もうだいぶ昔の話。交通違反でキップを切られた際に、ツーリングで北海道に向かっていると警官に告げた。すると別れ際に若い警官が笑みを見せてきた。「今の時期、富良野のラベンダー畑がきれいですよ」。それ以来ラベンダーを見ると、北海道の富良野ではなく、岩手のあの警官を思い出すようになった。
キャンプ場での宴会は、私にしてみればネタの宝庫であった。集うそれぞれが、全国をまわる旅の猛者。信じられぬ話が次から次に出てくる。するとある時こんな話題が出た。「指名手配犯が野営しながら逃げているらしい」。場の空気がフリーズし、皆がチラチラと私を見だしたことが今でも忘れられない。
北海道の町外れのキャンプ場に連泊していた時である。仲良くなったチャリダーに、今日は何するのと訊いたら、郵便局で金をおろすと言う。なので戻るのは明日ですねと、野営道具を積んで出発した。意味がわからなかった私は地図を見て納得した。バイクなら数刻だが自転車だと泊りがけの行路だったのだ。