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読書感想と本について

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小説の感想と本についてのお話。
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#小説

「海岸通り」 坂崎かおる 感想

「海岸通り」 坂崎かおる 感想

〈 あらすじ 〉

※本文に触れているためネタバレにはご注意下さい。

 「海岸通り」坂崎かおる

 第171回芥川賞候補作。
 とてもよかった…また好みの作家さんに出会えた。

 海辺の老人ホームで派遣清掃員として働くクズミはウガンダからきた新人のマリアに仕事を教えることになる。
 同僚や施設の入居者達、在日外国人によるコミニティなど繊細な問題がある中で時にクスッとしてしまうようなクズミの比喩が

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家父長制アンソロ「父親の死体を棄てにいく」感想

家父長制アンソロ「父親の死体を棄てにいく」感想

家父長制アンソロジー「父親の死体を棄てにいく」

〚 あらすじと感想 〛
家父長制に対するアンチテーゼとして、父親の死体を棄てにいく小説だけを集めた文芸アンソロジー。
あらすじは『おざぶとん』黒田八束さんの通販サイトより引用致しました。以下掲載順です。
※物語にふれているため、未読の方はネタバレにご注意ください。

① Sewing Pieces Together(落山羊さん)
「次のお話を探そう

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ペーパーウェル12感想

ペーパーウェル12感想

 2024年5月24日〜6月2日まで開催された第12回ペーパーウェルが終了しました。

 今回私は、短歌+写真(青空に咲く満開の藤)にて参加させていただきました。たくさんのダウンロードとコンビニでのネットプリントをありがとうございました。

 短編小説、自作品の番外編、本の書評、そして短歌と写真で参加してきましたが、次回はまた戻って何か文章で参加したいなぁと思います。今回の参加作品は折本が多かった

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「黙って喋って」ヒコロヒー 感想

「黙って喋って」ヒコロヒー 感想


 「黙って喋って」 ヒコロヒー

※若干ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください

 思ってた以上にすごくよかった。比喩表現が巧みで、彼女にしかできない表現方法が面白く、この感じ、結構好きだなと思った。短い物語のなかで、よくある身近な話題から二人にしかわかりあえない微妙なニュアンスの部分まで、男女の繊細な機敏をわかりやすく、また文章も読みやすい。それが、人気の理由なのかもしれません。
 最

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直木賞候補二作品を読んで

直木賞候補二作品を読んで

 「襷がけの二人」 嶋津輝

 山田家の嫁となった千代はそこで女中頭を務めるお初と出会う。
 大正から激動の戦後を一緒に生きた二人、この時代の普通から反れる彼女たちは、己が信じる道を泥だらけになりながらも力強く生きていた。それがほんとうに美しい姿として私には見える。こういうお話大好きです。また二人の絆の他にも大正から戦時下の時代背景やそのころ食べていた多彩な料理と食事風景、終戦後の貧困、女性の結婚

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