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北斗星の旅・1993夏・あの日、留萌駅で

 寝台特急/北斗星に乗ったのは,まだカシオペアが運行されるより前,毎日二本の北斗星が上野駅を発着していた頃のこと。ちょっと早めの夏休みに北海道ツーリングに出掛けました,ちょうど今頃の季節、もう30年以上も前のことでした。(バイクは札幌でレンタル)
 さすがに個室のBソロは入手できずに普通の二段開放B寝台で上野駅をあとにします.出発は確か午后4時すぎ,のちのカシオペアの運行ダイヤです。(その昔は盛岡行き最終やまびこのスジ)
 宇都宮、黒磯と通過して,福島、仙台と通い慣れたルートを北上。日付が変わる頃には盛岡を過ぎて青森駅には真夜中の到着でした。機関車を付け替えて青函トンネルをくぐると,もう日の出の時刻。那須連峰や蔵王連山が見えたのと同じ側(左・西方向)の車窓に明け方の津軽海峡の青い海面が見え始めます。

 函館駅では再び機関車交代、ここからはディーゼルDD51による非電化区間の疾走です。ここは,昔特急「北斗」や「北海」で函館を出発した午前四時台のスジ,大沼公園を突っ切り,右手に噴火湾,左手に広い牧場を眺めながら午前九時過ぎ、札幌に到着しました。バラエティに富んだ昼間の車窓は退屈している暇も有りません。・・・・・これだけ乗ったら寝台料金も納得の設定です。

 札幌で予約してあったレンタル・バイク=SRV250に跨がり一路北上、北海道開拓の村を見学してから,国道12号線を旭川方面に向います.美唄の跨線橋で函館本線をまたいでから国内最長の国道(12号線)直線区間を通りますが,信号も交差点もあるので,あまり実感は出来ません。鉄道の直線最長は苫小牧の手前で明け方に通過していますが,線路を見てないので実感は無し。高速道路に設けられた、当時出来たばかりの砂川ハイウェイ・オアシスにも寄り道します。

何処までもカーブは見えない


 深川からは,当時廃線目前だった深名線に沿ったルートへ。すれ違う列車もごく稀で,同じ方向の列車に遭遇したりすると,撮影チャンスを窺って大忙しになります。ここは国内で唯一、キハ53ー500系と云う両運転台急行型の珍車が走っていた路線、急行型の顔を前後に持つ両運転台の気動車がノンビリと走っていたものです。名も知らぬ木造の小さな駅に立ち寄ってみると,そこには駅を訪れた大勢の旅行客が書き連ねた連絡ノートが。メールもネットも普及する前の時代,丸文字の可愛いメッセージが何冊ものノートを埋めていたものでした。

 名寄の手前では国内で最低気温を記録した朱鞠内湖に立ち寄って見ましたが7月真夏の炎天下、最低気温の実感は湧きません。あとはあても無く彷徨っていたソロツーリング、進路を留萌本線方面に定めて,一路留萌の街を目指します。のちに,NHK連続ドラマ;すずらんで舞台となった(架空の)『明日萌』駅は実在の恵比島駅がモデル。SLと共にブームが訪れるのは,数年あとのことでした。

 夕陽に染まる日本海を見下ろせる留萌の坂道と丘の上の公園,コレはもう映画の名シーンです.デート・コースにもいいかも知れません。遊具で遊んでいる子供達にはこれが当たり前の光景、何とも贅沢な環境です。街中では夕食と宿泊場所を探すのに右往左往。海辺のキャンプ場ではライダーたちの酒盛りが始まろうか、という案配・・・・どうにか、空腹を満たして何となく留萌駅に戻って来たのは,最終列車が出る午後10時過ぎのことでした。

 大きな吹き抜け空間を持つ立派な駅舎、昔はここから稚内方面に羽幌線が伸びていましたが,昭和の末期に多くの長大路線とともに廃止されてしまいました。いい加減,泊る場所を探しておかないと・・・・その時,突然頑丈な構えの駅舎がグラグラと音を立てて揺れ始めました。かなり強い地震です.震源も意外と近いかも知れません。即座に,携帯ラジオのスイッチ・オン、震度4の揺れでした。さらに,ここは日本海側,津波の恐れも!

 
 1993年7月12日の北海道南西沖地震、その瞬間を留萌の駅舎内で迎えることになったのです。程なくして津波注意報が出されたことを知り、真っ先に向かったのは先ほどの海岸沿いの岩場でテントを広げていたライダー達のいるところでした。すぐさまバイクで急行し、彼らに事の重大さを告げると、地元の消防車が警戒を呼びかけるアナウンスと共に巡回してくるのが見えました。

 道南に比べて震源からは距離があるものの日本海に面した留萌です。真っ暗な海を見下ろせる高台の公園には避難してきた地元の人が続々集まってきました。皆、カーラジオから流れる地震関連のニュースに聞き入っているようです。中には愛犬を伴って散歩気分のおじさんも見かけました。海岸からはかなり標高差があり、あんまり危機感はなさそうです。ラジオからは奥尻島で大規模な土砂崩れの発生を報じていましたが、それ以外の被災状況は明らかになってはいませんでした。

続きを読む"北斗星の旅の途中・・・"(つづく)

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