最北の鉄路・ファーノース線4時間の旅&最北の駅サーソー(初めての海外一人旅でイギリスを縦断した-9)
こんにちは。ゲンキです。
イギリス旅行記第9回は、国内最北の鉄道路線ファーノース線(Far North Line)の旅と車窓、そしてイギリス最北端の駅・サーソー(Thurso) 編をお届けします。
~旅の概要~
鉄道が好きな僕は、鉄道の祖国であるイギリスを旅することにした。「果て」の景色を求めて本土最北端の駅「サーソー(Thurso)」から本土最南端の駅「ペンザンス(Penzance)」を目指す旅である。遠く離れた異国の地で、僕は一体何に出会うのだろうか。(2023年3月実施)
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13:50 Inverness Station
スコットランド北部の地方都市インヴァネス。その玄関口であるインヴァネス駅から、イギリスの鉄道最北端「サーソー(Thurso)」へ向かう列車がまもなく出発する。既に列車はホームに入っており、エンジンの野太い声を高天井にガラガラと反響させながら待機している。
ここからサーソー駅、およびウィック駅まで伸びる路線の名はファーノース線(Far North Line)。列車運行はスコットランドの鉄道会社スコットレイル(ScotRail)が担当する。
起点となるインヴァネス駅すらロンドンから直線距離で700kmほど離れており、まさに「遥か北にある路線」という名がふさわしい。ファーノース線を走破する列車は一日たったの4往復しかなく、これから乗る列車がインヴァネス発の3本目、その次がもう最終便である。
ちなみにファーノース線では、ウィック行き・インヴァネス行きともに全ての列車が一度サーソーに寄り道するようにして運転される。最北端のサーソー駅が終点かと思いきや、運行上の扱いは「途中駅」と変わらないのが意外なところだ。
車内には2人掛けのシートと4人向かい合わせのテーブル席が並んでいて、窓際には携帯・PC用のUSB電源も付いている。大荷物のバックパックを鉄パイプの荷物棚に載せて盗難防止のワイヤーロックをかけ、大きな窓からの眺めがいい4人用テーブル席を確保。おそらくこの先で乗客が大勢乗ってくることもないので、テーブル席を独り占めしても迷惑にはならないだろう(実際最後まで空いていた)。
14:00 Far North Line
14時ちょうど、列車はインヴァネス駅を発車。目的地のサーソーまで4時間近い長旅が始まる。
ネッシーで有名なネス湖からインヴァネス湾に注ぐネス川を鉄橋で渡り、郊外の住宅街を駆け抜けていく。
しばらくすると右手にビューリー湾(Beauly Firth)と対岸の陸地が見え、線路沿いにはずっと干潟が続く。ビューリー湾は長さ10kmとかなり切り込みの深い入江で、主に氷河の浸食作用によって形成された地形である。温暖な日本ではほとんど見られない光景だ。
さて、お腹が空いてきたのでそろそろご飯にしよう。今日の昼食はインヴァネスで買ったチーズマカロニパイと、昨晩ロンドンの駅で買った海老マヨサンド。パイはしっかりチーズの味がするふわふわ食感、しかもたったの£2(333円)と超お手頃価格だった。海老マヨサンドには名前の通りエビがたっぷり入っていて、美味しいのはもちろんプルプルとしていて噛み応えがある。かなり気に入った。
ドリンクは同じくロンドンで買ったオレンジ味のFANTA。ところでイギリスのFANTAってなんでこんな不味そうな色してんだろう。味は普通に美味しいんだが、ボトルがなぜか濁った灰色なのでめっちゃ不健康そうに見える。
ビューリー湾を過ぎたあと一度内陸に入り、それから再び別の湾が見えるようになった。今度の入江はクロマティ湾(Cromarty Firth)である。
ところで先ほどから「入江」とか「湾」とかぼんやりした言い方をしているが、それはこの地形を的確に定義できる日本語がないからだ。クロマティ湾はここに注ぐコノン川の「河口」とも言うことができ、はたまためちゃくちゃ幅の広い「川」でもある。この地域ではこういった沿岸地形をまとめて「Firth」と呼ぶそうだ。
途中、湾を横断するようにクロマティ橋が架けられている。緩やかにカーブを描くラインがとても美しい。
遠くに油田基地のようなものが見えてきた。このあたりの海は「北海油田」と呼ばれるヨーロッパ有数の石油産地なので、おそらくそれ関連の施設だろう。
14時54分、インヴァーゴードン(Invergordon)駅に到着。このあたりでは比較的大きな町だ。駅舎の壁には乗客や駅員たちの楽しげな絵が描かれている。屋根を支える柱にも植物柄の装飾があしらわれ、絵本のようなメルヘンチックな世界観を醸し出していた。
インヴァーゴードンは始発駅のインヴァネス(Inverness)と地名の響きが似ているが、調べてみたところ「Inver」はスコットランド・ゲール語に由来する「河口」を意味する言葉らしい。たとえばインヴァネスは「Inver(河口)+Ness(ネス川)」で「ネス川の河口」といった意味になるようだ。スコットレイルでは、駅名標に英語とスコットランド・ゲール語を併記しているので2つを見比べてみると面白い。
15時12分、テイン(Tain)駅に停車。ハットを被った旅人らしき男性が反対のホームで列車を待っていた。彼は仙人のような浮世離れした雰囲気をまとっており、しかし暇そうに意味もなく行ったり来たりする様子にはなぜか愛着も湧いた。彼はこんな田舎の小さな駅から、一体どんな用事でどこへと行くのだろうか。僕には知る由もない。
そういえばちょうどおやつの時間だ。昨晩ロンドンで買ったオレオ味の板チョコ(£2.29、379円)があるのでそれを食べる。かなりずっしりと重さのあるチョコで、手で持ってもかなり分厚い。袋を開けて一口かじると、予想通り容赦ない甘さの嵐が口の中にチョコとクリームとクッキーの暴風雨を降らせた。本当に激甘なので、口が寂しくなるたびに少しずつちょくちょく食べていくことにした。
列車内でどのように過ごすか、というのはなかなか重要な問題だ。乗車時間が長ければなおさらである。僕は車窓を眺めながら音楽を聴いたり、写真を撮ったり、地図を見ながら風景と照らし合わせたり、そして車内や沿線風景をスケッチしていることが多い。どうしようもなく疲れていたら寝る。
今回僕は脚を伸ばして広いテーブルにスケッチブックと筆記用具、カメラ、ジュースとお菓子を広げ、4人席を贅沢に独り占めして列車に揺られながら絵を描いている。なんとも満ち足りた気分になった。
列車はいつの間にか内陸に入っており、開けた牧場の間を走っていく。これといって見どころもなく、強いて言うなら牛や羊が見えたときに「牛だ」「羊だ」と思う程度の車窓が続く。
16時9分、ゴルスピー(Golspie)駅に到着。久しぶりに町を見た気がする。ここでは1人の降車があった。インヴァネスを出てから2時間が経過したが、サーソーまではまだあと1時間半ほどかかる。やっぱり遠い。
ゴルスピーを出ると、久々に海沿いの区間だ。北海を右手に眺めながら、列車はエンジンを唸らせて高速で突き進む。
ブローラを出てしばらくすると、列車は波打ち際にかなり近いところを走るようになった。このあたりがファーノース線で最も迫力のあるオーシャンビューを眺められるところだろう。
16時半過ぎ、ヘルムズデール(Helmsdale)駅に着く直前に列車は海岸から離れ、大きく左にカーブして内陸へと入っていく。ファーノース線で海が見られる区間はここまで。この先サーソー・ウィックまではずっと内陸を走っていく。
16時57分、キンブレース(Kinbrace)駅に到着。そういえばこの駅に着く前、自動放送で「This is a "request stop".」と案内されていた。名前から察するに、列車に乗りたい人が呼び出しボタンで事前に運転士に「リクエスト」を出しておくことで、列車が停車してあげるという仕組みのようだ。じゃあ降りる時はどうするんだろう…と思ったが、たぶん車掌さんにその旨を伝えておけばいいのだろう。
というか一日8本しか列車が来ない無人駅にも電光掲示板が設置されているのがすごい。
驚いた。キンブレース駅を出ると、なんと線路のすぐ横にシカの群れがいた。ほとんどがオスのようで、立派なツノを持って雪の上にたたずむ彼らはとてもかっこよかった。北海道と同じく、寒い場所では線路沿いによく鹿が出没するらしい。
いよいよあたり一面「何もない」状態になってきた。線路沿いの柵ぐらいしか人工物がなく、建物どころか木すら一本も立っていないのはあまりに不思議な光景だ。雪の積もった荒野がどこまでも広がり、広がり、広がっているだけ。「果て」が徐々に近づいている。
17時35分、列車は大きなクレーンのある駅に停車。
この駅の名はジョージマス・ジャンクション(Georgemas Junction)。サーソー方面とウィック方面の二手に路線が分かれる分岐駅である。列車はこれからサーソー方面に向かうが、ここからサーソーまでの間には途中駅がない。つまりこれが最後の停車駅だ。最北端への長い長い道のりもあと一息。
17時40分、進行方向を変え、折り返すようにしてジョージマス・ジャンクション駅を発車。サーソーへ向かう線路に入り、さらに北に向かって進む。
自動放送がかかった。
「The next stop is Thurso.」
サーソー到着まではあと10分弱。列車は最後まで速度を緩めず、実に頼もしい走りを見せてくれた。僕もそろそろ降車の準備をしておこう。
17:50 Thurso Station
列車はゆっくりとホームに停車。ドアが開き、ホームに降り立つ。行き止まり式の小さな駅に、ディーゼルカーのエンジン音がうるさく響いている。
インヴァネスから3時間50分、ついにイギリスの鉄道最北端・サーソー(Thurso)駅に到着した。ここがこの旅一つ目の目的地。いやー長かった。やはりこれだけ遠くまで来ると達成感が湧き上がる。
17時53分、乗ってきた列車は終点ウィックに向けてさっさと出発していった。せっかく最北端だというのにあまりにもあっけなく出ていくものだから、情のないお別れだなあと思ってしまった。
列車が去ると、駅は驚くほど静かになった。僕と一緒にサーソーで降りた人々はみんなもうホームを後にしている。どうやら観光客は僕一人だけらしい。
サーソー駅はホームが一面だけの簡素な行き止まり式の駅。時間帯によっては駅員がいるとのこと。線路は何本か並んでいるものの、基本的にはホームに面した一本のみしか使われていない。
この旅の一年前に訪れた日本最北端の駅・稚内(わっかない)ではあちこちに記念碑や看板が設置されており、「よっしゃー着いたー!」と旅の達成感を大いに盛り上げてくれた。僕はサーソー駅にもそういう演出を期待していたのである。
しかしサーソー駅にはそういう記念碑的なものが一切無い。
しばらく探してみたが何も見つからなかった。強いて言うなら「Welcome to Thurso」とは書いてあるが、別に最北端らしさは感じられない。鉄道の祖国でありながら「路線の果て」には大して関心なさげのが少々意外なところだ。
もう一つ気になるのは、線路の端っこの部分だけ駅舎と一体の屋根付きになっていることだ。この部分には列車は入らないようだが、一体何があるのか。
これより北に伸びる線路はない。古いレールで作られた車止めと赤いランプが設置され、その奥の壁には蒸気機関車の絵が描かれている。薄暗くて地味ではあるが、これはこれで味があって良い。
2両編成には過剰すぎる長さのホームを見るに、昔は今よりも両数の多い列車が走っていたのだろう。その当時はこの車止めギリギリまで列車が頭を突っ込んでいたに違いない。
さて、時刻は18時過ぎ。
もうじき夜になるので、今夜の宿へ向かうことにしよう。
18:15 Sandra’s Backpackers Hostel
駅から徒歩数分、駅前の道をひたすら直進して到着。こちらが本日の宿、サンドラズ・バックパッカーズホステル。サーソー最安、ドミトリー形式(個室もあり)のホステルである。今夜の宿泊費は約£17、日本円にしてたったの2900円。めちゃくちゃありがたい。
早速中に入ろうとするも、レセプションの扉が閉まっている。中にも誰もいない。
ふと扉に貼ってある紙を見ると、「御用の方はこちらに電話をかけてください」と電話番号が書かれてあった。半信半疑ながらその番号に電話をかけると、「Hello?」とおじさんの声が聞こえた。「チェックインしたいんですが…」と伝えると間もなくさっきのおじさんが建物の横からやって来て、レセプションの扉を開けてチェックインの手続きをしてくれた。
その後僕の泊まる部屋へと案内してもらい、鍵の開け方、施設、サービスなどの説明を受けた。もちろん英語だが、おじさんは僕のリスニング力でも90%程度理解できるようなわかりやすい説明をしてくれた。服の洗濯をしてもらえるかどうか質問したところ、「夜のうちに袋に入れて出してくれれば翌朝には乾かして置いておくよ」とのこと。イギリスに来て3日目、ようやく服を洗えそうだ。
こちらが今晩のお部屋。2段ベッド×2台の4人部屋で、僕はその中のベッド一つを使うことができる。ドア近くのベッドには荷物が既に置かれており、僕ともう一人の相部屋になるようだ。
真っ暗になってしまう前に、ちょっと海まで散歩することにしよう。メインバッグを置いて、外付けの階段を降りて再び道路に出る。
宿の真向かいにはイギリス名物フィッシュ&チップスのお店があった。しかも店内にはまあまあお客さんが入っている。よし、今夜の夜ご飯はここで決まりだ。
住宅街をしばらく歩き、海辺にやって来た。もう夕日は沈んで辺りは青く染まり、街を照らす役目が太陽から電灯にバトンタッチされている最中だ。
当然ながら、海は北に開けている。しかし思い返してみれば、昨日の夕方は遥か890km南のブライトンで南を向いて海を眺めていたのだ。たった一日のうちにイギリスの南と北、それぞれの波打ち際で逆方向を向いて海を眺めていることが我ながら信じられない。飛行機ならともかく、ブライトンからサーソーまで列車しか使っていないので一層不思議な感覚だ。
岸壁から階段を降りてわかったが、サーソーの砂浜はとても平べったい。地面に傾斜がほとんどなく、一度押し寄せてきた波はシュワシュワと泡を立てながらずーっと内陸の方まで迫り来る。やがて泡だけを残し、水は砂に溶けていく。それが数十秒おきに繰り返される。
遠くから聞こえる低音の海鳴り、濡れた浜に反射する町の光、黒く沈んでいく水面と未だ白が際立つ波頭。しばらくしゃがみ込んで眺めていた。
気づけば19時を回っていた。もう海もほとんど見えなくなってきたので宿に戻ることにする。
宿の部屋に戻ると、先ほどはいなかったルームメイトがベッドで寛いでいた。初めまして、と自己紹介する。
彼はアフリカ南西部の国、ナミビアから来たとのこと。名前は確か「サバナ」くんだったと思う。聞きなれない名前だったのでうろ覚えである。僕より少し年上の大柄なお兄さんだった。
彼は気さくな人で、初対面ながらすぐに仲良くなれた。向かいのフィッシュ&チップス屋が何時までやってるか知ってる?と聞くと、「たぶん9時までやってるよ」と教えてくれたので、ひとまずシャワーを浴びることにした。
20時頃にシャワーから上がり、宿のおじさんに言われた場所に洗濯物を置いておく。いざ夜ご飯!!と意気込んで道に出ると、向かいのフィッシュ&チップス屋はなんと既に店仕舞いしていた。
どうやらサバナくん情報は間違いで、20時閉店だったらしい。ちょうど数分前に今日の営業を終了してしまったようだ。舌と胃が完全にフィッシュ&チップスモードになっていたため非常に残念だが、仕方ないので他の店を探す。
駅の方に向かって歩いているとケバブ屋さんを見つけた。看板には「ケバブ、バーガー、ピザ」。もともとファストフードを食べるつもりだったし、今夜はここでご飯を買うことにしよう。
お店に入ってメニュー表を見たがよくわからなかったので適当に注文。ケバブ屋のおじさんに「どこから来たの?」と聞かれて「日本からです!」と答えると、やはり珍客なのか「日本!?」とたいそう驚かれた。数分後に頼んだものが揃い、「ありがとう」と言って店を出る。
宿に戻って共用のキッチン・ダイニングルームに行くと、さっきのサバナくんがパソコンで作業をしていた。「向かいのフィッシュ&チップス屋閉まってたわ」と僕が言うと、彼は「マジ!?ごめん!!」と申し訳なさそうに謝った。「代わりにケバブ買ってきたから気にせんでええよ」と声をかけて、彼の隣のテーブル席に腰掛ける。
さて、今度こそ夜ご飯だ。袋からいくつかのパックを取り出して蓋を開くと…
予想以上に大ボリュームだった。肉もポテトも、僕の掌よりデカい容器にどっさりと盛られている。
お代は13ポンド(2167円)。ここ数日イギリスの物価の高さを実感していたのでその感覚で注文したら普通にえげつない量が来た。とはいえめちゃくちゃ美味しそう。いただきます。
ケバブはトルコ発祥の肉料理。日本でも屋台などで串刺しにされた回転する肉塊をたまに目にするが、あれもその一種である。この肉は何なのだろう。羊・牛・鶏などの肉がケバブに使われるらしいが、やっぱりスコットランドだと羊だろうか。とてもジューシーなお肉だった。
チーズぶっかけポテトもめっちゃ美味しい。マクドで一時期売られていた「クラシックフライ」というチーズのかかったフライドポテトが大好きだったのだが、それのパワーアップ版って感じだ。誰もがこういうのを腹一杯食べることに一度は憧れるのではないだろうか。今この文章を書きながら自分でも腹が減ってきた。
しばらくガツガツと高カロリーな料理を食らっていたが、流石に僕の胃袋も限界に近づいてきた。そこでサバナくんに「ちょっと多すぎたから食べる?」と言うと「いいの!?」と嬉しそうに貰ってくれた。
ケバブとポテトを食べ終わったサバナくんは突然「お礼にビール買って来てあげるよ」と部屋を出ていき、数分後に缶ビールを2本持って帰ってきた。彼はそのうちの1本を僕にくれたのである。なんという親切心…!!!
食後に美味いビールを飲みながら、サバナくんといろいろ話をした。
ナミビアでは国内の言語が多すぎて共通言語が英語であるという話。
コロナの期間中は海外に出られなかったが、フォークランドとイギリスにだけは国際線が出ていた話(ナミビアはイギリス連邦加盟国、フォークランドはイギリス領)。
その飛行機に乗ってフォークランドに行き、そこで見た自然風景がとても綺麗だった話などを聞かせてくれた。
ところで、僕は彼との会話内容を実は70%ぐらいしか聴き取れていない。
彼がいつイギリスに来たのか、何の仕事をしているかなどは僕の英語力が足りずよくわからなかった。聴き取れなかったなら恥をかいてでも質問し直せばよかった、と今になって後悔しているところである。
「日本にもいつか行きたいね」と彼は言っていた。
ナミビア、イギリス、日本…それぞれ全く異なる文化を持つ遠く離れた国々だが、今夜はそれが一つに繋がったような気がした。
お酒を飲んだら眠くなってきた。サバナくんもそろそろベッドに入るようだ。時刻は22時。明日も朝早くから出かける予定があるので、ゆっくり休んでおこう。
ベッドはコイルでボヨンボヨンしている。寝心地が悪いわけではなく、むしろ不思議な柔らかさだった。この日も疲れていた僕は、5分と経たずすぐに眠りに落ちたのだった。
つづく
というわけで、イギリス旅行記第9回は以上になります。
今回のあとがきでは、旅行記に書き入れるタイミングを失ってしまった小ネタを2つほど消化しておきたいと思います。
・イギリスの列車案内ワード「calling」
駅で発車標を見ていると、停車駅一覧の上に「calling at」と表示されているのに気づいた。中学校で習うcallの意味は「呼ぶ」「電話をかける」などだが、イギリスの鉄道案内では「(〜に)停車する」という意味でも使われるらしい。日本では「This train will be stopping at…」といった表現が一般的だが、イギリスでは「This train will be calling at…」となる。
・腕時計と時差
今回の旅では日本で普段使いしている腕時計を着けていった。日本とイギリスの時差は9時間。ロンドンに到着したときイギリス時間に合わせようとつまみをグルグル回してみたが、なぜか全然針が進まない。どうやっても上手くいかず、無理やり時間を合わせるのもめんどくさかったので諦めた。その結果、イギリスにいる間ずっと日本時間の腕時計を見続けることになった。例えばイギリスで夕方に日本時間の腕時計を見て「2時」だったら、+3時間して午前・午後を逆転すればイギリス時間、すなわち「17時」となる。旅の終盤ではこの計算がちょっと早くできるようになった。だから何ってわけではないが。
次回、第10回は「始まりと終わりの場所」、ジョン・オ・グローツ(John O'groats)編をお届けします。お楽しみに。
それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
↓第10回はこちら
(当記事で使用した地図画像は、OpenStreetMapより引用しております)
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