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生活の安定と向上のために

採用の部署を兼任するようになってから、かつてやっていたような新規学卒者の面接を再び担当することとなりました。

ご時世的に今はまだまだオンライン形式の面談が多いですが、複数の企業の面接を受ける学生さん側からすると、かえってその方が便利なのかもしれませんね。

ただ、これは会議でもそうなのですが、やはり画面越しよりも直接お会いしてお話させていただいた方が、お互いの距離感を縮めやすいような気がするというのはアナログ派の勝手な思い込みなのでしょうか。

自分が学生の時を思い出すと分かるのですが、大学に3年ちょっと通っただけで「将来はこれをやりたい」なんていう想いが強く湧き出すなんてことは先ず無かったですし、とにかく右も左も分からないまま就職活動というのは始まったものです。

だからといって、今の学生さんたちにその想いがないかというとそうではなく、中には物凄くしっかりと将来を見据えて活動されている方もいらっしゃったりします。

ただ、前述したように、何となく「人と関わる仕事をしたい」とか「人に役立つ仕事をしたい」という、実際にはどのような業界にも当てはまってしまうような志望理由で、まずは広く浅く様々な業界を見てみようという学生さんも多くいらっしゃいます。

それでも今は就職氷河期の時と違って、新卒の就職先は引く手あまたです。

企業が新卒を選ぶのではなく、企業は新卒に選ばれる側になっています。

複数社受けていらっしゃる学生さんに尋ねると、すでにいくつも内定をもらっているという方ばかり。

たまに、学生さんの方から「何を基準に企業を選んだらいいのか」と訊かれることがありますが、申し訳ないのが私は今いる会社しか受けたことがなく、今いる会社のことしか知らないのです。

ただ、長年この業界に携わる人間として、「あくまでもこの業界に限っての話であれば」という枕詞をつけて、私の見解はお伝えするようにしています。

私がお伝えするのは大きく分けてふたつ。

ひとつは、この業界で長く続けようというのであれば、なるべく大きな会社を選んだ方がいいかもしれないということ。

そして、もうひとつはどんなサービスをしているかよりも、どのような考え方があってそのサービスをしているのかという視点で見ていった方がいいと思うということ。

まずは会社の規模感についてですが、特に組織の大小は関係なく、良い介護会社というのは国内に沢山あります。

お客様がお元気になるような取り組みを沢山して、施設内にはいつも活気があり、地域までをも巻き込んで常にお客様やスタッフが集まるような仕組みというか良い循環が成立している組織。

ただ、こうして得られる仕事のやり甲斐や精神的満足感だけで果たして何年も勤務を続けられるものなのかどうかという危惧はあります。

自分ひとりだけであれば、それでもいいのかもしれませんが、例えば扶養する家族が増えたりして今よりも金銭面で負担が増えた場合。

住む場所が広くなれば家賃も増えますし、養う人数が増えればその分生活費も増えます。親の介護なども始まってそちらの負担も増えるかもしれません。

それでも同じ立場で働くのであれば、単純に仕事の量を増やしてみる。例えば夜勤の回数を増やしてみる。残業時間が増えるような働き方をしてみる。

ただ、これには法律の壁がありますし、昔と違って会社側もコンプライアンス違反にならないようピリピリしています。

それで副業を考えてみる。ところが、これも企業によって認めているところとそうでないところがありますし、限られた時間の中で休みの時間を削って働いても、体力の方にも限りがありますし、その体力だって加齢とともに削られていきます。

自分自身と自分が大切にしている人たちのために求めるものは何なのか。

多くの人が求めるのは、「生活の安定と向上」と言われています。

一定の労働の対価として得られるのは一定の金銭的満足ですが、それは一定であり「向上」の要素はありません。

ここに小さな組織と大きな組織の差が出ます。

中国の孟子の格言に、「恒産なければ因って恒心なし」というものがあります。

「夢を夢物語のままで終わらせたくなければ、それを実現させるためには手元に必要なだけの財産が必要である」ということで、これは企業にも個人にも当てはまるものです。

自分の将来のために、自分の大切な人たちのために今よりも労働の対価を求めるのであれば、今より違った役職や役割を担ってみるのが一番早いと思うのですが、果たして自分が選んだ企業内での出世(向上)に現実味はあるのかどうか。

その組織内で求められる役職者の数は何人なのか。この先の事業展開はあるのか。それによって求められる役職者の枠は将来増えるのか。

それらがいわば「伸びしろ」であり、事業展望がないのであればそこで「頭打ち」です。

なので、同じ業界で就職先を探すのであれば、規模感というのはひとつの基準だと思うとお伝えしています。

その上で、その組織が「なんのために」その事業を運営しているのか、その考え方が社員の誰もが見ることができる形で明文化されているかどうかというのも、ひとつの選考基準ではないかとお伝えしています。

私たちのようなサービスの仕事というのは、人を介するわけですから、結局は何をするのかよりも誰がするのかが重要であって、そのスタッフの言動の基準となるのは、つまるところその会社の考え方次第だと思うからです。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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