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【人間関係】記憶を疑わせて、自分の立場を固める――パワハラしてくる人の手口と対処法③

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
パワハラ、モラハラをしてくる人は、悪意ある人は意図的に、あるいは、彼らが積み重ねてきた経験を基に無意識的に、他者(こちら側)を支配する心理術を使ってくることは、このnoteでも「ストローマン論法」「ダブルバインド」を通じてお伝えしてきました。

今回は、パワハラしてくる人の手口③として、日本随一のコミュニケーショントレーナーとして1万人以上レクチャーしている司拓也さんが新刊『嫌われずに「言い返す」技術』の中で紹介しているパワハラ、モラハラで使われる心理術の1つ、「メモリーハック」について解説、その対処法を紹介している該当箇所を一部編集して公開します。

おかげさまで、発売1週間で重版出来



相手の記憶に侵略し、改ざんする──メモリーハック

 メモリーハックとは、相手の記憶や認識を操作する方法です。いわば「記憶の侵略行為」です。
 他人の心の奥底に潜り込み、記憶や認識を歪め、操作する卑劣な手口です。これは紛れもなく、人の意識と記憶に対する欺きと裏切り、心の自由を奪う暴力行為に他なりません。
 人の記憶は、思っている以上にあやふやで、特定のキーワードや情報を、自信を持って伝えられると、その情報を正しいと受け入れやすくなります。これを悪用すると、相手を混乱させたり、自分の都合のいい方向に誘導することが可能となります。このメモリーハックをしてくる人のことを「メモリーハッカー」と呼んでいます。

記憶を疑わせて、自分の立場を固める──悪用事例

 メモリーハックを使ったパワハラ事例をいくつか見ていきます。

あなた 先日指示された仕事ですが、これは私の契約の範囲外の仕事と思うのですが……。
相 手 何を言ってるんだ! 事前に契約の内容については確認したはずだ。ぜひやらせてくださいと言ったから任せたのに!

 ここでは、相手があなたに対して、契約内容についての記憶を改ざんしようとしています。

あなた 私がこのプロジェクトのリーダーだと思っていたのですが……。
相 手 そんなことはない。初めから私がリーダーだった。忘れたのか? しっかりしろ!

 あなたの記憶や認識を疑わせることで、相手は自分の立場を固めようとしています。
 アリゾナ大学の心理学者、ブレイナード・レイナが行なった実験では、学生に60の単語を記憶させ、後にそれと異なる単語を示して「さっき覚えたのはこれだったよね?」と問いかけました。
 結果、多くの学生があとから提示された単語を覚えていたと回答しました。この実験は、記憶がどれほど簡単に書き換えられるかを明らかにしています。悪用されると人々は容易に欺かれてしまうという現実を示唆しています。

メモリーハックから身を守る方法──対処法

 メモリーハックを仕掛けられたときには、いくつかの対応法があります。言われたあとにどのように回答するのが効果的か、参考にしてみてください。

①確認を求める

あなた それはたしかに私が言ったことですか? 説明をお願いします。
相 手 たしかに言ったよ! 覚えてないの?
あなた 記憶にありません。ご迷惑をおかけしたくないので、当時の状況の詳細を聞かせてください。

②証拠を求める

あなた それに関してのメールや書類はありますか?
相 手 それはないけど、口頭でちゃんと言っていたよ!
あなた 何か記録はありますか? 確認させてください。ご迷惑になるといけないので。

③第三者を巻き込む

あなた その話、Aさんもその場にいらっしゃいましたよね? 一緒に確認しましょう。
相 手 いいけど、俺の言うこと信用できないの?
あなた いえ、ご迷惑になるといけないので確認させてください。

キラーフレーズ「ご迷惑になるといけないので」

 記憶改ざんテクニックは、日常生活やビジネスの場面で意図的に、または無意識のうちに利用されることがあります。
 しかし、自分の記憶や認識をしっかりと持ち、疑問に思ったときは確認や証拠を求めることで、これらのテクニックから自身を守ることができます。
 その際に「ご迷惑をかけるといけないので」というフレーズは、相手の要求をやんわりと拒むフレーズとして便利に使えます。

大声で凄まれたときの対応法

 さらに、相手が大声で凄すごんできた場合での、その大声の勢いに負けないコツをお伝えします。と言っても、相手と同じ音量で対抗する必要はありません。
 笑顔でさらりと伝えることがポイントです。
 伝えたい言葉を心の中で一度ゆっくりと唱えてから相手に伝えます。
 相手の声の勢いにつられて反射的に話さないことです。ワンテンポ遅らせていいので、「記憶にありません」「そんなことを言っていません」と2秒かけて伝えるイメージです。これが「ゆっくり話す」のイメージになります。

記憶改ざんに抗弁するときの、真実性を強める伝え方

 また記憶にないことや事実でないと思うことは、自信を持って抗弁することが重要です。
 その際に、まばたきしないで伝えると、あなたの真実性が高まります。
 まばたきの回数は、脳内伝達物質であるドーパミンの影響を受けています。多ければ多いほど、相手が緊張していることを示していると言われています。
 まばたきを抑制することで、相手にビビっていない、落ち着いているという印象を与えることができます。
 目安として、1分間に12回程度にまばたきを抑えると、落ち着いた自信のある印象を相手に与えます。メモリーハッカーに対するときに必要なのは強さで対抗するのではなく、リラックスすることです。相手に自分の意見や感じていることをしっかりと伝えることができます。

〈著者プロフィール〉
司 拓也(つかさ・たくや)

コミュニケーショントレーナー。声と話し方の学校「ボイス・オブ・フロンティア」代表。日本話す声プロボイストレーナー協会代表。活動歴は15年。年間セッション数は100以上。1万人以上のコミュニケーションの悩みを解決。幼少期のいじめ、学生・社会人時代になってからの上司や顧客からのモラハラ、パワハラ体験からうつ状態を経験。このままでは死んでしまうという危機感から「人の心を誘導し、相手を怒らせずにいじめやハラスメントを受けない方法を見つけ出せば、今後苦しむ必要はない」という強い思いから、心理学やコミュニケーションスキルを貪欲に探求。相手からのハラスメント的言動に対し、その攻撃力を無力化し、相手を怒らせることなく、言いたいことを言えるようになり、自分の心も強くなる「ポーカーボイス&トークメソッド」を開発。現在、心理学をベースとした対人コミュニケーションの講演やセミナーを開催。あわせてコミュニケーションスキルの講師を養成。

いかがでしたか?
 
今回ご紹介した新刊『嫌われずに「言い返す」技術』の著者・司拓也さんは、日本で随一のコミュニケーショントレーナー。心理学をベースに、話し方、声の出し方を、1万人以上にレクチャーしています。
嫌われずに言い返す、著者オリジナルのメソッド「ポーカーボイス&トーク」の重要エッセンスを、多くの会話事例を交えながら徹底解説した新刊『嫌われずに「言い返す」技術』(司 拓也・著)は、おかげさまで発売1週間で重版出来、ただいま、全国書店、ネット書店で発売中です。興味のある方はチェックしてみてください。

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