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エッセイ

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#思い出

お手軽センチメンタル

お手軽センチメンタル

この時期おれは、ちょっとしたセンチメンタルなジャーニーを密かに楽しんだりしている。
それというのも、お手軽な方法があるのだ。

センチメンタルジャーニーといっても、なにも雨の中を駆け出すような恋に破れたわけではない。

そう、ジャーニーといっても、つかの間のセンチメンタルタイムのことをそう呼んでいるのだ。
いや、タイムって何のことだ。

それは、ふとした瞬間の胸を締めつける甘酸っぱい一瞬のことだ。

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パズズに怯え続ける日々

パズズに怯え続ける日々

オカルトが流行っていた。

その火付け役といえるのは、なんといっても『エクソシスト』だろう。
悪魔に取り憑かれた少女が、首をぐるりと一回転して振り返るシーンや蜘蛛のよう這いずり回るシーンに、声も出ぬほど恐怖した。
そして、その画に負けず劣らず記憶に残るのが「マイク・オールドフィールド」の音楽。
老若男女問わず、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないか。
この音楽が、更にこの映画の完成度を高めてい

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音なき音と優しさと

音なき音と優しさと

生産性なんてな無いと思ってた。あの頃は…

北の街の二月には、晴れ渡る青空よりも、少し寒さが和らいだ雪時々曇り、そんな朝がいい。

湿った雪がしんしんと降り続く音無き音。
湿度が窓を曇らせて、この部屋は打ち捨てられた様に静かだ。
彼女と足を絡めながら、狭いベッドで天井を見上げて過ごす。
時折、その髪の匂いを嗅ぐ。
少しだけタバコの香りがする。
彼女はタバコを吸わない。
それだけ、この部屋で長い時間

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時が約束してくれたこと

時が約束してくれたこと

「またこの時季が来たのか…」
今頃になると、まだあの時のことを思い出し、少しだけ胸の深いところがチリチリと爆ぜる。
激しく燃え上がった末に、白い灰になった様に感じてはいるのだけれど。
まあ、まだわずかだが燻っているのだろう。

それでいい。

こんな時は逆に、一つひとつの思い出を丁寧になぞって行くはどうだろう。
「あぁ、あの時も、クリスマスソングが流れていたな。。」
そう、街が徐々にクリスマスムー

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どこかで暮らしているアイツへ

どこかで暮らしているアイツへ

今日、ひょんな事から浜田省吾を聴いた。

何十年ぶりのその曲…

浜田省吾を聴いていたのはごくごく短い期間だが、いっ時けっこう聴いた。
これまたひょんな事がきっかけで、話をするようになったアイツが好きだったのだ。

それは高3のことだ。
アイツとは、ほとんど話をしたこともなかった。
どちらかと言うと苦手なカテゴリーに分類していたアイツ。
秋の深まりを感じる夕日が差し込む教室で、おれの親友の一人と

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冬はやさしく告げられる

冬はやさしく告げられる

この街には雪が降る。
そしてこの街の秋の終わりと冬の始まりは、初雪が告げる。

毎年11月も近づきこの時期になると、地元TV局の番組では、頻繁に初雪の話題がニュースとなる。普段の会話でも、やれ峠に雪が降っただの、雪虫を見ただのと話題にあがることが多い。
北の街で暮らしていると、雪は生まれた時から身近な存在だ。
そんな人々にとっても、この初雪だけは、毎年どこか新鮮な驚きと嬉しさがあるものだ。
年甲斐

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シャワーの妖精

シャワーの妖精

今朝、おれにちょっとした幸運が降りてくれた。ほんの小さな小さな幸運だけど。

それはバスルームでのこと。久々の出会い。

風呂場で、って誰とだよ!となるかもしれないが、それは人ではなくて「感覚」の話。

こいつは、いつだって突然現れるのが常。
でも今回はホント久しぶり。何年ぶりだろう…
「おいおい、お前のことなんか忘れていたよ」ってなぐあい。
それと、必ずといっていいほどバスルームでシャワーを浴び

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