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vol.6 児玉雨子「##NAME##」を読んでみた

第169回芥川賞候補作 
児玉雨子「##NAME##」(河出書房新社)
を読みました。


作者は児玉雨子(こだま あめこ)さん。
1993年生まれ。
作詞家でもあり、アイドルや声優、
テレビアニメ主題歌やキャラクターソングを
中心に提供されています。

この本を読むきっかけは、
芸能人の方の2023年のおすすめの本に
上がっていたことでした。

vol.2の「塞王の楯」で直木賞受賞作の本は、
読んだのですが、芥川賞候補作を読むのは、
今回が初めてになります。



主人公は20歳の石田せつな。

現在とジュニアアイドルをしていた頃の過去との
時間軸を行き来しながら、主人公の心の変化や
成長の行方を追う物語です。

ページ数は約160ページ。
時間的には比較的短時間で読み終えることが
出来ました。

読後すぐには、
読むべきではなかったという感情と、
こういう本だからこそ読むべきだ、
という感情とが入り混じり、情緒の揺れが強く、
ひどく動揺してしまいました。

ジュニアアイドルの活動している描写が
生々しく書かれていたり、芸能界の裏側を
見てしまったような感覚になり、
穏やかな感情で読み進めることが
とても難しい作品だったのです。

「変態なんじゃないの、気持ち悪いよ」

これは、作中に出てくる言葉なのですが、
それは言ってはいけない言葉なのでは?
と読み手に思わせるなどの技量には
すごいものがありました。

また、児童買春・児童ポルノ禁止法違反、
児童性的虐待、ロリコン、ヲタク、性犯罪者、
小児性愛、多様性などの
これらの線引きについて、
女性アイドル、男性アイドル、韓国アイドル、
LGBTQのことについて考えることを
余儀なくされてしまいます。

昨年の大手芸能事務所のことや
著名人の女性に対する対応などと
この本を読んでいる時期とが
重なったこともあり、
日々考えさせられています。

ミステリーを読み終えた後の
心地よい読後感などは一切なく、
犯人が捕まらずに終わりを迎えてしまうような、
心がざわざわする感じが今も残っています。

・・・結果的に、
いろんな感情がありつつも、読み終えた後に、
ざわざわが残る作品を読むことに
意味があるのだろうと思いました。

さすが、芥川賞候補作といえる作品でした。


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