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読んだ本・レビュー

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読み終わった本のレビューを書きます。本のタイトルの前に、絵本や小説などジャンルをつけますので、気になったものを読んでいただければと思います。新たな本との出合いにつながれば嬉しいで…
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新美南吉『鳥右ヱ門諸国をめぐる』レビュー

このところ青空文庫で新美南吉作品をコツコツと読み、一作ずつメモを取っていくという地味~な作業を続けております。 この『鳥右ヱ門諸国をめぐる』は南吉作品の中ではかなり異色ではないかと思い、レビューを書いてみる気になりました。ネタバレには注意しますが、読んでみようと思われる方はご注意下さい。 あらすじ 鳥山鳥右ヱ門はしもべの平次を快く思っていなかった。好きな犬追物をする鳥右ヱ門を見る平次の目が鋭く、咎めるように心を刺してくるから。鳥右ヱ門は視線に耐え切れず、平次の右目を矢で潰し

『きむら式 童話のつくり方』を読んで

ハウツー本が有益なジャンルもあると思いますし、否定はしません。でも童話なり小説なりを書くための本の効果に関しては、あまりないかと思います。読んだからといって書ける訳ないです。文章に関しては誰でも書いてきているはずだし、学ぶとすればそれは先人の作品と僕は思ってます。先人の作品を読んで学んだり、盗んだり(もちろん技術のことです)できなければ上達は望めないと思うのです。 ではなぜこの本を読んだかというと、行き詰まってるからです、はい。自分では自信もあったし、今もそんなに悪いかなぁ

童話集『水曜日のクルト』より「血の色の雲」レビュー

西の空を染める夕焼けに何を思いますか? きれいやなぁ。明日もいい天気……というか暑いんやろなぁ。 今日も暮れていくなぁ。自分なりに頑張ったんちゃうかな? それとも美しい色合いに見入ってしまうか。 でも、もしかしたら、どこかで誰かが流した血の色なのかもしれない。読了後、そんなことを思いました。 大井三重子著『水曜日のクルト』の中で唯一ファンタジー色を持ちながら、他の5編の収録作のような心温まる話とは趣の違う作品です。若干ネタバレしますので、ご注意下さい。 うすべに色の雲の縁で