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生活すること

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生きるって何だろう?それは生活することなのではないだろうか────30才で伊東市にある海の街へ移住して感じたことを書いています。
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#自然と暮らす

不便さの中にしか存在しない美しさと暮らす

不便さの中にしか存在しない美しさと暮らす

先輩移住者として、伊東市が主催する「伊東暮らし移住相談ツアー」へ同行した。先輩と名乗れるほど長く住んでいるわけではないけれど、まだ新鮮さが残っている視点での良さなら伝えられるかもしれない。移住にはたくさんの不安が付き纏う。仕事も人間関係も生活のルーティーンも変わり、人生そのものが変わると言っても過言ではない。現状を変えるためには、移住は手っ取り早いだろう。だから変わることを前提にして、それ自体を楽

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ひっそりと運ばれていくものたち

ひっそりと運ばれていくものたち

家の周りでやたら蜂が飛んでいる。元々よく見かけるのだけど、最近は特にだ。ふと窓の外を見ると、たくさんの蜂がへばりついていてうわあとなる。蜂の巣でもあるのかと外へ出て探しているとご近所さんが出てきて、今朝は家の中に入ってきてびっくりしたと話す。その後専門家を呼んでくれて、蜂の駆除をしてくれることになった。蜂たちは越冬をするために場所を探して飛び回っているらしい。今年の春にもあった蜂事件を思い出す。

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私の安定剤

私の安定剤

マガジンの記事がもうすぐ100本になる。でもマガジンに入れていない記事や、ボツにした記事もあるからとっくに100本は超えているだろう。全て自分で作詞作曲・演奏・アレンジ・レコーディングした、4曲入りの新譜もリリースできた。風景画は30点を超えている。移住してからの半年間でたくさんの作品を作ることができて、我ながら上出来だと思う。自分を支えるのは他者からの評価ではなく、これだけ作ったという事実だ。も

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自然と暮らしていくとは

自然と暮らしていくとは

鳥の鳴き声で目が覚めるという、なかなかオシャレな朝を日々迎えている。防音室で暮らしていた頃は、二重冊子を閉めると外の音は何も聞こえず、空気の流れも感じず、「無」な状態だった。おそらくこの「無」は、身体にあまりよくない。いくら遮断しても、私たちは完全なる単体にはなれない。必ず世界と繋がっていて、全体の一部として存在している。だから遮断しようとすると自分で自分の存在を否定するようで、調子が狂っていく感

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暇を楽しむ

暇を楽しむ

あらゆる納品が終わって、また作品を作る日々が戻ってきた。以前まではやらなくちゃいけないことがあると安心していたのだけど、今はやらなくちゃいけないことがなくても安心を感じている。私の中でやらなくちゃいけないことと言うのは、期限が決まっていたり、途中ではやめられなかったり、誰かに求められていたりするものだ。私の作品は、今はそうしていない。やらなくちゃいけないことにすると窮屈になって、余白がなくなる。だ

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坂道の散歩

坂道の散歩

午前中に作業を済ませて、散歩へ出かけた。最近は忙しくて、時間を気にせずフラフラできる日がなかったから、今日こそは!と朝から楽しみにしていた。散歩をするようになったのは、この街へ来てからだ。歩くと道を覚えるし、思いもよらない出会いがあったりするのが面白い。今の私にとって最高のエンターテイメントになっている。

今日は部屋の窓から見えている、海を挟んだ反対側の山を登ってみることにした。こちらから見えて

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戻ってきた五感

戻ってきた五感

朝の5時前にふと目が覚めた。鳥たちの鳴き声が聞こえる。もう陽が昇るのか。鳥の鳴き声をBGMに二度寝した。泊まりに来る人たち皆んなが、鳥の鳴き声がすごいと言う。私は毎日聴いているから当たり前になりつつあるけれど、確かに最初の頃はアマゾンにでも引っ越してきたのかと思った。

ホントこんな感じに聞こえる。

この文章を書いているリビングからは、山に生えている木々が見える。窓の外が緑だなあと気付いたのは最

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作り続ける一日

作り続ける一日

朝起きると、昨日から降っていた雨は止んでいた。でも風がすごい。この街には、時たま台風みたいな強い風が吹く日がある。引っ越して初めてこの風を体験した時は、少し怖くて夜が眠れなかった。今はどんなに強風でも爆睡している。前日は雨で買い物に行けなかったから今日は行きたいのだけど、この風の中でクロスバイクを漕ぐと吹っ飛ばされてしまう。それくらいの強風。買い物のことは後で考えよう。いつものようにキッチンをデフ

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自然と暮らす

自然と暮らす

大人になってから自然に触れる機会が減った。たまに山登りをしたり、海を見に行ったりすることはあっても、生活の隣に自然がある感じはしない。近くにあっても、もっと遠く、なんなら遠ざけていた気もする。子供の頃は蝉や毛虫を素手で鷲掴みして、草履を脱ぎ捨て裸足で鬼ごっこしていたのに、大人になってからは部屋へ虫が入ってくるのを嫌い、コンクリートで固められた日当たりの悪い部屋にずっとこもっていた。人工物に対して憧

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現実との接地面

現実との接地面

人間は記号や言語で表現する方法を身につけてから、目の前の現実との距離が広がってしまった────という言葉に衝撃を受けた。私たちは自分が思っているよりもずっと現実を生きていない。この人間社会は、未来や過去のことを考えることで発展してきた世界だから、そもそも現実を生きていく構造になっていない。やることを決めなければ、計画を立てなければ、改善するために反省をしなければ、社会は発展しない。どんなに今だけを

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