この「杞憂」のエピソード、どうも他人事とは思えない。 先日、幼い頃から「お気に入りのぬいぐるみの首が取れたらどうしよう」などと先のことを考えては恐怖する子供だったことをnoteに書いた。 私には、いつか必ず起こるが今ではない(かもしれない)ことを随分前から恐れ憂う思考回路が埋め込まれている。 何故そうなっ

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安野モヨコ復帰作『鼻下長紳士回顧録』、パリ、娼館の女達の涙と笑い。体調不良だった作者、自分の近年と重なり親近感。辛くても、生きるとは希望を失わず自分の足で立ち、変態だろうがなかろうが自分を貫く事。生に飛び込め!と背中を押された気持ちになる。「棺おけ野郎」の話◎。ミニョさんファン。

安野モヨコ復帰作『鼻下長紳士回顧録』、パリ、娼館の女達の涙と笑い。体調不良だった作者、自分の近年と重なり親近感。辛くても、生きるとは希望を失わず自分の足で立ち、変態だろうがなかろうが自分を貫く事。生に飛び込め!と背中を押された気持ちになる。「棺おけ野郎」の話◎。ミニョさんファン。

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広くて深い

広くて深い

安野モヨコの鼻下長紳士回顧録について書こうと思います。 「才能とは書き続けること」 これは下巻で再会したサカエが主人公のコレットに言ったセリフです。 サカエは小説家を目指してコレットの住む国に留学したにも関わらず、浪費家の娼婦に恋をしたせいで全てを失い地下道でクズ拾いをしながら生活するはめになってしまった憐れな青年です。 以下はネタバレになりますので、まだ読んでいない方はぜひこちらの作品を。 https://www.amazon.co.jp/dp/4396766564

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運命を変える“本心”との出会い

運命を変える“本心”との出会い

自分の欲望を知っているだろうか? 安野モヨコ「鼻下長紳士回顧録」にこんな一節があります。“変態とは、目を閉じて花びんの形を両手で確かめるように 自分の欲望の輪郭をなぞり その正確な形をつきとめた人達のこと”。 人には様々な欲望があるけれど、欲望を正確に把握するのは難しい。しかし、目を閉じて欲望の輪郭を確かめていく作業をした者は本当の欲望に気づき、その欲望によって突き動かされるように進んでいくことができる。多くの人はこの力強い欲望が分からず、ナアナアになり時間だけが過ぎ去っ

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似ているものを比較する / 安野モヨコトークイベント

似ているものを比較する / 安野モヨコトークイベント

『鼻下長紳士回顧録』完結記念トークイベントで、安野モヨコ先生がこんなことを言っていた。 ◇ 漫画とイラストは全然違う。要素が違う。 漫画の一コマは2秒程度の出来事。今どういう状況なのか、そしてキャラクターの心情を描く。 イラストは、30分くらいのイメージ。背景や小道具などのディテールによりこだわる。一方人物に表情は必要ない。表情があると全体の情報が濃くなりすぎる。 ◇ 似ている二つのものを比較するときに、要素分解して、まったく異なる軸を使って説明する。 モヨコ先

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鼻下長紳士回顧録 安野モヨコ

鼻下長紳士回顧録 安野モヨコ

これからの安野モヨコの作品が楽しみになる作品だった。 この作品自体のクオリティが高いのはもちろん、(なかなか作品を描けなかった)作者がこれから漫画家として生きていくんだという決意表明の作品でもあったように思う。 メインストーリーは、娼館で働くコレットが、イケメンのレオンに惹かれ、「レオンと幸せになりたい」と感じつつも、レオンの死をきっかけに「レオンに消えてほしかった」という自分の本当の欲望に気づくまでの話。 自分が本当に望むものはなんなのか?自分の欲望と向き合い、欲望の輪郭

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