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デリカシーの欠片すら持たない、ぼくが僕になるまで

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ぼくが僕になるまでの物語です。ありったけの魂を込めましたので、ぜひお読み下さい。
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#日常

ぼくが僕になるまで(少年期⑤)

ぼくが僕になるまで(少年期⑤)

★好きなことをとことん。これ以上に何が必要?

協定その五:期間は一年間。

「そうだな」口の中にきゅうりを残したまま、甲野さんは話し始めた。「さっきの話の続きだが、当時の俺は大学を出たばかりの若造だった。俺の出た大学は世間に名の知れた大学だったから、最初から面白いように内定が取れたんだ。付け加えて景気が良かったのもあった。自分で言うのもなんだが選り取り見取りだった。その内定先から、俺は一番待遇が

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ぼくが僕になるまで(幼少期⑤)

ぼくが僕になるまで(幼少期⑤)

★人のテリトリーにずがずかと入る奴は、マンボウにでもなるがいい。

 父さんはぼくの部屋にノックもしないで入ってくると、中には入らずにドアのところで立ち止まった。足を肩幅に開き、腕を胸の前で組むと、何かを点検するかみたいに部屋の中を見回しはじめた。用紙にチェックを書き加えていくみたく、一つ一つ正確に視線の合図を送っていく。特に本だなについては時間をかけていた。それから父さんは納得したように頷くと、

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ぼくが僕になるまで(少年期④)

ぼくが僕になるまで(少年期④)

★自分の世話は自分で見れると思っているうちは、まだガキだ。

 協定その四: マンションの他の住人にはちゃんと目を見てあいさつする。

 爪先で探り、扇風機のスイッチを入れた。弱のボタンの上に赤いランプが点き、扇風機はゆっくりと稼働し始める。首が動き、空気の流れを部屋に作る。三十度ほど首を回転させて、また元の位置へ戻る。古いのか、常にカタカタと何かに擦れる音がする。
 甲野さんは窓際に立ち、オーガ

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ぼくが僕になるまで(幼少期④)

ぼくが僕になるまで(幼少期④)

★ぼくは誰のために生きている?それが分かっている人は幸いだ。

 リビングでは父さんと母さんが向かいあって話してた。まるで作戦をねってるみたいに、こぶし一個分の距離で話してる。にっくき相手のチームには聞かれないよう、内輪だけでの作戦会議だ。ぼくはそれを横目にすり抜けて、キッチンに向かった。
 その時、マコト、とリビングから呼びかけられた。担任の先生みたいにしっかりとした発音だ。声のした方へぼくは顔

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ぼくが僕になるまで(青年期③)

ぼくが僕になるまで(青年期③)

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「君に今、ご指導頂いているのは誰なんだ?」
「ご指導?」
「崇拝その他女性の取り扱い方について」ミユの細い眉がくにゃりと曲がって、真ん中に寄り

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ぼくが僕になるまで(少年期③)

ぼくが僕になるまで(少年期③)

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協定その三:外では赤の他人のふり。

 前に甲野さんから貸してもらった本を教科書の間から取り出す。できるだけ周りに溶け込むよう、端から順に手を

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ぼくが僕になるまで(幼少期③)

ぼくが僕になるまで(幼少期③)

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「それぐらいでいいよ。ストップストップ。これじゃあマヨネーズの海だ」目の細さから鑑定すると、どうやら母さんを怒らせてしまったみたい。目が鉛筆の

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ぼくが僕になるまで(青年期②)

ぼくが僕になるまで(青年期②)

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 ウエイターを呼んで、僕は最近ハマり出した辛めのスパゲッティ、ミユは僕がお薦めしたスパゲッティを――追加のトッピングで僕の理想とする形とはずい

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ぼくが僕になるまで(少年期②)

ぼくが僕になるまで(少年期②)

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協定その二:学校にはちゃんと行くし、授業もちゃんと受ける。

「これ全部読んだ?」
甲野さんはキーボードを叩いていた手を止める。椅子を半回転

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ぼくが僕になるまで(幼少期②)

ぼくが僕になるまで(幼少期②)

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「何を読んでいるの?」振り向くと、目、鼻、口と母さんの主要な部分がドアのすきまからはみ出ていた。うかつにもドアを閉め忘れていたようだ。次からは

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ぼくが僕になるまで(青年期①)

ぼくが僕になるまで(青年期①)

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「これ、借りてっていい?」顔を上げてみると、ミユは本棚の前にいてページをぱらぱらとめくっていた。この年代の女の子にありがちな狭い背中。だけど、いくら狭いとは

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ぼくが僕になるまで(少年期①)

ぼくが僕になるまで(少年期①)

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協定その一:学校が終わる三時から六時までは居てもよい。

 甲野さんは身体をベンチに託して、次のセットに取り掛かりはじめた。これで始めてから三

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ぼくが僕になるまで(幼少期①)

ぼくが僕になるまで(幼少期①)

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「そのセーター、ずっと着てるよね」とぼくが言うと、母さんは目の前の雑誌から目を上げ、何でもなさそうにこっちを見た。はっきりとは汚れてはいないけ

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ぼくが僕になるまで(ビデオテープ)

ぼくが僕になるまで(ビデオテープ)

 五歳ぐらいの男の子が滑るように芝生の上を駆けている。子供特有の前傾姿勢。見る者をハラハラさせる走り方だ。彼の軽い体重は全て二本の、生っちょろい前足にかかっている。彼の進む先をたどるとその先には一本の楡の木があり、その木の下には白いベンチが置かれている。そのベンチには、彼と同じぐらいの年格好の女の子。小さな黄色い靴を宙に投げ出して、行儀よさげに座っている。ベンチの背もたれには藁で編まれた麦藁帽子が

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