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【連載】あれこれと、あーと

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gallery hyphenのオーナーによる独り言。 「身近にひそむアート」をテーマに、あれこれとつぶやきます。 サイトはこちら→http://gallery-hyphen.lo…
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#アート思考

名もなき記憶の欠片たち。そして寂しさ

名もなき記憶の欠片たち。そして寂しさ

「目もくれず」という言葉がある。
少しの興味・関心も示さない。 見向きもしない。 という意味だ。

とめどなく眼に飛び込んでくる世界

人間の五感から得る知覚は、その大部分が視覚による。人は、一瞬一瞬、膨大に流れてくる情報を瞳に受け止め、凄まじいスピードで処理し、知覚と選別を繰り返す。視覚のそれは他の器官を圧倒的に凌駕する媒体なのだ。

たとえば朝、眠りから覚めた時。あなたは目を瞬かせながら外の世

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それでも、「滅び」は美しい。 第三稿

それでも、「滅び」は美しい。 第三稿

刹那を斬り、一瞬の美を永遠にする男

アート/空家 二人を訪問した後日、今度は東京工芸大学 写大ギャラリーで開催中の土門拳写真展へ向かった。

土門拳は戦後日本を代表する写真家だ。
『文楽』『ヒロシマ』『筑豊のこどもたち』など、日本の伝統文化や社会性の高いテーマを主軸とし、「リアリズム写真」を追求し続けた人である。

「写真の鬼」とも呼ばれた土門拳は、徹底したリアリズムで、対象の一瞬をファインダー

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それでも、「滅び」は美しい。 第二稿

それでも、「滅び」は美しい。 第二稿

田中義樹 《ウォーホル》

これは、アート/空家 二人の企画展、「NITO10」で鑑賞した作品だ。

田中 義樹 《ウォーホル》
2022年 文庫本、模型

手前に三島由紀夫著『金閣寺』の文庫本、その奥にミニチュア模型の銀閣寺がちょこんと置かれている。先にこの作品を見ていた人が、可笑しそうにくすくす笑っている。なんだろうと私も近寄ってみるが、よくわからない。

三木さんが声を掛けてくれて「文庫本、

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それでも、「滅び」は美しい。 第一稿

それでも、「滅び」は美しい。 第一稿

アート/空家 二人

GWに、現代アートを取り扱うギャラリー「アート/空家 二人」を訪問した。ここは、作品を1万円から販売していて、購入されるごとに次回作の価格が上がるという独自のシステムを導入しているギャラリーだ。

一軒家を改造して作られたという展示空間は、明るく広々としていて、作品をじっくりと堪能できる。室内は、畳や台所、洗面所などの住居設備はそのままにしていて、「家感」がそこかしこに漂って

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美術館で心をとりもどす。

美術館で心をとりもどす。

−丸亀平井美術館を知っていますか?

香川県の中心部に位置する宇多津町。鎌倉〜室町時代は四国の海運の要所として栄え、神社仏閣や古街、遍路道が残る歴史ある町だ。

ここに私のルーツともいえる美術館がある。
丸亀平井美術館。1993年に開館し、現代スペインを代表するアーティストによる90年代以降の作品を扱う小さな美術館だ。

アイスの甘い残り香をさがして。おや、不時着した宇宙船かな?

私の最も古い記

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