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面接官は会社の顔—不当な面接態度がもたらす企業のリスク/御社の面接官は本当に大丈夫?

最近、家内が食品系の企業にパート従業員として応募した際の面接で、びっくりする対応を受けて帰ってきました。家内は長いブランクを持つ専業主婦で、趣味で取得してきた食に関する数々の資格を履歴書に記載して面接に臨んだ際の実話です。

その会社の面接官が上から目線で、

「そんな資格をいくら並べても何の意味もない」
「子どももいないのになぜ仕事をしないできたの?」
「ブランクがあるから難しいのわかるよね?」

といった対応をされたそうです。

言葉遣いも全くダメですし、ハラスメントに抵触するような言動を含んでいて完全にアウトです。万一そんな面接対応を録音でもされていて、SNSで拡散でもされたらその会社は終わると思います。

今回は、このエピソードを通じて、面接官の態度が企業にどのようなリスクをもたらすかについて考察します。

1. 面接官の態度が企業のイメージを決定づける

面接官は会社の顔であり、応募者にとって最初の接点です。面接官が無礼だったり、偏見を持っていたりする場合、その態度が企業の全体像として伝わります。

応募者は、面接時の対応を通じてその企業の価値観や職場環境を感じ取り、そこに対する印象を決めます。したがって、面接官の態度が悪いと、企業のイメージやブランドに悪影響を及ぼすことになります。

2. 不当な面接態度が企業に与えるリスク

●採用の質の低下
不適切な態度を取る面接官は、真剣に応募者の能力や適性を評価することなく、主観や偏見に基づいた判断を下す可能性があります。その結果、優秀な人材を見逃すことになり、企業の成長や競争力に影響を及ぼすことがあります。

企業イメージの棄損
ネガティブな面接体験が口コミやSNSで広がると、企業の評判に大きなダメージを与えます。良い人材が応募を避けるようになり、人材確保が困難になる可能性もあります。特に口コミの広がりは脅威だと思った方がいいです。

法的リスクの増加
面接中の不当な言動や差別的な発言は、法的リスクを伴う場合があります。応募者が不適切な扱いを受けた場合、労働基準監督署への訴えや法的措置が取られる可能性があり、これが企業に大きな負担となることもあります。

さらに言えば、世の中、どこで誰がどう繋がっているのかわかりません。一介の主婦が、応募した企業の重要な取引先の社長と親しい間柄かもしれません。融資している銀行の担当者と知り合いかもしれませんし、SNSで影響力がある人かもしれません。思慮が足りないのは怖いものです。

3. 企業文化の問題

面接官の態度は、その企業文化をそのまま反映していると言って差支えないでしょう。不穏当な面接を行っている会社なのですから、既存の社員に対しても内部でも同様の態度で接している可能性が高く、働く環境が劣悪であったり、従業員の声が軽視されているかもしれません。面接官は最悪だけど、会社はいい会社とはあまり聞きません。

こうした企業文化は、社員のモチベーションや生産性に悪影響を及ぼすことがあります。一事が万事で、年中求人募集している会社は推して知るべしなのです。

面接官の態度や企業の採用プロセスは、企業の顔としての行動であり、企業イメージを決定づける重要な要素です。面接時に不当な扱いを受けた経験は、企業のリスクや問題点を浮き彫りにすることがあります。

企業は採用プロセスを見直し、面接官を徹底的に教育し、より公平で慎重な対応を心がけるべきでしょう。また、応募者としても、自分に合った職場を見つけるために、面接時の対応や企業文化に敏感になる必要があるでしょう。もっとも今どきは多くの求職者は企業の口コミサイトを利用していると思われます。

世間では人手不足が長らく課題と言われてますが、こんな面接しかできない会社であれば誰も応募もしないでしょうし、優秀な人材など採用できるはずもありません。

応募者が多数なら書類選考をすればいいですし、不適切な面接を行うレベルなのに全員と面接を行う理由は何なのか聞いてみたいです。面接官、応募者双方にとって時間の無駄です。

面接官としての当然の姿勢—傾聴と尊重がもたらす採用活動

私自身、会社員時代は長年にわたり面接官をしていました。面接対応してきた数は軽く数百名に及びます。そうした経験を踏まえて言うと、面接での最も重要な要素の一つは「傾聴」であると強く感じています。

面接の場で確認しておきたいことは山ほどありますから質問も相応にしますが、基本は応募者の話をじっくり聴くことです。

その結果、職務経験や人柄、条件等といった諸要素を総合的に判断して採否を冷静に決定しますが、応募者の話をしっかり聞き、その経験や考え方を尊重する姿勢は、企業にとっても、応募者にとっても当然だと思っています。

●傾聴の重要性
面接においては、応募者の話をじっくりと聞き、その経験や考え方を理解しようとする姿勢が必要です。傾聴することで、応募者のスキルや適性を正確に把握することができ、自社のニーズに最適な人材を見つけることが可能になります。また、応募者自身も尊重されていると感じることで、面接の場でリラックスし、実力を発揮しやすくなります。

● 応募者を否定しない態度
面接中に応募者の経験や考え方を否定したり揶揄したりすることは、決して望ましい態度ではありません。こうした態度は応募者の自信を失わせ、企業に対する悪印象を持たせる原因になります。面接官としては、応募者の話を真摯に受け止め、不必要な発言は控えるべきです。

●企業のイメージ向上に寄与
面接官が尊重と傾聴の姿勢を持つことで、企業のイメージは向上します。良い面接体験を提供することで、不採用になったとしても応募者はその企業に対して好印象を持ち、企業のブランド価値が高まります。さらに、応募者の中にはその経験を友人、知人などと共有することで、企業のポジティブなイメージが広まる場合もあります。

● 長期的なメリット
良い面接プロセスは長期的に見て企業の成長に貢献します。企業は優秀な人材を確保することができ、結果として企業の成長に繋がるからです。また応募者がポジティブな面接体験を持つことで、入社後の定着率も高まる傾向があります。

●応募に対する感謝の姿勢
採用業務を経験された方ならよくわかると思いますが、採用は大変な工数を伴う事業活動です。どんな人材を、いつまでに、何人、どんなメッセージを打ち出すか悩ましく、かつ予算内で行わなければならないプレッシャーもあります。

そんな悩ましい過程で、そもそも応募者の一定の母数を確保しなければなりませんので、応募してくれたこと自体に常識的な採用担当なら感謝の気持ちを抱くのではないでしょうか。少なくとも私自身は毎回感謝の気持ちが湧いていました。

応募してくれたことに感謝することは、そもそも企業側の基本的なマナーであり、面接のプロセスにおいても非常に重要だと思います。応募者が自分の貴重な時間を割いて、自社のために努力してくれていることを認識し、その努力に対して感謝の気持ちを示すことが、良い面接を行う大前提です。

さて、ここまでお読みになられてどんな感想をお持ちになられたでしょうか。

採用を担当したことがない方でも、自身が受けた面接のことを思い出し、面接で受けた印象通りの会社だったと思われるかもしれませんし、採用担当の方は背筋が伸びたのではないでしょうか。また、現場に面接を丸投げしている経営陣の方は危機感を感じたのではないでしょうか。

応募者はある意味、お客様みたいな存在です。

応募者が殺到する引く手あまたの大企業であろうが、応募が少ない中小零細企業であろうが、面接という活動はその会社の成長や存続に関わる一大事という認識で行う必要があります。

密室で行われている自社の面接官が日頃どんな態度で面接を行っているかを把握する必要がありますし、会社の顔として人前に出すなら適切な人選を行い、トレーニングも必要でしょう。

人材育成は、そもそも良い採用を行うことが前提ですから、残念ながら、面接について無頓着な会社に優れた人材は応募しませんし、人材育成などもっとできません。

人手不足と言われて久しいですが、応募者が少ない、良い人材を採用できないと嘆く前に自社の採用、面接のプロセスを今一度見直した方がいい会社も世の中には多いかと思います。

横柄な企業によって世の中に腐るほどある不愉快な体験やミスマッチが少しでも減ることを祈ります。

面接で落ち込んだ家内から面接でのやり取りを聞いて、私がかけた言葉は、
「そんな会社に採用されなくて本当によかったね!」です。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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