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我が読書迷走微録

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迷走ばかりの我が読書遍歴を微文で紹介する記録。
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#小説

「ノルウェイの森」村上春樹

1987年に刊行された大ベストセラーの長編小説。若かりし頃、妙に性に合わず、それ以来回避してきた作家のひとりだが、あえて再読。青春とは、死と虚無とセックスとともに生きることかも知れない。

「ヰタ・セクスアリス」森鴎外

日本近代文学の文豪による異色作。
軍医、官僚という肩書きを有し、無骨で愚直なイメージの作品群とは裏腹に、赤裸々な性欲生活の作品化は鴎外の多様性を見せつける。

「禁色」三島由紀夫

1951年に発表された三島前期の大傑作。
平和で安穏とした昭和を象徴する登場人物が織りなすストーリーは、驚愕するほどの展開で三島の世界を表出している。令和の世でも必読の作品。

「砂の女」安部公房

日本屈指の世界的小説家の代表作。
ドキュメントとサスペンスの手法による奇想天外な構想と展開は、実存の極限を巧みに表現したカフカ的世界に飲み込まれてゆく。

「狭き門」アンドレ・ジッド

フランス近代文学を代表するノーベル文学賞作家による名作。キリスト教文化のエロスとアガペーに揺れる人間模様を精緻に描いた恋愛小説は奥深い。

「眠れる美女」川端康成

日本初のノーベル文学賞受賞作家による淫靡と退廃の世界は、その本質の一部を垣間見る。
老いてゆく中で芽生える人間の情念とは何か?
それは老いていかなければ辿り着くことはできないのか?

「死者の奢り・飼育」大江健三郎

文学エリートによるフランス文学臭を漂わせた、ノーベル文学賞受賞者の若き日の作品群。
コロナ禍によって世界中に死臭が蔓延する時、生の意味を問いただすために再読する価値がある。 #大江健三郎 #死者の奢り #ノーベル文学賞 #読書 #小説

「存在の耐えられない軽さ」ミラン・クンデラ

冷戦下のチェコ出身亡命小説家が、1984年に
発表した世界的恋愛小説。
1968年、“プラハの春”を題材に政治と哲学と文学が融合したその存在は、この上ない重さで読む者を引き込んでゆく。

「羊と鋼の森」宮下奈都

2015年発表。清透な文体と丹念な人物描写、そして主人公が静謐に悩みながらも、
地道に自らの道を模索する姿に、仕事とは何かまで考えさせられた美作。
学生時代に読んでいたら、別の指針を選び歩んでいたかもしなれい。

「仮面の告白」三島由紀夫

仮面を脱いだ告白なのか?
仮面を被った告白なのか?
大が付くほどの嫌悪を転覆させた代表作。
そこから全著作を読み漁り、我が人生に多大な影響を与えた、武士として自死した謎の文士。

「岬」中上健次

1976年に発表された著者の世界観“路地”が表明された第1作。
その脈打つ文体との濃密な血のしがらみは、にまみれながら「枯木灘」、「地の果て 至上の時」へ続いてゆく。

「ベニスに死す」トーマス・マン

最も敬愛するドイツ文学の巨人が、1912年に発表した中編小説の傑作。
その後ルキノ・ヴィスコンティによって映画化。
死の接近を凌駕する美への陶酔。
コロナ禍における現代において、この傑作の存在は映画版同様に計り知れない。

「マチネの終わりに」平野啓一郎

人間の成熟とはなにか?
未来と過去が逢瀬がする時、現実はどう変貌するのか?
主観としての愛の発芽は、老若男女問わず心の何かを奮い立たせる。
分別のある大人同士が、音楽とジャーナリズムという異なる世界に生きる、洗練された恋愛小説。

「ペスト」アルベール・カミュ

三十余年以上も前に読んだ本が、今如実に現代に生きる我々に突きつける不条理哲学の傑作。
生死の理不尽は、それは神なき時代の証なのか?
それにしても、青春時代に読み尽くし影響を受けまくった思い出の小説のはずが、今になって再読することになるとは…