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千夜千句

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4年前にカードゲーム『俳聖』出版記念としておっ始めた「千夜千句」。 3年9ヶ月のブランクを経て、復刊!
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2022年4月の記事一覧

千夜千句(171〜180)

千夜千句(171〜180)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年1月20〜30日

千遍の咳百篇の生きる意味

半身を雪に埋めて寝釈迦かな

凍てる道往くや無心に一心に

訳知るや冬の海月は箱の中

寒垢離の何か云ふただ何か云ふ

髭剃れば鏡の女が凍ててゐる

街凍てて月夜に闇夜交差する

道の雪砦のごとく押し積まれ

ハワイ雨季やたらに虹の跨ぐ様

ハワイ涼し歌の航路は船の路

千夜千句(00161~00170)

千夜千句(00161~00170)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年1月9日

鮟鱇の掻っ切られては憮然たる

真っ平らの空港より発つ冬の雲

懐手して我が芯に触れゐたる

噴水の人魚ずぶ濡れ冬薔薇

眼差しに真向かひて立つ野水仙

ワイキキをどう詠めというのだ俳句よ

夜話の三つ同時に五人なのに

胸なでる蟹海中にいてくれて

文鎮の地を押すやうに海鼠かな

雪の街口紅薄くして出掛け

千夜千句(00151~0160)

千夜千句(00151~0160)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月17日

年功のごとく羽織りしショールかな

マフラーの結びとともに君嫁けり

カーディガンとつっかけの女銀座流

セーターの薄くて温し月の宿

我の強き膝小僧のせるブーツかな

不祝儀の障子ひっつれてゐて哀し

絵襖のつまらぬ柄によく眠れ

炬燵出て自画像を描く月夜哉

冬うらら自我あるがごと外出し

氷柱折る少年の手の白きこと

千夜千句(00141~0150)

千夜千句(00141~0150)

カードゲーム『俳聖』出版記念 
2018年1月15日

薄氷この不確かな男坂

厚氷この確かなる女坂

虎落笛生きて逡巡せしものに

計すでに見失ひしや小正月

冬入日とっとと仕舞って酔ひませう

寒晴やスマホのあたる耳硬し

降りる人の背のまるまりて冬の駅

地下にゆく階段さへも冬日和

雪原の一灯そこに無なるもの

雲に消え雲にのる山北颪

千夜千句(0131~0140)

千夜千句(0131~0140)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月14日

再会を祝ふ年ごろ鷹渡る

講評を交わす流儀やべったら市

酒はわがライナーノーツ冬銀河

抱きし子に背の寒月を教へられ

亡き人の形(なり)に籐椅子日脚伸ぶ

母は子を子は母を捨て冬大河

カフェオレの薄きに雪見店の隅

朴落葉たしかに造る森の底

石蕗の花夕闇までを佇めり

赤ん坊は舌のみ自在年明ける

千夜千句(0121~0130)

千夜千句(0121~0130)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月13日

死化粧は離れゆくため雪の寺

冬牡丹是非問ひたがる血の集ひ

葬了へて母屋に冬陽深く入る

冬苺押され傷みて甘くなり

すきま風見知らぬ風の存分に

寒雀つつと跳ねまたつつと跳ね

鮟鱇の斬られてなおもブッ細工

験らしや声出し神籤読まれゐて

手袋すればむすんでひらいてなぜかやる

買ひものを終へて勇むや福袋

千夜千句(0111~0120)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月12日

旋回の輪を広げては鷹渡る

森の縁ひとをおそれよぎんぎつね

水槽や物体の鶴立たしめる

うさぎに名つけるなといふ杣の肩

梟の哲学聞けず浅き森

大平原たまに動けば鶴ならむ

子のほかは旨くもなしに鱈真白

鰤しゃぶの奉行つとめて秒単位

河豚肝溶くここで死んでもよろしおま

ミソ少な捕まる蟹はバカだから

千夜千句(0101~0110)

千夜千句(0101~0110)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月11日

降る雪や棺の柄を論ひ

狐火もあるいとなみとみてうれし

軒氷柱しのんで折りし朝の月

マント羽織り面接にゆく無頼かな

JKのマフラーぐるぐる顔半分

冬星座アレ継母といふヤンキー

今生の別れなぞなし川凍る

不在とは生き別れなり薄氷

雁田山根雪を待って板の上

人の妻に熱燗酌ます句会かな

千夜千句(0091~0100)

千夜千句(0091~0100)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月10日

水鳥の水一枚に十五六

大鹿にみられかがれてあなどられ

狼の生き残るかな人の口

鼬出てとんまが居るとこちら見る

冬眠と表札出せば日の暮れる

鴨肉の断定的な肉脂

鴛鴦の余計なたとへ知らぬふり

冬鷗追へば眼前日本海

その橋に降り立ち止まれ冬カモメ

冬カモメつねに横向き鉄の橋

千夜千句(0081~0090)

千夜千句(0081~0090)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月9日
閑として落ちぬつもりの木守柿

大根の水とじこめる皮薄し

把の中の蕪みなよくぞ似てゐたる

蜜柑色のあぶらベットリ皮より出

冬林檎大事に剥けば蜜宿る

慈姑といふ字面が謎だ掘りに掘る

この茂みここでいいのだ冬苺

文化的な七草パック不味さうな

葉牡丹にかけてみたきやマヨネーズ

柳刃を立てて息止め本鮪

千夜千句(0071~0080)

千夜千句(0071~0080)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月8日
予といへば我在るがごと去年今年

小寒や世がどうあれど少数派

冤罪のごとく年食ふ今日の春

ハズレなしいずれ飲む酒福袋

松の内腕あげてをり友のバイ

初恵比寿十日過ぎたる暦売

まっつぐな狼煙つなぐや天と地と

勝ち負けはお弟子の出来に初句会

なまはげの嚇して祝ふまわりくど

葉落とせば疎らに見ゆる冬木立

千夜千句 (0061~0070)

千夜千句 (0061~0070)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年1月7日(0061~0070)
凍鶴や西陽を大いなるものに

梟の悟りしや法法といふ

爪先をセンサーにして猫行火

鹿狩のスコープ覗く目を撃ちき

鷹匠のタカ達成感のあるなしを

哨戒の羽音小さし冬の蝿

何食わぬ顔で白鳥ついと過ぐ

行儀よく寝ます行火に忠実に

小火だけど来るさ消防十五台

ハンカチの大きさほどのプロ焚火

千夜千句(0051~0060)

千夜千句(0051~0060)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月6日(0051~0060)
ぶらさがる万両ちょんとのる千両

裏白のうごきだす否うごかざる

くるくるとまはりさうなり福寿草

裏木戸に籠る無念や冬牡丹

鏡台の裾に山茶花ちり急ぎ

初護摩の坊主ひとりで盛り上がり

乗初の見物女の蹄かな

七福のフォースそれぞれ覚えずや

どう見ても地獄がよろし初閻魔

初雀まあるく太る仕様にて

千夜千句(0041~0050)

千夜千句(0041~0050)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月5日(0041~0050)
湯豆腐に向かへば背筋やや立ちぬ

鏡餅唸るも曲がる一刀目

鍋終えて話の長い人となり

鯛焼きもおしゃれ勝負の初商

熱湯の蕎麦掻き父の掻きにける

祖母がかき混ぜし葛湯はよろず効き

それはもう俎始はタイカレー

齧られなば数の子いかに生きしとや

ずっと焼くすき焼き作法わが夫よ

芋煮会ビンボークサイ半可通