見出し画像

坂道の散歩

午前中に作業を済ませて、散歩へ出かけた。最近は忙しくて、時間を気にせずフラフラできる日がなかったから、今日こそは!と朝から楽しみにしていた。散歩をするようになったのは、この街へ来てからだ。歩くと道を覚えるし、思いもよらない出会いがあったりするのが面白い。今の私にとって最高のエンターテイメントになっている。

今日は部屋の窓から見えている、海を挟んだ反対側の山を登ってみることにした。こちらから見えているということは、向こうからも見えている。どんな人たちが暮らしているのだろうか。近くの駐輪場へクロスバイクを置き、初っ端から始まる急な坂道を登る。登っているからか身体が暑くなり、さらにまた突然暖かくなった気候に対して完全に服装を間違えていた。半袖半ズボンでいいくらい。息が切れる。坂道くらいでと思われるかも知れないけど、本当に急なのだ。ほんの少し登ったところで振り返ると、そこにはすでに街の美しい景色が広がっていた。

すれ違うのは車ばかりで、そんなに古くない家も多い。別荘とまではいかないけれど、少し伊豆高原に似ている。私の住んでいる地区とは全く違う雰囲気で、同じ街中でもこんなに違うのかと驚いた。そう言えば地元の人に、なぜその地区に住んだのかと聞かれたのを思い出した。私の地区は子供がおらず高齢化が進んでいて、古い街並みが残っている場所らしい。だからこそ他の地区では薄れてしまっている横の繋がりや、コミュニティがある。そこへいきなり外から来た人間は入りづらいというイメージがあるようだけど、私はそう言うのを気にしないアウェイが好きなタイプなのもあるし、本当に良い所だと思っている。もちろんそんな情報は全く知らずに住み始めたから、理由は海の近くに家があったからなのと、街並みが好きだったからの2つだけだ。老後は田舎で暮らしたいみたいな話がよくあるけれど、歳をとってからではできないと実際に住んでいる私から伝えておきたい。都会から変化がありすぎる環境への柔軟な対応や、地域の人たちとの交流や、交通機関が発達していない便利ではない暮らしをするエネルギーは、歳をとるとどんどんなくなっていく。むしろ医療機関が充実している都会へ行った方がいい。老後の田舎暮らしは、一度早めに体験しておくのをオススメする。

かなり上まで登ってきたところで、さらに急な登り坂になった。ここに家を建てようと思ったのがすごい。たまに置いてある自転車は、どうやってそこまで登ってきたのだろうか。筋肉がプルプルしてきて、この辺りは絶対に歩く前提ではないだろうなと思いながら、今度は違う道を通りながら下った。たまにある廃墟にテンションが上がる。私はいつから廃墟マニアになったのだろうか。錆びついたトタンや、建物に植物が侵入し始めている様子は、時の流れを感じられて色んなことを想像する。人がいなくなってぽっかりと穴が空いているのだけど、代わりに周りが埋めてくれているのを目視できるのがいい。人間以外のもっと大きな生命を感じられて、むしろ安心したりする。

開放的すぎる家
いい味が出てる家

下り坂でさらに筋肉がプルプルしてきた。この街でずっと車を持たずに暮らしたら、歳をとっても健康でいられる気がする。駐輪場まで戻り、プルプルしたままクロスバイクを漕いで、コンビニのコーヒーを飲みながら海岸で休んだ。明日は筋肉痛かもしれない(と思ったけど大丈夫だった)。目の前には登った山が見えている。人と自然の距離が近いこの街が好きだ。ここで受けている恩恵は計り知れない。今日も心は穏やかに、静かに満たされている。

この記事が参加している募集

#アウトドアをたのしむ

10,482件

#この街がすき

43,736件

頂いたサポートは活動のために大切に使わせていただきます。そしてまた新しい何かをお届けします!