記事一覧
童話『クスノキの鐘』後編
雨に打たれ、風に葉を揺らしても、クスノキの幹はどっしりとして動かず、枝ではたくさんの鳥達がひっそりと身を寄せ合っていました。静まり返った鳥達の頭の上で雷が鳴っています。
「クスノキのおじいさん、強いね。こんなにすごい嵐なのに、ビクともしないや」とカラスの子が母親に言いました。
「そうね」と母ガラスは子ガラスを羽で包み込みました。
丘の上に白い光が瞬き、少し置いて雷がとどろきました。今までで一番
昨日上げたS.Sは訂正したいので下書きに戻しました。スキつけて下さった方、読んで下さった方、申し訳ありません。
童話『星の子の冒険』 後編
簡単な前編のあらすじ
空から野原に降りてきた星の子。夜露のようにきらきら輝く星の子は、花や虫達と友達になりますが、その様子をカラスがじっと見ていました。
カラスは光るものが大好きです。巣の中にガラスや金属でできた光るものをいっぱい集めています。星の子はそのどれよりもピカピカしていて、欲しくてたまらないのです。
カラスが急降下しようとした時、笛の音が流れてきました。カラスは慌ててブレーキをかけ
童話『星の子の冒険』 前編
春の終わり頃のことです。東の空から昇ってきた月の明かりが野原に降り注ぎ、草花の葉っぱが宝石のように輝きました。まるで野原が星空になったようです。もちろん本物の宝石ではなく夜露が光っているのですが、草花は大喜び。
「ほら、大きな指輪みたい」とタンポポがギザギザの葉についた夜露を嬉しそうに見ています。
「私はティアラを載せたみたい」とカラスノエンドウが小さなピンク色の花についた夜露を落とさないように
S.S.『アウトテイク』
「Take1」
a.m.1:30.
時折車が追い抜いていく以外、人気のなくなった通り。歩道を歩く自分の足音が闇に吸い込まれるように消えていく。
背後からスピードを出した車が迫り、追い越しざまにライトが歩道にうずくまっていた黒猫を照らした。瞳が青と黄色に光り、猫はオレの目の前を横切って車道に飛び出し、そのまま渡り切って闇の中に消えた。
あの黒猫も孤独な身か……というより前を横切られた……。不吉な予感
S.S『下車前途無効』
ふと思い立って旅に出た。目的地を決めず、路線図で最初に目についた駅までの切符を買い、電車に乗った。
馴染みのある景色、住み慣れた街を後に、初めての、再び来るかどうか分からない街を一人電車に揺られていく。同行者がいてはなかなかできない、こういう気ままな旅がいい。
車窓を流れる風景を見ながら、ふと惹かれたら降りる。切符には下車前途無効と書いてあるので料金が多少惜しくはあるが、ぼくは行き当たりばっ
自分に問いかけてみる
第40回『日産 童話と絵本のグランプリ』が発表になりました。今回もかすりもしてなかったですね。
いつも思うのです。
「やるだけ無駄なんちゃうの」
自分のことは自分が一番分かりますので、無理なんだろうなぁと思うのですが、一方で
「そう言えるほど頑張ったんけぇな」
と問いかけている自分がいます。
まだできると思えたら、それは伸びしろと思っていいんじゃないかと。
やめるのはいつでもできますんで。
今日
現代なら不適切な表現。昔の文芸でよく目にします。昭和の頃、僕より上の世代はBMWをベームベ~と言ってましたが、これも今では不適切? 言葉自体に罪はなく、どういう意図で使ったか、心の方が問題じゃないですか? 言葉狩りをして不適切表現がなくなれば、差別もなくなるんですか?
新美南吉『鳥右ヱ門諸国をめぐる』レビュー
このところ青空文庫で新美南吉作品をコツコツと読み、一作ずつメモを取っていくという地味~な作業を続けております。
この『鳥右ヱ門諸国をめぐる』は南吉作品の中ではかなり異色ではないかと思い、レビューを書いてみる気になりました。ネタバレには注意しますが、読んでみようと思われる方はご注意下さい。
あらすじ
鳥山鳥右ヱ門はしもべの平次を快く思っていなかった。好きな犬追物をする鳥右ヱ門を見る平次の目が鋭く、