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千夜千句

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4年前にカードゲーム『俳聖』出版記念としておっ始めた「千夜千句」。 3年9ヶ月のブランクを経て、復刊!
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記事一覧

千夜千句(211〜220)

千夜千句(211〜220)

瓦斯燈を模す街灯に雪刺さる

冬晴れのスマホに映る指紋かな

冬天の聳ゆるものはみな寂し

我捨てし母いじめては三日咳

春浅し祖母妖けて出てまだ叱る

ぽかぽかや口ほどに凧上がらない

栗の樹の冬盆栽の如く斬る

恋猫の強情っ張りや本閉じる

新酒古酒まっすぐ帰れるわけがない

立春や道まっすぐにまっすぐに

千夜千句(201〜210)

千夜千句(201〜210)

煮大根ひとは顎から年を食ふ

鳥渡るだれ悲しまぬ恋もあり

 ※羅(うすもの)や人悲します恋をして(鈴木真砂女)の本句取り。

県境尾根に木立のまばらなる

温泉(ゆ)の猿のどこがおかしや雪信濃

初氷雪一片をのせて割れ

ケータイを咥へる鰓の夜寒かな

節分や平和は願うものですが

節分や非戦はそうと決めるもの

眼鏡宝石時計鉄砲店に雪

豪雪の町は原野となるごとし

千夜千句(196〜200)

千夜千句(196〜200)

月夜みち薄荷の如き冷気かな

榾の火や背を辿りつつ夢枕

氷り滝動く輩はわれのみぞ

冬山のこだま順々に子となりぬ

水温む昔のひとはやたら死ぬ

千夜千句(192〜195)

千夜千句(192〜195)

望楼や地より降りくる細雪

涸滝の落ちるものなしひとの声

いきものとみて突き返す海鼠かな

振り向かずゆけ立春のふくらはぎ

千夜千句(191)

千夜千句(191)

癩人と言ひ争へば陽が溜まる

ハンセンの俳人村越化石へのオマージュ。元の句は、

癩人の相争へり枯木に日

20年以上前、目も鼻も耳もないハンセン病の詩人桜井哲夫をドキュメンタリーに残そうと、草津温泉の療養所に通い詰めたことがあります。結局、自治会の反対にあい、写し取ることはできなかった(その企画者兼監督は、ゴールデン街の最古参「わらじ」の主人。もう亡くなって、お店も閉じましたが、私の師のひとり

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千夜千句(181〜190)

千夜千句(181〜190)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年2月1〜2日

寒月蝕終えて朧の地に生きて

冬日向きものの中にきみを容れ

太き薪の火を頬張りて世を問ひつ

虎落笛どこからどこに線引くや

疎まれてやっと一息節替わり

氷柱下腿たたまれしカマドウマ

逆さまに曲がる膝あり冬の虫

冬ごもり海星のごとき手の人と

薪くべて世情を問はぬ爪の先

凍てるみち芭蕉憎みし烏が歩く

千夜千句(171〜180)

千夜千句(171〜180)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年1月20〜30日

千遍の咳百篇の生きる意味

半身を雪に埋めて寝釈迦かな

凍てる道往くや無心に一心に

訳知るや冬の海月は箱の中

寒垢離の何か云ふただ何か云ふ

髭剃れば鏡の女が凍ててゐる

街凍てて月夜に闇夜交差する

道の雪砦のごとく押し積まれ

ハワイ雨季やたらに虹の跨ぐ様

ハワイ涼し歌の航路は船の路

千夜千句(00161~00170)

千夜千句(00161~00170)

カードゲーム『俳聖』出版記念

2018年1月9日

鮟鱇の掻っ切られては憮然たる

真っ平らの空港より発つ冬の雲

懐手して我が芯に触れゐたる

噴水の人魚ずぶ濡れ冬薔薇

眼差しに真向かひて立つ野水仙

ワイキキをどう詠めというのだ俳句よ

夜話の三つ同時に五人なのに

胸なでる蟹海中にいてくれて

文鎮の地を押すやうに海鼠かな

雪の街口紅薄くして出掛け

千夜千句(00151~0160)

千夜千句(00151~0160)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月17日

年功のごとく羽織りしショールかな

マフラーの結びとともに君嫁けり

カーディガンとつっかけの女銀座流

セーターの薄くて温し月の宿

我の強き膝小僧のせるブーツかな

不祝儀の障子ひっつれてゐて哀し

絵襖のつまらぬ柄によく眠れ

炬燵出て自画像を描く月夜哉

冬うらら自我あるがごと外出し

氷柱折る少年の手の白きこと

千夜千句(00141~0150)

千夜千句(00141~0150)

カードゲーム『俳聖』出版記念 
2018年1月15日

薄氷この不確かな男坂

厚氷この確かなる女坂

虎落笛生きて逡巡せしものに

計すでに見失ひしや小正月

冬入日とっとと仕舞って酔ひませう

寒晴やスマホのあたる耳硬し

降りる人の背のまるまりて冬の駅

地下にゆく階段さへも冬日和

雪原の一灯そこに無なるもの

雲に消え雲にのる山北颪

千夜千句(0131~0140)

千夜千句(0131~0140)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月14日

再会を祝ふ年ごろ鷹渡る

講評を交わす流儀やべったら市

酒はわがライナーノーツ冬銀河

抱きし子に背の寒月を教へられ

亡き人の形(なり)に籐椅子日脚伸ぶ

母は子を子は母を捨て冬大河

カフェオレの薄きに雪見店の隅

朴落葉たしかに造る森の底

石蕗の花夕闇までを佇めり

赤ん坊は舌のみ自在年明ける

千夜千句(0121~0130)

千夜千句(0121~0130)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月13日

死化粧は離れゆくため雪の寺

冬牡丹是非問ひたがる血の集ひ

葬了へて母屋に冬陽深く入る

冬苺押され傷みて甘くなり

すきま風見知らぬ風の存分に

寒雀つつと跳ねまたつつと跳ね

鮟鱇の斬られてなおもブッ細工

験らしや声出し神籤読まれゐて

手袋すればむすんでひらいてなぜかやる

買ひものを終へて勇むや福袋

千夜千句(0111~0120)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月12日

旋回の輪を広げては鷹渡る

森の縁ひとをおそれよぎんぎつね

水槽や物体の鶴立たしめる

うさぎに名つけるなといふ杣の肩

梟の哲学聞けず浅き森

大平原たまに動けば鶴ならむ

子のほかは旨くもなしに鱈真白

鰤しゃぶの奉行つとめて秒単位

河豚肝溶くここで死んでもよろしおま

ミソ少な捕まる蟹はバカだから

千夜千句(0101~0110)

千夜千句(0101~0110)

カードゲーム『俳聖』出版記念 

2018年1月11日

降る雪や棺の柄を論ひ

狐火もあるいとなみとみてうれし

軒氷柱しのんで折りし朝の月

マント羽織り面接にゆく無頼かな

JKのマフラーぐるぐる顔半分

冬星座アレ継母といふヤンキー

今生の別れなぞなし川凍る

不在とは生き別れなり薄氷

雁田山根雪を待って板の上

人の妻に熱燗酌ます句会かな