藤田一樹

サツマイモのリトルプレス「イモヅル」、フリーペーパー「ことばと思考 シップ」を制作・発…

藤田一樹

サツマイモのリトルプレス「イモヅル」、フリーペーパー「ことばと思考 シップ」を制作・発行しています。お問い合わせはshipfujita28@gmail.comまで。公式サイト「イモヅルウェブ」http://imozuru-web.com/ Twitter @ship_fujita

記事一覧

「ことばと思考 シップ」10 Viva La 実家

 実家暮らしの大人に対する世間の目は厳しい。私自身、39歳まで実家暮らしをしていたが「いいねえ、家に帰ったらごはんができてるんでしょ」などと言われることはしょっち…

藤田一樹
2年前
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「ことばと思考 シップ」09 現代「かな」づかい考 ―なんか、気になったりとかしませんか―

 ニュースで流れる「街の人の声」やスポーツ選手へのインタビューで、こんなコメントをよく耳にする。  「~も致し方ないのかなと思います」  「~が今後の課題かなと思…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」08 まっすぐな正義でさみしい

 コロナ禍に話題になった「自粛警察」や「マスク警察」、「他県ナンバー狩り」。他人の振る舞いを監視し、ときに吊し上げたりするようなこれらの行為を「ゆがんだ正義」「…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」07 わたしは健常

 病気ひとつせず、身体に不自由なところもない私は、自分を健康で「健常」な人間だと思っています。健康であることは日々の生活で自覚しやすい一方、「健常」についてはあ…

藤田一樹
3年前

「ことばと思考 シップ」06 恥ずかしい音

 公衆トイレでの「音消し」という習慣に出会ったのは、20年以上前の高校生の頃。友人と一緒にトイレに行くと、みな個室に入ってすぐ水を流し、その後にもう一度流すので「…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」05 自然(じねん)と自然(ナチュラル)と私

誰かが言ってたぜ おれは人間として 自然に生きてるのサ 自然に生きてるって 自分でわかるなんて 何て不自然なんだろう         (よしだたくろう「イメージの詩…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」04 皆もすなるTwitterといふものを我もしてみむとてするなり

 Twitter(以下TW)を始めてから、約2年半が過ぎました。  その間、新たな「ことば」の世界を開いたような驚きや発見があったり、自分のイヤな面がボロボロ出てきて戸惑…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」03 成熟って、何かね。―あたらしい「成熟拒否」のはなし―

 一般常識、ビジネスマナー、「大人の○○」……私たちの周りには、外面的な「大人らしさ」の指針やモデルはあふれているけれど、内面的な「成熟」となるとそうもいかず、…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」02 「祭り」と「フェス」 ―似て非なる祝祭のことば―

 身の周りでよく目にする「祭り」「フェス」という言葉。私たちは、一見同じであるようなこの二つの言葉を、それぞれ特有の意味やイメージのもと、微妙なニュアンスで使い…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」01 1971年、ふたつの〈孤独〉―村上春樹の「僕」、須賀敦子の「私たち」―

 孤独死、おひとりさま、ぼっち・・・世の中には、〈孤独〉をめぐるキーワードが溢れ、〈孤独〉を否定的に捉えるもの、あるいは称賛するものなど多種多様です。そんな中で…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」note版をはじめます。

 2017年に創刊した「ことばと思考 シップ」は、毎回ひとつのテーマを掘り下げ、「ことば」と「思考」を回転させるフリーペーパーです。これまでの紙版とPDF版に加え、note…

藤田一樹
3年前
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「ことばと思考 シップ」10 Viva La 実家

「ことばと思考 シップ」10 Viva La 実家

 実家暮らしの大人に対する世間の目は厳しい。私自身、39歳まで実家暮らしをしていたが「いいねえ、家に帰ったらごはんができてるんでしょ」などと言われることはしょっちゅうだったし、Googleの検索バーに「実家暮らし」と入れれば、「無理」「やばい」「ありえない」といった候補が並ぶ。
 そんな風に言われなければならないほど、実家暮らしはダサいのだろうか。甘えているのだろうか。子どもっぽいのだろうか。そこ

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「ことばと思考 シップ」09 現代「かな」づかい考 ―なんか、気になったりとかしませんか―

「ことばと思考 シップ」09 現代「かな」づかい考 ―なんか、気になったりとかしませんか―

 ニュースで流れる「街の人の声」やスポーツ選手へのインタビューで、こんなコメントをよく耳にする。
 「~も致し方ないのかなと思います」
 「~が今後の課題かなと思います」
 「致し方ない」「課題だ」と言い切らずに「かな」をつける。親しみのわく言い回しではあるけれど、言い切らずにフニャッとぼかされると、ごまかされているような、あるいは急になれなれしくされたような、妙な心地がする。ここ何年かで、耳にす

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「ことばと思考 シップ」08 まっすぐな正義でさみしい

「ことばと思考 シップ」08 まっすぐな正義でさみしい

 コロナ禍に話題になった「自粛警察」や「マスク警察」、「他県ナンバー狩り」。他人の振る舞いを監視し、ときに吊し上げたりするようなこれらの行為を「ゆがんだ正義」「正義の暴走」などと批判する声を、メディアやSNSでたびたび目にします。
 不正義でも悪でもない「ゆがんだ」という言い方に、「正義には違いない、だけどおかしい」という、複雑な心理を感じます。そもそも「ゆがんだ正義」があるのなら、ゆがんでいない

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「ことばと思考 シップ」07 わたしは健常

「ことばと思考 シップ」07 わたしは健常

 病気ひとつせず、身体に不自由なところもない私は、自分を健康で「健常」な人間だと思っています。健康であることは日々の生活で自覚しやすい一方、「健常」についてはあえて意識することも、ましてや何かを語ることも、ほとんどありません。
 だからこそ、自分が「健常」であることについて、また健常者という存在について、考えてみたいと思います。



障害者/健常者の定義
 障害者基本法第1章総則第2条では、「

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「ことばと思考 シップ」06 恥ずかしい音

「ことばと思考 シップ」06 恥ずかしい音

 公衆トイレでの「音消し」という習慣に出会ったのは、20年以上前の高校生の頃。友人と一緒にトイレに行くと、みな個室に入ってすぐ水を流し、その後にもう一度流すので「なんで2回も流すんだろう」と不思議に思っていた。それが小用の音を消すためだと分かったときは「そんなことしなきゃいけないの?」と愕然としたが、その後は自分も同じようにやらないと恥ずかしい気がして、やるようになった。
 時は流れ、今やデパート

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「ことばと思考 シップ」05 自然(じねん)と自然(ナチュラル)と私

「ことばと思考 シップ」05 自然(じねん)と自然(ナチュラル)と私

誰かが言ってたぜ
おれは人間として 自然に生きてるのサ
自然に生きてるって
自分でわかるなんて
何て不自然なんだろう
        (よしだたくろう「イメージの詩」)

 私たちが何かを「自然」だと形容するとき、そこには例えば「天然の素材のものを着たり食べたりする」「心のままに、飾らない態度でいる」「山奥で原始的な暮らしを営む」といった、多様なイメージが含まれます。
 しかし、いつから「自然」は

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「ことばと思考 シップ」04 皆もすなるTwitterといふものを我もしてみむとてするなり

「ことばと思考 シップ」04 皆もすなるTwitterといふものを我もしてみむとてするなり

 Twitter(以下TW)を始めてから、約2年半が過ぎました。
 その間、新たな「ことば」の世界を開いたような驚きや発見があったり、自分のイヤな面がボロボロ出てきて戸惑ったりと、タイムライン(以下TL)には現れない水面下で、いろいろな感情の動きがありました。
 その次第を、少し書いてみようと思います。



はじまり ―みんながやれって言うから―
 実はそれまでも周囲から繰り返しFaceboo

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「ことばと思考 シップ」03 成熟って、何かね。―あたらしい「成熟拒否」のはなし―

「ことばと思考 シップ」03 成熟って、何かね。―あたらしい「成熟拒否」のはなし―

 一般常識、ビジネスマナー、「大人の○○」……私たちの周りには、外面的な「大人らしさ」の指針やモデルはあふれているけれど、内面的な「成熟」となるとそうもいかず、なかなか自分自身に対して「成熟した」という実感は持てないものです。
 では、今、そしてこれから、私たちが目指すべき「成熟」とは、どのようなものでしょうか。いくつかの成熟論を概観しながら、考えてみたいと思います。



大ベストセラーの「成

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「ことばと思考 シップ」02 「祭り」と「フェス」 ―似て非なる祝祭のことば―

「ことばと思考 シップ」02 「祭り」と「フェス」 ―似て非なる祝祭のことば―

 身の周りでよく目にする「祭り」「フェス」という言葉。私たちは、一見同じであるようなこの二つの言葉を、それぞれ特有の意味やイメージのもと、微妙なニュアンスで使い分けている気がします。
 そこで今回は、似て非なる「祭り」と「フェス」について、現代的な意味や使われ方、託されたイメージとその背景について、考えてみたいと思います。



「祭り」のそもそもの形
 国語辞典で「祭」の字のつく言葉を探してみ

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「ことばと思考 シップ」01 1971年、ふたつの〈孤独〉―村上春樹の「僕」、須賀敦子の「私たち」―

「ことばと思考 シップ」01 1971年、ふたつの〈孤独〉―村上春樹の「僕」、須賀敦子の「私たち」―

 孤独死、おひとりさま、ぼっち・・・世の中には、〈孤独〉をめぐるキーワードが溢れ、〈孤独〉を否定的に捉えるもの、あるいは称賛するものなど多種多様です。そんな中で、私たちは自らの〈孤独〉と、どのように向き合っていけばいいのでしょうか。 
 今回は、偶然にも1971年という共通項を持つ二つの文学作品をご紹介します。そこに描かれた〈孤独〉のあり方が、私たちそれぞれの〈孤独〉について考える、ひとつの足がか

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「ことばと思考 シップ」note版をはじめます。

「ことばと思考 シップ」note版をはじめます。

 2017年に創刊した「ことばと思考 シップ」は、毎回ひとつのテーマを掘り下げ、「ことば」と「思考」を回転させるフリーペーパーです。これまでの紙版とPDF版に加え、note版として創刊号から最新号07号(2020年10月現在)までの公開を開始しました。好評の連載「字マンガ」(作:しば太)も掲載。ふとした思考のおともにどうぞ。

▲「ことばと思考 シップ」創刊号(一部)
 ※PDF版は公式サイト「イ

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