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読書感想文

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#小説

読書感想 横光利一 機械

読書感想 横光利一 機械

 引き続き横光利一特集です。笑

 横光利一の代表作です。これまたすごい作品だと思いました。

 まず文体が独特です。段落や句読点が極端に少なく、人によってはかなり読みづらいと感じる文章だと思います。

 あらすじとしては、ネームプレート製作所で働く「私」が、一緒に働く同僚の職人からスパイだと疑われたり、また疑ったりして、互いに疑心暗鬼になりながらついには殴り合いに発展し…、みたいな物語です。語り

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読書感想 横光利一 時間

読書感想 横光利一 時間

 横光利一の短編小説です。こんな不思議な小説初めて読みました…。

 この作品は旅芸人一座の12人の男女が共に夜逃げをする物語で、極限状態にある人間の心理や、彼らが不幸に見舞われるたびに起こす行動がかなり細かく描写されています。それにも関わらず、それほど陰湿な印象はなく、むしろユーモアに富んでいて笑える部分があるように思えます。(私には)

 夜逃げの道中互いに疑心暗鬼になったり、急に結束が深まっ

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読書感想 横光利一 碑文

読書感想 横光利一 碑文

 横光利一の短編小説です。青空文庫で読みました。短いのですぐ読めます。
一度読んで心臓を撃ち抜かれてしまい、もうすでに10回くらい読んでます。時々自分は頭がおかしいのではないかと思うことがあります…。

 未曾有の大降雨により都市が滅亡していくさまが淡々と、一人称や三人称ではなく神視点(ってやつ?)で書かれています。とても硬い文章なのに臨場感があって、架空の都市のフィクションとして受け流せない、明

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読書感想 坂東眞砂子 狗神

読書感想 坂東眞砂子 狗神

坂東眞砂子さんの長編ホラー小説です。
2001年に天海祐希さん主演で映画化されています。20年以上前なのか…。
先に映画を見てから原作を読みました。
原作の方が全然面白かったです。

先日までkindleUnlimitedで読み放題になっていたので、うっわ懐かしい〜と思い再読しました。

高知県の山里に住む「犬神筋」の血筋、
坊之宮一族にまつわる物語です。
その集落では表面上は穏やかに暮らしていま

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読書感想 小泉八雲 雪女

読書感想 小泉八雲 雪女

病院の待ち時間に青空文庫で読みました。
田辺隆次さん訳です。

「耳なし芳一」と並んで有名なこちらの作品、今更ですがはじめて読みました。こういうお話だったのか……。ザ!日本昔ばなし〜!ですね。

木こりを生業としている茂作と年季奉公人である18歳の少年巳之吉は、ある大層寒い晩、仕事帰りに大吹雪にあいます。河を渡れないので家に帰れず、船渡り守の小屋で一晩を過ごすことになります。

夜中、巳之吉は白装

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読書感想 夢野久作 いなか、の、じけん

読書感想 夢野久作 いなか、の、じけん

夢野久作の短編集(ショートショート集なのかな?)です。20編の超短編で構成されています。
タイトル通り「田舎の事件」ばかりが書かれています。夢野久作が故郷の九州地方で実際に見聞きした出来事をモチーフにした作品のようです。

青空文庫のおすすめ50に入っていてびっくりしました。

 短いのですぐ読めるのですが、非常に満腹感を得られる作品です。おそるおそる再読したのですが、やっぱりお腹いっぱいです……

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読書感想 梶井基次郎 ある心の風景

読書感想 梶井基次郎 ある心の風景

以前青空文庫で読んで、いいなと思った作品です。
鋭い感覚で「心の風景」を叙情的に描いていています。その中には話の筋などないように思います。町の様子や、そこで出会った人の様子を自己投影している感じなんですかね……。
「視ること、それはもうなにかなのだ。自分の魂の一部分或ひは全部がそれに乗り移ることなのだ」とあります。すごいセリフですね。

主人公、喬(たかし)は悪い病気を女性から得てしまい、陰鬱な気

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読書感想 菊池寛 死者を嗤う

読書感想 菊池寛 死者を嗤う

菊池寛の短編小説です。青空文庫でみかけて読んでみました。短いのですぐに読めます。

 江戸川に女性の溺死死体があがり、橋には野次馬が集まっています。巡査と区役所の人夫が遺体の引き揚げ作業を行っているのですが、なかなか上手くいかず、群衆はそれを好奇の目で見ながら思い思いの言葉を発しています。

 主人公は、死者を笑い者にするその様子を見て
「かつては身なりを気にした女性だったろうに、そこまで侮辱しな

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読書感想 芥川龍之介 死後

読書感想 芥川龍之介 死後

芥川龍之介晩期の掌編です。青空文庫で読みました。
芥川龍之介が見た夢の話のようですが、ツッコミどころが満載です。
なんと、自死したあと、
(幽霊として??)自分の家を訪れているのです。
そんなんだったら死ななきゃいいのに……、と思ってしまいますね。

夢の中で妻は再婚しています。
妻はそのことを芥川龍之介に問い詰められ、いつも夫に叱られた時に見せる、途方に暮れた顔をしながら話します。

妻の様子か

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読書感想 横溝正史 蔵の中、鬼火

読書感想 横溝正史 蔵の中、鬼火

横溝正史の短編集です。
kindleUnlimitedで読み放題になっていたものを読みました。

久しぶりに横溝正史の作品を読みましたが、良いですね〜、読みやすいですね〜。一気読みしてしまいました。素晴らしいです。

金田一耕助シリーズはたくさん映像化されていますが、原作も読んでいる方って意外と少ない気がします。私も有名なタイトルしか読んだことがないのですが、原作の方が面白いですよね。

映画は、

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読書感想 江戸川乱歩 芋虫

読書感想 江戸川乱歩 芋虫

久しぶりに読みましたが、なかなかの問題作ですね。これは現代では絶対に発表できない内容だと思います。実際戦時中には販売禁止になっていたようですし。

当時はそのような意識はなかったにしても、現在では放送使用禁止用語となっている差別的表現が多用されています。

具体的には「不具者」「片輪」といった言葉です。
私が看護師になったばかりの頃は、病院や施設には明治生まれの方もいらっしゃいました。その方達から

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最近読んだ本(志賀直哉、坂口安吾、叶恭子)

最近読んだ本(志賀直哉、坂口安吾、叶恭子)

娘が学校の図書館で借りてきました。志賀直哉の集英社の文庫です。

この中では、「網走まで」「范の犯罪」が良かったですね。以前読んだ文庫(多分岩波文庫かなあ?)に収録されていた夫婦の生活を描いた三部作みたいな短編が素敵だったなと思い出しました。タイトルもなんにも覚えてないんですけども……。

この文庫には13の短編が収録されていますが、ひとつひとつの作品が、個人の好みで評価がはっきり分かれるだろうな

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読書感想 中島敦 山月記 

読書感想 中島敦 山月記 

有名な「山月記」。初めて読みました。
難しかったけど、とても良かったです。
優秀な役人が、役人を辞め詩人になって名声を得ようとしますが、生活は困窮する一方となり、ついにはトラになり果てる話です。
(間違ってたらごめんなさい…)

以前投稿した叉吉直樹さんの書籍
「第二図書係補佐」のなかで「山月記」が紹介されていて、その文章がすごく素敵だったのを覚えています。
叉吉さんが虎になりかけた話です(ホント

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読書感想 中島敦 李陵

読書感想 中島敦 李陵

娘が文庫本を買ってきました。
角川文庫、「李陵、山月記、弟子、名人伝」です。

中学生なのにシブくない……?

娘が文豪に興味をもっているのはどうやら「文豪ストレイドッグス」とやらの影響らしいです。

そして、やはり娘が読むよりも先に私が読んでしまうのでした……。

中島敦、実は初めて読みました。
とても難しかったですが、すごーーく良かったです。読み終わるのにいつもの5倍は時間がかかりましたが。笑

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