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「殺し屋」という非現実的な世界を通して見る「私」|グラスホッパー

「殺し屋」という非現実的な世界を通して見る「私」|グラスホッパー


グラスホッパーのあらすじ伊坂幸太郎の「グラスホッパー」は、復讐を求める一般人と、変わった個性を持つ3人の殺し屋たちが交錯するハードボイルド小説です。

鈴木:一般人でありながら、妻を殺された復讐のために行動します。

押し屋:車や列車の前に相手を押し出して事故を装い、殺す殺し屋。伝説的な存在です。

鯨:自殺させる殺し屋。幻覚・幻聴のような不思議な能力を持ち、死人と対話します。

蝉:倫理観に欠

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ナナメの夕暮れ ‐ 若林正恭|斜に構えた私の受容

ナナメの夕暮れ ‐ 若林正恭|斜に構えた私の受容

誰しもが、受け入れられない自分や過去があります。

大人になって、そんな自分や過去そのものをどうにかしようと試みますが、本質的なところは何も変わりません。

本書のタイトルは『ナナメの夕暮れ』
斜に構えた自分自身を受容するまでの成長譚です。

自分の弱さをさらけ出すことはとても難しいですが、弱さの開示ほど他人を勇気づけられるものもありません。

本書は、若林さんが悩み苦しんだ事が赤裸々に書かれてい

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【書評】もういちど生まれる‐朝井リョウ|”呪い”と向かい合う。

【書評】もういちど生まれる‐朝井リョウ|”呪い”と向かい合う。

「若い」というのは呪いのようなものです。

どんなに結果を出しても、実力より「若さ」が注目されてしまうから。

若いのにすごいね

若いのにこんなにできるんだ

若くて有名な作家さんなんだね

著者の朝井リョウさんは、直木賞を受賞した後のエッセイでこのように残しています。

他人が言うだけならそれは呪いではありません。

朝井さん自身が「若さ」を強烈に意識しているからこそ「呪い」なんだと思います。

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【エッセイ】言葉を見つめ、気づき、言い訳をする。

【エッセイ】言葉を見つめ、気づき、言い訳をする。

私はまだ、この歳(24歳)になっても“正義”という言葉に興味があります。小さい頃は「正義のヒーローになりたい!」という興味でしたが、今は少し違います。

正義と悪。

唐突に仏教を例に出してみます。

仏教の般若心経によると「全てのものに実体はなく、生があるから死がある。」というように、相対的な関係でのみ実体が存在するらしいです。

そうすると私が子供時代、親指を下に向け「ぶー!」と言っていた悪役

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【書評】つらいときは、寄り道をしてみる|最後はなぜかうまくいくイタリア人

【書評】つらいときは、寄り道をしてみる|最後はなぜかうまくいくイタリア人

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お気に入りの本屋で見かけたあるポスター。

日本では考えられない”緩さ”を主張する売り文句と、「最後はなぜかうまくいくイタリア人」というタイトルを見て……。

「緩いのにうまくいく、、、そんなことあるわけがない!」

と思い、いつのまにか手に取ってしまいました。

最後まで読み終えた感想としては、単純に日本とは正反対の文化を知れて面白かったというのがひとつ。

もうひとつは、「計画をた

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【書評】傲慢と善良|恋愛ミステリと哲学書の融合

【書評】傲慢と善良|恋愛ミステリと哲学書の融合

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突然失踪した婚約者の女性を追う恋愛ミステリ。

たまたま表紙が気に入っただけで、内容は全く知らなかったのですが、500ページ以上の長文をあっという間に読み切ってしまった…

本当に面白かったです!
それに、自分を見返せたような気がする…
─という曖昧な感じが自分らしい。笑

とにかく、辻村さんありがとうございます!!!!

あらすじをざっくりというと、

最後まで読み終えて、、、
「恋

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