【書評】もういちど生まれる‐朝井リョウ|”呪い”と向かい合う。
「若い」というのは呪いのようなものです。
どんなに結果を出しても、実力より「若さ」が注目されてしまうから。
若いのにすごいね
若いのにこんなにできるんだ
若くて有名な作家さんなんだね
著者の朝井リョウさんは、直木賞を受賞した後のエッセイでこのように残しています。
他人が言うだけならそれは呪いではありません。
朝井さん自身が「若さ」を強烈に意識しているからこそ「呪い」なんだと思います。
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本作は20歳前後の若者が様々な葛藤をする話です。
子どもから大人に変わる年代。
まさに「若さ」がテーマだと感じました。
朝井さんは20歳前後の瑞々しい感性を、言葉巧みに、確かな技術で表現していて…
私は、「若さ」という呪いに朝井さんが真正面から挑んでいるように感じ、なぜか涙がこぼれました。
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【本の内容】
叶わない恋の描写が印象的です。
男の子の好きな人には、別の好きな人がいて片思いの状態。
ある日、その子に「好きな人にどうすれば振り向いてもらえるかな。」と相談されますが…。
こっちが聞きたい。
「どうすれば君にふりむいてもらえる?」
って。
でも、そんなことは言えなくて、作り笑いで相談にのって、背中を押してしまう。
この本は、20歳前後の男女が、理想と現実のギャップに悩みながらも自分の力で一歩ずつ進んでいく様子が、恋・家族関係・夢など様々な場面で見られます。
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【好きな登場人物】
何人もの登場人物が出てきますが、私が一番好きなのは、画家を目指す兄とダンサーを目指す妹です。
この2人は昔、お互いの夢について語り合う仲のいい兄妹でした。しかし、大人になるにつれて距離が離れ、話すことがなくなっていきます。
兄は妹と向き合うために「踊っている妹」を絵にかき、その思いが評価されてか大賞を取るのですが、妹は展示されているその絵を破り捨てるのです。
妹は兄のことが嫌いだから絵を破いたわけではありません。妹も兄と向かい合おうとしたんです。
なんて不器用なふたりなんだろう。
不安定な若者だからこその心境の変化と行動。
それでも彼らなりに一歩を踏み出し、大人になっていく様子は感動と学びの連続です。
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最後に。
私は今、24歳ですが、自分の子供っぽさにうんざりしています。
やりたいことがあるのに我慢して、言い訳ばかり並べて。それでも社会に出れば真面目でしっかりとした大人に擬態します。
我慢することが大人なのか。
違うとしたら、私はいつ大人になるのか。
そう思っている時、画家の兄の言葉がこころに刺さりました。
向かい合うからこそ画家であって、向かい合わないでただ絵を描くだけの人は本当の意味で画家とはいわないのかもしれません。
また、それは画家だけではなく、他のことにも言えることだと思いました。
私でいうと、さっきの『大人』の話。
「大人は、自分の気持ちに正直に、向き合いたいと思ったものにぶつかるんだ。」
こう思うと、悩みの対処法が見えてきます。
私が今、一番向き合いたいものは何か
世間に合わせているだけの私が潜んでいないか
呪いは、向き合わない限り解くことができません。しかし、向き合い乗り越えた瞬間には、自分の求める理想の自分になれるのだと思います。
それを朝井さんは『もういちど生まれる』と言ったのかもしれません。
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